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号外―あれっ、“平身低頭”路線へ転換!?…図書館特別委での椿(ちん)事

  • 号外―あれっ、“平身低頭”路線へ転換!?…図書館特別委での椿(ちん)事

 

 「市民がどんな図書館を望んでいるかということが一番、大切なことだ」―。思わず、わが耳を疑った。賃貸住宅付き図書館という「新図書館」構想の強行突破の陣頭に立ってきたはずの二人の副市長が一転、これまでの手続きなどの不手際を謝罪したからである。18日に開かれた市議会側の「新花巻図書館整備特別委員会」に初めて、藤原忠雅(新花巻図書館整備推進PT・総括プロジェクトマネ-ジャ-)と長井謙(同プロジェクトマネ-ジャ-)の両副市長がそろって出席。この日の特別委では議会の総意として、中間報告の形で「市民への情報提供」や「事業の透明性、公平性の確保」などを市当局に求めることで一致したが、それに先立って議員の間から質問が相次いだ。

 

 当局側は生涯学習部と建設部の職員で今年2月に発足した「新花巻図書館整備推進プロジェクトチ-ム」(推進PT)のメンバ-が勢ぞろい。「すべてが秘密裏に進められてきた」「そもそもがボタンのかけ違い」「“住宅ショック”(賃貸住宅付き)に襲われた」…。議員たちの質問攻勢に市川清志・生涯学習部長がひとり、守勢に立たされた格好。私は目の前で無言の行を決め込む副市長のたたずまいに突然、ある種の“卑劣”をさえ覚えた。たまりかねた議員のひとりが「お二人の副市長さんはこの間の経緯をどう思っているのか」と矛先を向けた。立ち上がって頭を下げるでもなく、口をついて出たのが冒頭の謝罪発言である。5ケ月ほど前、同じ部屋で繰り広げられた光景がふと、よみがえった。

 

 「行政の政策立案に当たっては、“利益”があるかどうかが決め手になる。コストパフォ-マンス、つまり費用対効果を考える際、その事業にもうけが生じるかどうかがポイントだ。賃貸住宅との複合化構想は行政判断として間違ってはいない」―。議会側の特別委の初会合(4月21日)に出席した長井副市長は胸を張ってこんな持論を展開した。これが同じ人物の口なのか…そんな思いにとらわれた。件(くだん)のその男が今度は目の前で、こんなことをしゃべくっているではないか。「(構想案の)描き方や公表の仕方、そのタイミングなどすべての点でまずかった。反省したい。市民が望む『自分たちの図書館』こそが理想だ」―。反吐(へど)が出そうになった「ハラの底などわかったもんでない」と心底、そう思った。

 

 市長に対して、助言や補佐する立場の人物がこんなんじゃ、部長をはじめ配下の職員たちもたまったもんじゃあるまい。「市役所内には自由に議論する雰囲気がない。閉塞感というか、風通しが良くない気がする。図書館問題こそが職員全員の英知を結集する場ではないか」とある議員が発言した。その通りだと感じつつも、PTトップ2のこの体たらくを目の前に見せつけられては、第一線の職員たちに同情したい気持ちにもなるのだった。

 

 「窮鼠(きゅうそ)、猫を噛(か)む」―とはこのことか。複数の議員から「12月定例会をメドに議会独自の図書館像を提示すべきだ」という意見が出され、小委員会で今後、その方向に向けた議論を深めることになった。この日は「新花巻図書館整備特別委員会(伊藤盛幸委員長ら議長を除く議員25人全員で構成)が発足してちょうど半年の節目。今からでも遅くない。発想を根本から転換し、「これぞ、図書館」という夢のある未来を私たち市民の前に示してほしい。世界最大級の”知の殿堂”と言われる「ニューヨーク公共図書館」(NYPL)の映画化(2017年)を手がけたフレデリック・ワイズマン監督はこう語っている。「NYPLは最も民主的な施設です。すべての人が歓迎されるこの場所では、あらゆる人種、民族、社会階級に属する人々が積極的に図書館ライフに参加しているのです」ー。議員諸賢の奮闘を心から期待したい。

 

 

 

(写真は質問の矢面に立たされる市川生涯学習部長(マイクの人)。前列の右側が藤原副市長、その左側が長井副市長=9月18日午前、花巻市役所の委員会室で)

 

 

 

《追記》~舌の根も乾かぬうちに…

 

 当ブログで副市長の”謝罪”を報告した、その舌の根も乾かない同日午後、市のHPに「花巻市のこれからのまちづくり―地域創生の実現に向けて」と題する87ページに及ぶ文書がアップされた。「花巻市立地適正化計画による市街地活性化と公共交通網の維持」という項目には堂々と「新花巻図書館の整備検討」がラインナップ入りを果たしていた。だから、言ったじゃないか。「ハラの底などわかったもんでない」と…。議会側への正式な”宣戦布告”と見た方が良さそうである。

 

 

 

号外―脱線・転覆の危機!?…イ-ハト-ブ「銀河鉄道号」、内外とも多難な船出

  • 号外―脱線・転覆の危機!?…イ-ハト-ブ「銀河鉄道号」、内外とも多難な船出

 

 

 「(計画書の中には)図書館の立地場所として、生涯学園都市会館(まなび学園)周辺と明記してある。ところが、今年1月に市当局が公表した『新図書館』構想の中ではJR花巻駅前に変更になっている。計画自体を変更すべきではないか」―。16日開催の花巻市議会決算特別委員会(櫻井肇委員長=共産党)で、舌鋒鋭い質問で知られる照井明子議員(同党)が声を張り上げて当局側を追及した。取り上げられたのは上田東一市長の政策決定の根幹になっている「立地適正化計画」。市街地活性化を促すため、「都市機能誘導区域」と「居住誘導区域」を導入するという内容で、国の有利な補助制度が受けられるとして、平成28(2016)年6月に策定され、上田市長が「全国で3番目」とことあるごとに自慢するするスロ-ガンである。

 

 上田市長の答弁がなかなか、挑発的だった。「場所の変更についてはすでに平成30年12月段階で議員の皆さんや市民にも公表しており、了解が得られたものと思っていた。今後さらに市民の声を聞いた上で、この場所が適地だということになれば、その時に計画変更をしたい」―。「立地適正化計画」は図書館問題について、こう記述している。「花巻駅周辺の都市機能誘導区域においては『総合花巻病院移転事業』、生涯学園都市会館周辺への『図書館(複合)の移転・整備事業』などを実施する…」―

 

 「だったら、遅くとも駅前立地を公にした、その時点で指摘すべきではなかったのか」という上田市長のハラが透けて見えた。この点では私も同感である(議員在職中、私自身は何度か”イーハトーブ”図書館の実現を訴えた)。事実、図書館問題に対する議会側の対応は随分と鈍かった。議会側に「新花巻図書館整備特別委員会」が設置されたのは、「新図書館」構想の公表から遅れること1カ月半の今年3月18日。「立地適正化計画」の中に図書館立地が明記されてからはすでに4年以上の時が流れている。座して見過ごしてきた議会側の怠慢はどうみても否めない。委員会審議が思わぬ方向に飛び火した。

 

 議会側に設けられた「図書館特別委」の小委員会の委員長でもある伊藤盛幸議員(市民クラブ)が市内中心部に昨年7月、オ-プンした「花巻中央広場」のトイレ設置の経緯について質問した際、上田市長が突然、委員長の許可を得ないままに発言を始めた。この広場も実は「立地適正化計画」のひとつとして、当初は「居住誘導区域」に指定されていた。しかしその後、周辺に急傾斜地があるため、国交省から「住民の生命に著しい危害が生じる恐れがある」(レッドゾ-ン)として、用途の計画変更を求められていた。この日の決算特別委員会でその旨が報告された。「崩落防止の擁壁設置に予定外の費用がかかった」などと上田市長はその経緯を説明したが、肝心の広場敷地は当初指定のまま(居住誘導区域)になっていることには言及しなかった。私にとって、「レッドゾ-ンに囲まれた住宅地」はまさに、賃貸住宅付き「図書館」そのもののイメージだが、伊藤議員の追及はそこまでは及ばなかった。

 

 「いまの発言には本人と保護者の属性に触れる部分がある。個人情報保護の面から会議録からの削除を求めたい」―。上田市長が今度は委員長の許可を得た上で、しかも管轄の教育委員長の頭越しに、気色ばんだ口調で発言した。伊藤源康議員(明和会)が昨年度からスタ-トした県立大迫高校の“留学制度”の状況についてただした際、担当課長が説明した内容に対する削除要求だった。櫻井委員長は「了解した」と応じた。「当局側は説明員として、議会に出席している。だとすれば、部下の発言に全責任を持つのはトップとしては当然」―こんな理屈は理解しつつも、その余りにも唐突な要求に腰を抜かした。試しに議会トップの小原雅道議長に見解を聞いてみた。

 

 「ほどんど経験したことのない要求だった。説明員として筋を通したとはいえ、本来なら発言当事者の真意をただした上で、議会全体で対応を協議すべき事案だと思う」……危うし!イーハトーブ「銀河鉄道号」!?新しい「菅」政治が始まったこの日、内外ともに前途多難な船出ではある。そういえば、当市出身の童話作家、宮沢賢治の代表作『銀河鉄道の夜』には、北大西洋上で氷河に激突し、1513人が犠牲になった20世紀最大の海難事故「タイタニック号」の悲劇(1912年)も描かれている。

 

 

 

(写真は鋭い口調で当局側を追及する照井議員。こぶしを振り上げたまでは良かったが…=9月16日午後、花巻市議会議場で。インターネット中継の画面から)

 

 

 

 

《追記-1》~上田市長の、異様な!?「図書館」論議

 

 「図書館」問題になると、上田市長のボルテージは一気に上がる。政策立案過程における不手際のなせるわざなのか、それとも議会側の認識不足のせいなのか。私はその両方だと思う。感情むき出しの議会答弁の光景は市議会HPにアップされている9月9日付の、大原健議員の一般質問の録画配信を見てほしい。

 

 

《追記ー2》~こっちは異例!?「市長答弁」の検証へ

 

 花巻市議会は開会中の9月定例会における一般質問に対する上田市長の答弁の中に不適切な部分があるとして、23日に議会運営委員会(瀬川義光委員長ら8人)を開いて、その内容を検証することになった。上記ブログで触れたように上田市長の質疑応答の対応には首を傾げたくなるような振る舞いが多々あり、市民からも不満の声が漏れていた。”市長発言”が俎(そ)上にのるのは極めて、異例のことである。ふいに、10年前の”悪夢”を思い出した。東日本大震災にからんだ質問をした際、あろうことか議会側から「その内容は議会の品位を傷つける」という理由で、私に対する「発言調査委員会」が設置され、懲戒処分を受ける羽目になった。今度は市長に対する「発言調査」、隔世の感がある。

 

 

 

 

号外―ルポ「としょかんワ-クショップ」その2…消えた「環境」の二文字

  • 号外―ルポ「としょかんワ-クショップ」その2…消えた「環境」の二文字

 

 

 「すべての市民が親しみやすく、使いやすい環境に配慮した図書館」→「すべての市民が親しみやすく、使いやすい図書館」…。図書館立地の重要なキ-ワ-ドのひとつである「環境に配慮した」という部分がそっくり消えてしまっているのをうっかり、見過ごすところだった。13日に開かれた第2回「としょかんワ-クショップ」で、「新花巻図書館整備基本構想」(平成29年8月)が検討資料として配られた。この下敷きになったのがその5年前、花巻図書館整備市民懇話会がまとめた「花巻図書館への提言」(平成24年10月)。その中の三つの基本コンセプトのひとつが冒頭に紹介したキャッフレ-ズである。直感的にこの改変にある種の作為を感じた。

 

 基本構想にはこうある。「図書館は市街地再生に資する施設として、まちづくりや都市計画とも整合したものとする必要がある。当市は平成28年6月に市街地の定住化を促進し、市街地に都市機能を誘導する『花巻市立地適正化計画』を作成し公表したが、新しい図書館はその中で『都市機能誘導区域』に整備することし…」―。そして、今年1月29日に突然、天から降ってきた、賃貸住宅付き図書館の駅前立地という“青天の霹靂(へきれき)”構想(「新花巻図書館複合施設整備事業構想」)を巡って、市議会と市当局とはいま、全面対決の様相を呈している。一般市民だけではなく、ワ-クショップの参加者たちさえ、この複雑極まる転変に付いていけない様子だった。頭を整理するため、以下に経緯を整理してみたい。

 

 

*「花巻図書館整備市民懇話会」設置(平成23年=2011年12月)

*「花巻図書館への提言」(平成24年=2012年10月25日)

*「花巻中央図書館基本計画」策定(平成25年=2013年5月28日~「こどもの城」構想との複合化

*上田東一市長が初当選(平成26年=2014年1月26日)

*建設予定地の「花巻厚生病院跡地」で土壌汚染が発覚。上記計画の中断・断念(平成26年=2014年3月)

*「都市再生特別措置法」の一部改正で、国がコンパクトシティを進めるための「立地適正化計画」を創設、策定を促す(平成26年=2014年8月)

*「まちづくりと施設整備の方向―立地適正化計画による都市再構築の方針(案)」(平成26年=2014年11月)~上田市長が初めて、図書館構想に言及。「図書館は整備や運営の手法、まちづくりの核として、そのあり方の多様化が全国で見られることから、都市機能誘導区域内に移転するとともに、市街地の振興に資する機能を付加することを検討する」

*全国で3番目に「立地適正化計画」を策定(平成28年=2016年6月)

*「新花巻図書館整備基本構想」策定(平成29年=2017年8月)

*「新花巻図書館複合施設整備事業構想」策定(令和2年=2020年1月29日)

*当局側が図書館関連予算を含む「令和2年度一御案会計予算案」を撤回(令和2年=2020年3月9日)

*議会側が「新花巻図書館整備特別委員会」設置(令和2年=2020年3月18日)

 

 

 以上の経緯を踏まえ、私は「立地適正化計画に基づく図書館の市街地への立地は自然環境の確保の面で共存はなかなか難しいのではないか。そのために、この文言をあえて削除しなければならなかったのではないか。そう考えた方が整合性がある」とただしたのに対し、市川清志・生涯学習部長は「環境に配慮して…という文言があえてなくても全体の文意は伝わると思った」とケロリと言ってのけた。消えた「環境への配慮」は別の文脈で、こんな形で息を吹き返していた。「自然エネルギ-の活用を検討し、照明器具や冷暖房設備など省エネルギ-の施設とする」―。「詭弁」(きべん)とさえも言えない、市民を小バカにした言い草ではないか。緑に囲まれた閑静な空間と「賑わい」拠点の創出が両立しないことは子どもでも分かる理屈である。つまり、立地適正化計画による市街地活性化はそもそもが「環境への配慮」とは相容れない発想だったのであり、だからこそ今回の「駅前立地」に当たっては、このキーワードの削除が必要だったのであろう。正直にそう言えばいいだけの話しである。

 

 この日のワ-クショップは時節柄、全員がマスクを着用し、ソ-シャルディスタンスを保ちながら、進められた。マスクを通したくぐもった声で、私は自らの基本的なスタンスについて、こう意見表明した。「誰もが逃れることのできないコロナ禍の中にいま、私たちは生きている。今度またいつ、パンデミックに襲われるか予想すらできない今こそ、図書館のあり方も根本から考え直さなくてはならないと思う」―。反応はほとんどなく、何か呆気にとられたような空気が会場に流れた。この発想の転換については、その道のプロに語ってもらった方が的を得ていると思う。図書館プロデュ-スの達人として知られる岡本真さん(アカデミック・リソ-ス・ガイド代表)はこう語っている。

 

 「端的に言えば、図書館の集客機能がまちづくりの文脈で評価・尊重されてきましたが、新型コロナの感染拡大を防ぐには、図書館においても、むやみに人を集められない、かつ長時間の滞在が好ましくない、さらに交流自体を大規模には行えないということになります。この10年ほど、大きな影響力をもってきた図書館による『賑わい』創出という考え方は、曲がり角に来たと感じています。コロナの終息が見えないこともあり、この機会に今度こそ、本気で資料のデジタル化を進める必要があります。コロナの脅威がいつまで続くのかは、まだ誰にもわかりません。ですが、今後も発生が予測される新たな感染症の脅威を見込むと、公共施設の計画・整備・運営は一度ゼロベ-スから組み上げ直していく必要があるでしょう」(2020年7月10日付論考「新型コロナ後、『図書館×まちづくり』の在り方が問われる」)

 

 

 

(写真はワークショップで意見を交わす参加者たち=13日、JR花巻駅前の定住交流センタ―「なはんプラザ」で)

号外―「ニュ-ノ-マル」という光景…“図書館戦争”、全面対決に突入か!?

  • 号外―「ニュ-ノ-マル」という光景…“図書館戦争”、全面対決に突入か!?

 

 「マスク拒否し大声/臨時着陸」(9日付「朝日新聞」)―。北海道・釧路空港から関西空港に向かっていた航空機内で、乗客のひとりがマスクの着用を拒否。他の乗客と口論になるなどしたため、航空法の安全阻害行為に当たるとして、新潟空港に臨時着陸……このニュ-スに接しながら、私は思わず「ウ~ン」とうなってしまった。乗客と航空会社双方の行為の是非についてではなく、コロナ禍がもたらした“行動変容”(ニュ-ノ-マル=新常態)がついにここまで来たのかという奇妙な感懐である。戦前の残滓(ざんし)を背負う世代として、この光景があの時代の“全体主義的”なたたずまいを思い出させたのかもしれない。

 

 「馴化」(じゅんか)―。心理学の概念で、ウキペディアはこう解説する。「ある刺激がくり返し提示されることによって、その刺激に対する反応が徐々に見られなくなっていく現象を指す。特に、報酬をもたらすわけでも有害なわけでもない中立的な刺激に対して生じやすい」―。まさに今回の“マスク”騒動がこれに該当するのだろう。しかし、こうした行動変容が無意識のうちにある種の「自粛」から「自発」へと向かい、そのことに当の本人がほとんど無自覚である――という点で随分と厄介である。つまり、本来はマスクの着脱は個人の「自由」であるにも関わらず、自発的な善意集団(”正義の味方”)がその自由をはく奪するという“隘路”(あいろ)に迷い込んでしまうという恐ろしさである。たとえば、かつての「自警団」を彷彿(ほうふつ)させる”自粛警察”の出現…

 

 9月定例会の一般質問がこの日、終わった。議員側も当局側も全員がマスク姿である。登壇者が変わるたびに議会事務局員が演壇の仕切り板のパ-テ-ションを丁寧に除菌する。これまで見られなかった光景だが、コロナ禍ではこれが「日常」(新しい生活様式)になりつつある。「違和」がだんだん、薄れていく。こんな議場の風景を眺めているうちに、私たちが陥っている“隘路”とは実は行動変容に追いつかない「思考停止」ではないのかとふと、心づいた。世界中が同時パニックに陥ったと言っても良いかもしれない。

 

 今回、図書館問題を正面から取り上げたのは大原健議員(無所属)だけだった。同議員は市議会先例集で兼務が禁止されている社会教育委員に名を連ねており、その“利益相反”ぶりが疑問視されている(8月28日付当ブログ参照)。当局案を精査するために市議会に設置されている「新花巻図書館整備特別委員会」の小委員会の委員も務めているが、この日の質問では「基本的には当局案に賛成。ただ、賃貸住宅の必要性についてのニ-ズ調査はやるべき」と相変わらず、“二股膏薬”的な態度を隠さなかった。この発言が逆に呼び水になったのであろうか、上田東一市長が突然、激した口調でまくしたてた。これを称して、”逆切れ”(パニクる)というのであろう。すわっ、“図書館戦争”が全面戦争に……!?

 

 「我われが提示した賃貸住宅付きの新図書館構想はあくまでも構想段階のもので、強引に進めるつもりは毛頭ない。原点に返ったつもりで、ワ-クショップなどを通じて市民の意見を丁寧にくみ取りたい。当局側の説明不足はあったとは思うが、議員の皆さんも質(ただ)すべき論点があいまいではないか。たとえば、構想の下敷きになっている立地適正化計画について、これまで議会側や市民に何回も説明をしてきたにもかかわらず、余りにもその認識がない。議会側の怠慢ではないか、と正直思う。その結果、(図書館建設が)遅れるなら、仕方がない。ただ、私に対する反発だけから、この計画が間違った方向に行くことだけは避けてほしい」

 

 コロナ禍を受け、久慈市の情報交流センタ-「YOMUNOSU」(よむのす)内にこのほど、パソコンやスマ-トフォンから閲覧できる24時間対応の専用サイト「久慈市電子図書館」が運用を開始した。県内では矢巾町に次いで2館目。久慈市の姉帯裕子館長は「図書館もコロナ禍の新たな生活様式に対応していく必要がある」(9月2日付「岩手日報)と話している。当市の今定例会での質疑応答の中で、コロナ禍をめぐる冷静な政策論争は最後までなく、「理念なき図書館」論争(バトル)という後味の悪さだけが残った。「崖っぷち!?『イ-ハト-ブ』の二元代表制」(8月28日付当ブログ)……。やはり、首長と議員(議会)との同時リコ-ル(解職請求)しか道は残されていないようである。感情だけが先走った不毛な光景を見せつけられ、心底、そう思った。つまりは「どっちもどっち」ということである。

 

 

 

 

(写真は図書館問題について、当局側の考えを質す大原議員=9月9日午後、花巻市議会議場で。インターネット中継の画面から)

 

 

 

号外―ふたたび、「パワハラ」SOS…どうなっているのか、上田市政!?

  • 号外―ふたたび、「パワハラ」SOS…どうなっているのか、上田市政!?

 

 以下のような文面のメ-ルが寄せられた。当人の了解を得た上で、その全文を掲載させていただく。約半年前、複数の市職員から余りにも赤裸々な「パワハラ」の実態を訴えるメ-ルが相次いで届いた。中には実名を名乗る職員もいた。想像を絶するSOSの内容については個人に累(るい)が及ばないことに配慮しつつ、「『ハラスメント』問題が市議会へ」(2020年3月4日付当ブログ)、「相次ぐパワハラ情報!?」(3月6日付同)、「明石市長の『パワハラ』始末記」(3月18日付同)として、ブログ公開した。

 

 その疑惑が収まるどころか、逆に深刻化を増していることに背筋が寒くなった。一日も早く、現場の職員たちが明るく振る舞うことのできる職場が戻ることを心から願いたい。コロナ禍のいま、ウイルスより怖いのはある意味で、たとえば「パワハラ」という名のこの種の暴力である。”自粛”を強制する無言の圧力も相まって、「イーハトーブはなまき」には腐臭が充満しつつある。

 

 

 私は花巻市職員です。上田(東一)市長のパワ-ハラスメントに関する記事を読み、組織の現状を知って頂きたく、ご連絡を差し上げた次第です。男性上司の女性職員に対するハラスメントに対し、同僚と別の上司に相談しましたが対策は取られず、それどころかハラスメントに加担することもありました。

 

 市のトップが平然とパワハラを行っておりますので、職員も堂々とパワハラを行えるのだと思います。数々の暴言を吐く上司を放置している組織に絶望を感じております。増子元議員に話を聞いていただきたく、一方的にメ-ルをさせていただきました。一職員の絶望として心に留めていただけると嬉しいです。何卒よろしくお願いします。

 

 

 

(写真は9月定例会の冒頭で行政報告をする上田市長。演壇には感染防止用のパーテーションが…=9月4日、花巻市議会議場で。インタ-ネット上から)

 

 

 

《追記》~”パワハラ”市長の白々しい「答弁」

 

 7日開会した花巻市議会9月定例会の一般質問で、若柳良明議員(平和環境社民クラブ=社民系)が災害時に設置される「指定緊急避難所」について、「女性職員も配置されると思うが、万が一のセクハラ防止には万全を期してほしい」と要望した。パワハラの中でも特に悪質な「セクハラ」(性暴力)の対応に対し、上田市長は「防犯ブザ-を持たせるなど安全確保には十分留意している。暴力は許されない」とシレッと答えていた。