ぼくのニワトリは空を飛ぶー菅野芳秀のブログ

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三人の男子農業高校生が我が家に三日間の研修に来た。なんでも、インターンシップといって職業体験の一環なのだという。今年で四年目だ。

「すみません。トイレかしてください。」息子と一緒にニワトリの仕事をしていたはずの生徒たちがかわるがわる母屋に駆け込んできた。「ああいいよ。」またしばらくしたら「すみませーん!」そして「ああいいよ。」

これが一日の中で何度も繰り返される。始めは腹の調子でも悪いのかと思ったが、やがておしっこだとわかった。おしっこをしに?わざわざ?どうして便所まで来るんだい?
鶏舎の前には800ヘクタールの広大な水田が広がっている。そこでやればいいではないか。ぼくなんかしょっちゅうだ。

水田を渡るさわやかな緑の風を感じながら、あるいは朝日連峰の山並みに暮れ行く夕日をながめながら、はたまた青空に流れる白い雲を見つめながら・・・。きっもちいいぞぉー。生きているなぁって思うさ。

「あのぉ、まわりの人から変な目で見られそうで・・。」と生徒は答えた。

そうか。だけど田畑でのおしっこは誰にも迷惑をかけてないぞ。都会のアスファルトの上とは違う。環境にだって全く負担をかけていない。小便は土に溶け込み、作物や草の肥やしになるんだ。タヌキやイタチのそれと同じだよ。大地との循環だ。見た目は確かに良くないかもしれないけど、それだって慣れてくればかわいいものさ。

君達には信じられないことかもしれないけれど、ちょっと前まではね、女性も立ち小便をしていたんだ。小便しながら道行く人々と立ち話すらしていたぞ。その頃、ぼくは子どもだったけど、何の違和感もなかった。ぼくは当時のそのおおらかさがむしょうに懐かしい。

なぁ、農業高校生よ。土とともに、土を友達として生きようとする俺達だ。生き物としての人間と、母なる大地と、おしっこと・・。この関係をのびやかにとらえ直してみようよ。そこには単におしっこだけにとどまらない、生き方や農法にもかかわる大きな哲学が横たわっているかも知れないぞ。






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