花巻市議会報告会(「市民と議会との懇談会」)が開かれた5日、まるで狙いを定めたようなタイミングで朝日新聞全国版の特集面に「地方議会 生きていますか」という記事が掲載された。川崎市議会議員の小田理恵子さんら3人の当事者が地方議会の危機を憂(うれ)うる内容だったが、その日の夕方、まさに目の前でそのことが現実となって現われた。私は昨年夏に引退するまでの2期8年間の議員生活の経験を踏まえた上で、今度は一市民の立場から見えてきた視点で、次の4点についての質問を用意していた。①副市長の複数性、②花巻市議会基本条例、③監査委員を兼任する議員と議長・副議長の質問権、④議員定数削減、⑤議会だより「花の風」の編集方針―いずれも市民目線でとらえた重要課題である。
たとえば、当市の副市長職は定数条例で「2人とする」と定められている。私の質問に対し、上田東一市長は平成29年9月の決算特別委員会で「今の副市長の仕事の分量、あるいは貢献いただいていることからすると、必要だと考えています。1人では到底無理だと思っています」と答弁している。ところが、一人体制になって1年近くが経過し、さらに今年1月末にはもう一人も退任し、「副市長ゼロ」という異常事態になっている。「市長発言からも行政執行上の停滞が懸念される。二元代表制の建前から議会側には監視義務があるのではないか」とただしたのに対し、出席議員は「当局任せで、そこまでは思いが及ばなかった」と非を認める発言をした。ハプニングは④の質問の最中に起きた。
「この質問はこの場にふさわしくない。あなたの質問にみんな疲れている。個人として議会側に問いただせばよい」―。答弁をさえぎる形で、ある市民が突然発言した。一瞬、頭が真っ白になった。「議員定数の問題は議会活動を支える生命線ではないのか」と口ごもっていた次の瞬間、今度はさらに信じられない出来事が現出した。司会役の大原健議員(無所属)がこの発言を「動議」として認めるとし、「何人かの参加者の方々もうなずいていた」とこれに同調する態度を見せた。これこそが永田町界隈(国会内部)でよく見かける「印象操作」ではないのか。まさか「サクラ」とは思いたくはないが、この市民の発言の真意を測りかねた。実際にそう思ったのかもしれない。そんなことよりも、私は一市民の“不規則発言”をタテに質問を封じようとする魂胆(こんたん)にうそ寒い精神の堕落を見た思いがした。腐臭が漂ってきた。「公正性を担保できない司会者の下では、いくら質問を続けてもムダだ」として、私は残余の質問をとりやめた。
「地方議会 生きてますか」―の中で、前出の小田議員はこう語っている。「まず、驚いたのは議員同士がほとんど議論をしないこと。都市計画や予算配分などの大きな問題について、議会の総意で対案をつくり、首長や行政に提示することはできていない。ほとんどの地方議会に、議員間で合意形成するという文化がないんですね」―。
質疑応答の中身について、逐一報告しようと思っていたが、その気力も萎(な)えてしまった。想像力を駆使して問答の光景を思い描いていただければ…。「議員との自由な意見交換」(開催要領)―のこれが実態だった。9年前、議会の「最高規範」として制定された「議会基本条例」は次のように規定している。「議会は、市政の監視及び評価並びに政策立案及び政策提言を行う機能が十分発揮できるよう、円滑かつ効率的な運営に努めなければならない。議会は、公正性及び透明性を確保し、市民に開かれた運営に努めなければならない。議会は、市民の多様な意見を的確に把握し、市政に反映させるための運営に努めなければならない」(第4条「議会の活動原則」)―
お~い、「花巻市議会、生きてますか」―。「死んでま~す」という声があちこちから聞こえてくる。
議会報告会は2月6日も大迫交流活性化センタ―。東和図書館、石鳥谷生涯学習会館で開催される(いずれも午後6時半から)。議会の実態を知るためにも多くの市民の皆さんに足を運んでいただき、活発な意見交換を尽くすことを切に望みたい。朝日新聞はこの日もたまたま、特集を組んでいた。タイトルは「誰のための地方議会」―
(写真は29人の市民が参加した議会報告会=2月5日午後7時半過ぎ、花巻市花城のまなび学園で)
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