逆境こそプラス

 一代にして立派な企業を育てあげた経営者や管理職に学歴のないひとが多い。そのような人は、どのような逆境にも耐え抜き、世の中の辛酸を舐めつくして成長してきた、いわゆる苦労人である。麦は踏まれることにより、立派な穂をつけ、樹木は風雪に耐え抜くために深く根を張る。渦潮の中で育った魚は、身も引き締まり形もスマートになる。

 人の判断は、自分の知っていることの範囲を出ないというが、経験ほど尊いものはない。どのような失敗を重ね、苦杯をなめ、苦言を呈せられ、逆運の中にあっても、それを己の実力養成になるのだと自分に言い聞かせ、反面教師として善に考え、自分のプラスにすることである。飛躍するためには力を蓄えねばならぬ。スプリングは常に伸びきっていてはダメであり、押さえつけられ圧縮させられているからこそ反発する力が強いのである。

 病原菌をうえつけて抵抗力、耐菌性をつけさせるように、屈するというのは、自分やわが社にマイナスとみられるような事象に屈服し、節を曲げ、身を任せることではなく、それに抗し、克服してわが物とする努力をすることである。

 夜があれば、また太陽の輝く朝が来るように、長く厳しい冬にとざされた北国にも、やはり、春はやってくる。冬が長いがために植物は成長し、豊かな実をつける。だれの人生にも少なくとも三回のチャンスが回ってくるという。運命の神の後ろ髪をしっかりとつかまえ、グンと伸びることができるかどうかは、鋼のように常に叩かれ鍛え上げられ、不純物を出し切った日ごろの鍛錬がものをいうのである。

「屈するは伸びんがためなり」、日々是修養、なにごとにも弱音を吐かず、全身全霊をあげて仕事に取り組もう。


2006.10.20:反田快舟:[経営箴言]

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