企画展「138億光年 宇宙の旅」

  • 企画展「138億光年 宇宙の旅」

企画展「138億光年 宇宙の旅」無事閉幕いたしました。

たくさんの方にご来館いただき、本当にありがとうございました。宇宙に関する新しい研究成果や観測の状況が毎日のように報告されています。長い宇宙の歴史の中で、今が一番「宇宙」がおもしろいタイミングなのかもしれません。

太陽系は、太陽から流れる荷電粒子の巨大な泡「太陽圏」で包み込まれています。太陽から外に向かって吹いている太陽風は、恒星間空間から逆方向に吹きつけてくる星間風と衝突します。その衝突する境界面が、末端衝撃波面。泡の端です。太陽風の力はここで大きく削がれ、やがて太陽圏と恒星空間を分ける境目「ヘリオポーズ(heliopause)」に到達するまでに完全に停止すると考えられていました。しかし、その先にも太陽風の影響を受けると思われる未知の領域の存在をボイジャー2号が観測しています。

太陽のように、どこまでも大きく生命を守っている恒星が他にあるのか・・・地球の奇跡はもちろん、太陽系の奇跡を感じます。これからも地球をよろしくお願いします。

「水の星」     茨木のり子

宇宙の漆黒の闇のなかを  ひっそりまわる水の星

まわりには仲間もなく親戚もなく まるで孤独な星なんだ

生まれてこのかた   なにに一番驚いたかと言えば

水一滴もこぼさずに廻る地球を  

外からパチリと写した一枚の写真

こういうところに棲んでいましたか

これを見なかった昔のひととは 

線引きできるほどの意識の差が出てくる筈なのに

みんなわりあいぼんやりしている

太陽からの距離がほどほどで 

それで水がたっぷりと渦まくのであるらしい

中は火の玉だっていうのに 

ありえない不思議 蒼い星

すさまじい洪水の記憶が残り 

ノアの箱舟の伝説が生まれたのだろうけれど

善良な者たちだけが選ばれて積まれた船であったのに

子子孫孫のていたらくを見れば 

この言い伝えもいたって怪しい

軌道を逸れることもなく いまだ死の星にもならず

いのちの豊饒を抱えながら どこかさびしげな 水の星

極小の一分子でもある人間が 

ゆえなくさびしいのもあたりまえで

あたりまえすぎることは言わないほうがいいのでしょう

            (ポケット詩集Ⅲ 童話屋より)

画像:月探査機ルナー・リコネッサンス・オービターがとらえた「地球の出」NASA/Goddard/Arizona State University

2021.03.21:denkoku:[博物館情報]