Q:安野光雅 /A:森啓次郎
(朝日新聞社 1988年)
高野 澄 :編訳 (人文書院 1995年1月30日発行)
江戸時代に出回っていた笑い話を集めたものを、現代語に訳して、編集したというこの本、細切れの時間で読むのにちょうどよい本でした。
庶民の生活の中で、ちょっと艶っぽい、ナンセンスであったり、グロっぽいのもありで、たわいのない話と言えばそれまでなのですが。
笑える話、ありましたよ。
『出発』
雷と月と日がいっしょに旅に出た。
宿屋にとまった翌朝、雷が目をさましたら月と日の姿がみえない。
女中にきくと、月と日はそろって出発したという。
「なるほど、月日の発つのははやいものだ!」
『お虫さま御一行』
虫の大旅行団。
宿屋に泊り、翌朝出発のとき、ゲジゲジがなかなか出てこない。
「オーイ、どうした?」
「いや、どうも。草鞋を履くのに手間がかかって・・・」
『その気』
腰元が奥さまにおねがいしている。
「奥さま。明日のご参詣に、お供させてください」
「明日は、人ごみがひどいからネ、若い人は、なりません」
「でも、行きたいのです」
「では、ここへお出で」
腰元の尻をつねったり、袖の下に手を入れて乳を撫でたりして、
「サア、これで、参詣の気分になったろう」
お寺や坊さんをネタにしたものも相当多く出てきますよ。
『大黒』
寺に立派な大黒があると聞いた檀家の者、
「ぜひ拝見を・・・」
「とんでもない。それは先代の住職のときのこと、いまはありませぬ」
「わしは長いあいだの檀家じゃ。決して他へは話さぬ」
「それほどに申されるならば・・・」
奥から美女を一人、つれてきた。
「いや、それではなくて、本当の大黒さまを」
「ははは、なにもかもご存じですな」
もう一人、まるで天人みたいな美女をつれてきた。