日本天文学会では, 日本における天文学(暦学も含む)的な視点で歴史的意義のある史跡・事物に対して日本天文遺産の認定を行っています。その第一回目(2018年度)の認定が国宝「明月記」(冷泉家時雨亭文庫)です。「明月記」は、新古今和歌集や小倉百人一首の撰者として知られる藤原定家(1162~1241)が 建久 3(1192)年から天福元(1233)年の間に記した日記ですが、本文献には、望遠鏡発明 前に観測された超新星のうち3件(1006 年、1054 年、1181 年)が記載されているほか、日 食や月食、オーロラなどの天文現象についての記載があり、天文現象の古記録としてきわ めて重要なものです。今回展示しているおうし座のかに星雲は明月記に記録された 1054 年の超新星の残骸であると同定されています。
望遠鏡やカメラがなくても空の変化を見逃さなかった平安の人々と天文現象の密接なかかわりの証です。