老兵の半生(ビル沢湖)

昭和35年、私19歳、今から48年前
地元に水道が引かれるとの事で、街中の主要道路の端を、大勢の
人たちが、(つるはし)と(スコップ)を使って掘っていました。
自宅前も、毎日毎日その人たちで、少しづつ距離を
伸ばしていました。
その中に私と同世代の背の高い痩せ型の、ちょっと男前の
彼がいました。水を飲ましてくださいと言われたのが、きっかけで
話をするようになり色々話しているうちに、彼は南高(現在の長井
高校)を卒業し役所の水道課に、就職して毎日水道埋設のため
道路堀をしているとの事でした。私は上京して挫折帰郷して
目的も探せず、いわゆる荒れた生活の毎日を過ごしていた
時期でした。
ある日、「今度の日曜日サイクリングに行こう」
「何処まで」「高畠のビル沢湖まで」
「無理、俺は体力も無いし右足に欠陥を持っているから」
「やってみなければ、解らないだろうゆっくり、時間をかければ
行けるよ。俺がサポートするから」強引に約束させられ
私にとっては、清水の舞台から飛び降りるような気持ちでした。
ビル沢湖の"手ごきボート"に寝そべって見た
そらの青さが、今でも鮮やかに思い出されます。
なぜそのとき彼は、強引に私を連れてってくれたのかは
解りませんが、努力もしないで、すぐあきらめる事は、
人間として最低の生き方だと、教えてくれたのかも知れません。
それほどその時の私は、無気力だったのかもしれません。
挑戦する事で、自分の可能性を引き出すことが出来る。
その後の私は何かが、開けてきたような思いで一杯でした。
この達成感がその後、おくればしながら高校入学することに
なった要因のひとつになったのでした。

彼には何十年もあっていないが、元気だろうか。

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