当面する経営者の姿勢

 経営者が集まると話題はたいてい決まっている。「優秀な人が集まらない」「入社しても直ぐに辞めてしまう」「古い人の頭の切り替えがなかなかできない」「競争が激しく利益も減ってきた」「売上が下がり資金繰りが苦しくなってきた」「将来に対して漠然とした不安がある」等々。いずれも、話に終わって対策なく、成り行き任せの経営をやっている。

従業員だけでなく、わが子までも会社を継ぐことは嫌だという。実の息子でもそうなのだから、まして他人で、一生をこの会社で働こうという奇特な人は集まらない。会社と子どもは自分で作ったものでありながら、大きくなれば自分のいうことをきかなくなる。

子どもが親の商売に魅力を感じないのは、人生をかける夢や希望がないからだ。三年先には売上と利益をいくらにして、五年後には企業をどこまで発展させるという将来の目標や理想がなく、ただ、毎日一生懸命に働くだけでは、肉体的な疲労のみが残り楽しみはない。将来の不安だけがいつまでも付きまとう。

目標もなければ抱負もない、毎日毎日なんとなく過ごして、一家がメシを食えればよい、と考えているような会社や商店は企業とはいわない。これを家業という。目標があるから努力が存在し、仕事に張りができる。毎日の激務の苦しみが喜びに変わる。

会社や店の規模が問題ではない。経営者として、会社をどのようにもっていくかのビジョンがあるかないかで、企業か家業かに分かれる。そして、それをどのように徹底させ、具体化していくかによって、従業員が定着し、努力するかどうかが決まるのである。

会社は、その事業を行うために志を同じくする同志の集団でなければならない。そのために、一つの理想や抱負や目標が必要なのだ。そこから経営活動が始まる。上も下もない、チーム一丸となって作戦を検討し、実行し、反省していくのだ。

各人ごとの成績がわかるように、目標を個々に割り当てていく。野球やゴルフ、競馬などが面白いのは、勝敗やその時点での成績がハッキリわかるからである。これにスピード感と金銭が加わるといっそう面白くなる。仕事をこのようにゲーム化していく。毎日、毎週、毎月の成績がわかるようにしていく。予定と実績が対比できるようにしなければならない。

商売はビジネスであり、ソロバン勘定であるにもかかわらず、自分の感情や個人的な血縁、友人関係などを経営の中に持ち込む。個人的なことはソロバンにのらない人間関係である。これを経営の中で混同するから、従業員も勤めにくいし、経営もうまくいかない。

あらゆるものが勉強であり、PR紙だけでもよく読めば経営にプラスすること大である。講習会なども色々ある。しかるに、宴会やゴルフとなると万障繰り合わせて出席しても、研修や勉強会には出て行こうとしない。

時間と金の使い方をみると、人間の値打ちがわかるというが、まさにそのとおりである。同業者より抜きん出ようとするならば、人一倍勉強することだ。
一生懸命働くということはよいことだ。稼ぐに追いつく貧乏なしというが、職人や社員と同じように働くだけではダメで、経営者は頭を人一倍使うことが必要である。

経営者は判断を下すのが仕事である。とにかく頭を悩ます問題にぶつかると、心が沈み、ものごとを悲観的に考えがちである。難問にぶつかることによって経営者は成長するのだ。不渡りをつかまされても、人が辞めても、これを将来の自分の発展のための試練と考えると、原因を調べ、対策を立て、過ちを二度と繰り返さないようにしていくだろう。

すべてプラスに考える。前向きに考えることだ。経営者の基本的な問題について改めて反省して欲しい。
2006.10.20:反田快舟:[経営箴言]

この記事へのコメントはこちら

※このコメントを編集・削除するためのパスワードです。
※半角英数字4文字で入力して下さい。記号は使用できません。