ぼくのニワトリは空を飛ぶー菅野芳秀のブログ

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 お米をおとりいただいているみなさん

山形の百姓・菅野芳秀です。
もっとも気がかりな我が家のお米の放射線検査結果がでましたのでお知らせいたします。
数日前より山形県では県内231箇所で、刈り取り前と出荷前の二度に渡るお米の放射能検査を行い、いずれも「検出せず」の結果を公表していました。その検査の下位限界値は20ベクレル/1kgでした。

 我が農園ではもっと詳しく知りたいと、9月25日、茨城大学の「応用粒子線科学」専攻長・高妻孝光教授においでいただき、お話を伺うとともに、お米の検査をお願いいたしました。昨日、その検査結果がでました。
研究室での12時間の連続検査の結果、「検出せず」!!
我が農園の米からは、わずか1ベクレル/1kgの数値も出なかったということです。よかった!
皆さまにお届けするお米は、昨年とまったく同じお米であることが、最新科学の力で実証されました。これでご安心いただけると思います。

 息子は、かねてより「自分の子どもに食べさせられないものをお届けすることはできない。」、「もし高い数字がでたら俺はこの米を廃棄し、百姓をやめる。」と家族にも周辺にも宣言していました。この結果に胸をなでおろしています。

 田畑といういのちの場が無事であってほしい・・山や空に祈る日々が続きました。その土は守られていた。過去から引き継いだ健康な土をそのまま未来にお渡しすることができる。息子のこととあわせ、農民として生きる土台が健全であったことに、山にも空にも感謝したい思いです。

 それだけに、フクシマの農家を思うとき、辛く切ない思いが湧いて来ます。彼らも同じ思いで、山をながめ、空を仰いでいたことでしょう。

全国からたくさんの検査依頼を受けていた高妻教授研究室の検査設備を、12時間の長きに渡って独占しましたことに痛みを感じます。また、あわせて、どのような小さな放射線も見逃さないようにと監視いただいた関係者の皆さんに改めて感謝いたします。

これで稲刈りにも力が入ります。


   土・いのち・循環の下に・・菅野農園
                 〒993-0061





19日の大江健三郎さんたちが呼びかけた「さよなら原発」集会(於;明治公園)に参加してきました。
ものすごい人でした。
開始までまだずいぶん時間があるのに、これ以上は入りきれないぐらいになっていて、入るのをあきらめた人たちは周辺の道路や空き地にまであふれている。それでも千駄ヶ谷駅や信濃町駅から明治公園までの道路は集会に向かう人の流れでいっぱいだった。
これほどたくさんの人たちを一度に眺めるのは・・・40年ぶりかな・・・。はじめてかもしれない。それはさておき、この規模は原発の歴史上初めての出来事だろう。
あふれる人たちを呆然とみながら・・・わけもなく・・・日本は変わる!大丈夫だ!
との気持ちが湧いてきましたよ。

会場では若い青年たちもたくさんいたけど、
明らかに団塊の世代だと思われる人たちが目立っていて、
そうなんだよな。来たんですね。あの人たちも。
かくいう私も「日大全共闘」、「芝工大全学闘」、「明大全共闘」の旗がたなびく下、全体集会の前の小さな集会に参加しました。
芝工大の人・・といっても60歳代の方なんだけど、その挨拶を聞いていたら、当時のままなんだよね。話のリズムがさ。言葉遣いも。参加者からも時々「異議なし!」などという掛け声が上がったりして。「異議なし」だよ・・・。懐かしいというかなんというか・・、ねぇ。
でもさすがに「ナンセンス!」はなかったけど。

子ども連れのお母さんもいる。老人も。商店街で普通に歩いている人たちがそのまま駆けつけたという感じなのだ。労働組合の旗もたくさんあったけど、集まっている方々はとにかく多様だ。

地殻が動いている。ずいぶん長らく動くことがなかった岩盤が動きはじめた。そんな思いをもった集会でした。

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 「いまや、都会の人達は卵かけご飯は食べなくなっているんだよ。気味悪いから。箱根の旅館やホテルでも朝食に生卵や、温泉卵は出さないところが増えているよ。」
食に詳しい小田原の友人が教えてくれた。そうだろうね。

身動きのできないカゴに入れられ、添加物のかたまりのようなエサと予防薬漬けの毎日。カゴの下を見れば、健康なニワトリのフンとはまったく違う液状のゲリ便が・・。彼らの産み出す卵は・・・ストレスのかたまり・・・。

 世界中の生き物達の中でゲージ飼いのニワトリたちほど不幸な動物はいない。羽を持っていても飛ぶことはおろか、広げることすらできず、足があっても歩くことができない。お日さまを拝むことも、風をうけることもなく、両脇に隣人の体温を感じ、対面に自分と同じように苦しむ同輩を眺めながら、長い一日を過ごしている。うわぁーぁ、やりきれないねぇ・・・。

私は農業に就いてから、そんな工業養鶏の現場を知り、抵抗力のない子どもや年寄り、病気がちな人、妊婦などにはゲージ飼いの卵は食わせられない、そうおもってきた。

我が家の玉子は、自然に近づけてニワトリたちを飼い、草や野菜などの緑餌をたくさん与え、放し飼いで充分運動させる。そんな中から産み出された玉子だ。昔の玉子もそうだった。

 ドイツ全土から、2007年1月1日よりゲージ飼いのニワトリ達がすっかり消えた。全ては大地の上で飼育されている。ヨーロッパ全体では2012年1月1日から実施するという。いい話ですよ、人間であろうがなかろうが、幸せにつながる話は歓迎だ。EU加盟国の国民は昔の玉子を食べることになる。

 彼らを生き地獄から救ったのは消費者運動だという。ドイツ政府に働きかけて実現した消費者運動の大きな成果。自分達が手にする食べ物の質を問題にするだけでなく、そのつくり手の状態にまで思いの範囲が及んでいるということか。

 他方、日本の消費者運動はどうだろうか。残念ながら自分達が食べる卵の安全・安心を問題にしても、ニワトリ達をゲージから解放しようという声は聞いたことがない。思いはそこまで到達していない。自分(達)に、問題のない食べ物が手に入るなら、それから先のことには...ということか。

 話が変わって、日本の米作りの現場。東北農政局が発表したH18年度の生産原価は15,052円/60kg。農家がJAに売り渡す価格は12,000円/60kg前後。作れば作るほど赤字が出てしまう。H19年もH20年も同じだった。こんな原価割れの米作りが数年続いている。農家の平均年齢は67歳。当然のことながら若がえる兆しはまったくない。いまさら転業もできないから・・という年寄り達の思いだけが継続の原動力だ。

 ニワトリ同様、消費者の思いは生産現場まで到達していない。それだけではないけどね。

 タマゴやお米に限らず、生産現場を知り、そことの関係をもう一度作り直すことから始めなければならないのではないだろうか。それにはまず、現実を知ること。それと、生きるうえで何が大切か、どのように生きたいのか・・を考える「哲学」を暮らしの中に。ここからですね。
  
 だけどなニワトリたちよ。
 かの国のように消費者運動にだけ頼っていてはいかんぞ!
 自分でなんとかする道をみつけなければな。
 自力解放の道を・・さ。
 何ができるかって?
 自分で考えるんだよ!



 12~15日のきわめて短期の旅行ですが
沖縄宮古ー本島に行ってきます。
それまで留守にいたします。
かえってきましたらいよいよ稲刈りの準備です。



ドイツのTVだそうです。
ご覧になった方も多いかとおもいますが・・。
http://www.youtube.com/watch?v=4S1bTmrILgs


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どうでもいい話なんだけど。
この暑い最中に話題にしなければならないことでもないんだけど・・・な。
聞くたびにガクッときて大いにリズムが壊されてしまうことがある。
それは言葉と話し方に係ることだ。三つ。

一つ目は、「ハーイ」ということ。電話の終わりのところで「ハーイ」。ひどい場合はその「ハーイ」を三つぐらい重ねる人もいる。軽い話の後ならばそれも良いかもしれないが、大切な話や深刻な話の後にこれをやられると、今までの会話はなんだったんだという気分になってしまう。「あんたとの電話はこれで終わり。ハイまたね。」ということか。電話にしたって終った後の余韻というものがあるだろうが。これでは台無しだ。一目置いている人からこれをやられると、エッと思ってしまうよ。

二つ目は「中上げ」。話している途中の小さな区切りともつかないところでクイックイッと話の語調を上げる、そう、例の話し方。出てきたのはずいぶん前だが、やがてなくなるだろうと思って我慢してきたけどもなかなか消えない。なんなんだよ、あの話し方は。聞いているこちらのリズムがかき乱されることおびただしい。上げられる度に思考が停止してしまう。決して話し手のプラスにはなっていないはずなのにそのことがわからないのかな。バカでないべか・・。

三つ目は「〜ございます。」という話し方。こちら(山形県)では公務員からJA職員まで良くやる話し方だ。「〜してございます。」、「〜資料が入ってございます。」、「取り組んでございます。」・・・。決してへりくだっているのではないことは態度でわかる。言葉というか、語尾だけがバカ丁寧なのだ。「〜います。」でなぜ悪い。日常的な態度が尊大である分だけ、このギャップが気持ち悪い。

やめてほしいねぇ。バカとは言わないが、少なくても利口そうには見えないよ。俺だけだべか、こんなことを思うのは・・・。

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我が家のニワトリたちは3月11日以降、まったくといっていいほど外に出ていない。
わずかに鶏糞を田畑に運ぶときに数日出た程度だ。あとは鶏舎のなかに入りっぱなし。原因は原発事故。
 われわれのところの空間線量は県庁発表で0.04〜0.07マイクロシーベルト/h前後。ドイツから送っていただいた例の測定器をもって自分で計測してみても0.08(地上50cm)〜0.12ほど。空間ではなく、実際にニワトリが踏んだり食べたりする土がどの程度汚染され、それが玉子にどう移行するかは、われわれにもまだ分かっていない。空間線量はそう高くはない、だから心配しなくてもいいよと同じようにニワトリを飼っている友人は言うのだが、わが農園の担当者である息子はもしものことを考えて「うん」とは言わない。

 鶏舎は四面が金網で土の上に建てられている。風は吹き抜けていくし、お日様の光は朝と夕に鶏舎の中まで入り込んではくる。1坪に10羽以内で一つの集団は100羽以内。ニワトリたちはその中で餌を食べたり、遊んだり、玉子を産んだり・・と一日を過ごす。
 とはいえこれは平飼い養鶏ではあっても放し飼い養鶏ではない。例年ならばニワトリたちの遊ぶ鶏舎の周りの草は、彼らにキレイに食われてしまうのだが、今年はゆらゆらと生い茂っている。さながら草に囲まれた鶏舎といった具合だ。
 如何に中が快適でも、外の魅力には勝てないはずだ。ニワトリたちはきっと、外に出たい、外に出たいと思っているだろうな。羽を広げて飛び回りたい。走りたい。土を啄ばみたい。草を食べたい。日光浴をしたい。虫を追いかけたいと。でもそれができないのだ。つくづく申し訳ないと思う。

 土の調査を、友人を介して大学の研究室に頼んでいる。すまないがもう少し待っていてくれ。

 写真・・・いつもはこんな風景なのだが
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TPPに反対する人々の運動〜小さな民衆運動の誕生と経過を通して〜

「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に百姓は腹が立たないのか!ムシロ旗を立てて行動を起こそう。」
新潟で百姓をしている友人から、こんなメールが送られてきたのは昨年の秋ことだ。TPPの求める「関税の撤廃」によって日本農業は壊滅する。その時、多くの農民はそう思った。しかし、やがてTPPは農業の問題にとどまらず、日本社会の在り様を大きく変えてしまう内容を含んでいることが分かってきた。
アメリカはTPPを足場に、アジアへの影響力を拡大しようとしていること。TPP参加予定国のうちアメリカと日本でGDPの91%を占め、実態は二国間の貿易協定であること。アメリカはその中で日本に農作物のみならず、金融、公共事業、医療、サービス、知的所有権・・・などほとんど全ての分野での市場開放を求めていること。日本の内政にかかわることでも、例えばアメリカの政府、または企業、あるいは投資家が「障壁だ」と見なせばそれを取り払うよう交渉することができるし、いざとなればしかるべき国際法廷に提訴することもできる。つまり日本の国内政策の上にTPPが君臨するよう仕組まれていること。例えば食品などへの様々な輸入制限なども「障壁」とみなされるだろうし、東日本復興に向けての20兆円規模ともいわれる公共事業もアメリカ企業にとって格好の参入対象となるだろう。
これらを知ることで、TPPへの参加は政府やマスコミが言うように「日本を世界に開く」のではなく、「日本をアメリカにあけわたす」に等しいということが分かってきた。なんとしてもこれを止めなければならない。
12月15日、東京での第一回目の会合には農民のみならず多くのNGO団体や個人が集まった。その場で『あたり前に生きたいムラでも、マチでもーTPPに反対する人々の運動』とう名の民衆団体が結成された。
 翌年の2月26日、東京の明治大学に400人を越える人たちがあつまった。会場は反TPPの熱気に包まれた。そして、3月11日の震災と原発事故。
日本の財界は、東日本大震災後の復興に寄与するためにもTPPへの参加を急ぐべきだとする提言を発表している。彼らはTPPへの参加の手綱を緩めてはいない。それどころか一層歩みを早めようとしている。
われわれもまた、「3.11」に揺れながら、これからの反TPPへの取り組みの拡大を考えなければならないだろう。ここでも民の力が試されている。


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 8月分のお米です。

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今月のお米の味は如何でしょうか?
お届けしましたお米は出荷直前まで籾(もみ)をまとっていました。服を着ていました。7月にもお伝えしたかと思うのですが、それには訳があります。といいますのは・・・。
 お米の多くは玄米で貯蔵されています。その玄米は梅雨に入ってから急速に劣化していきます。玄米の肌が見るからに荒れてくるのですね。かつてあったべっ甲色のつやつやした輝きは失われ、いかにも「苦労したよ」というガサガサした感じになっていくのです。この落差はちょっとかわいそうなくらいですよ。わけを言えば、玄米が梅雨を前後する環境の大きな変化に「素っ裸」で対応しているところにあります。暑いし、蒸すし・・、大変な苦労だと思いますよ。エネルギーもたくさん消費したでしょう。その結果、つやつやがガサガサに・・・というわけです。これを防ぐためには玄米を低温倉庫に入れるなどの方法もありますが、自然なやり方としては玄米にせずに籾のまま貯蔵するという方法です。籾は固いガラス繊維でしっかりと玄米を包みこみ、守っていくのです。我が農園のお米は、昨年の秋から今年の8月分まで、ずっと籾の被服をまとっていました。べっこう色の輝きを失わずにいました。お届けしたお米はそんなお米です。

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今月も「黒い斑点」をもったお米があちらこちらにあるかもしれません。「カメムシ」の食痕です。「色彩選別機」を通してできるだけ取り除いているのですが、多少は入ってしまいます。味には影響いたしませんし、身体に悪い影響があるわけでもありません。そのまま食べていただいてかまいません。穂の乳熟期に殺虫剤を一回でもやれば被害を防ぐことができるのですが、先月にもお伝えしましたように、そうしますとトンボやクモなどの益虫たちも一斉にいなくなってしまいます。できませんよね。我が農園のお米を食べていただいている皆様にはきっとお分かりいただけると思います。

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もうじき、稲たちは穂をだします。品種は「ひとめぼれ」、「コシヒカリ」それに「黄金もち」です。「殺虫剤」、「殺菌剤」はやっていません。化学肥料も使っていません。肥料は堆肥などの有機肥料のみです。

 健康は食から、食は土から。人間は土の化身です。だから・・何よりもいのちを育む土を守り、その結果として生命力豊かなお米を作りたいと願ってきました。田んぼが黄金色に輝くのはもうじきです。どのようなお米が育っているのでしょうか。
 幸いにも当地への原発の影響は低いと言われていますが、同じ志を持ちながら田んぼに立ち尽くす福島の農民を思うとき・・・言葉もありません。

 土といのちの循環の下に・・・菅野農園(代表;菅野春平)

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うれしいニュースです。
ドイツから放射線量の測定器が贈られてきました。
長井市はスイスとフランスとの国境近くにあるドイツの小さな町、バードゼッキンゲン市と姉妹都市交流をしています。長井市民がそのまちを訪問すれば必ずといっていいほどお世話になる方がいます。日本人のすてきな女性で、お名前は「くみ」さん。私のブログにもなんどかコメントをいただいているかたです。ドイツでの生活が長く、もちろんドイツ語も英語もぺらぺらと操ることができ、また社交的な方でもあって、ドイツの地域社会に溶け込んで暮らしておられます。
 贈り主はそのくみさんですがそういうと彼女は違うよって言うでしょうね。

 「周囲の方々がずいぶん心配してくれるんです。日本は大丈夫か。日本の家族をこちらに連れてこなくてもいいのかって。そしてね、私のところにもいろんな方が義援金をよせてくれるの。日本の被災地の方々に渡してほしいって。この間なんか日本の被災地支援のチャリテーコンサートを開いてくれたんですよ。そのようにして集まったお金です。だから、放射線測定器をお贈りしたのは私ではなく、チャリテーでご活躍いただいたデッツエルン村男声合唱団の方々や周辺のドイツ人のみなさんなんです。また、製造販売会社であるSTEPSENSOR社のご好意もお伝えしたい。ドイツでも測定器を手に入れることが難しく、いまでも5ヶ月待ち。でも日本の被災地周辺の方々にお贈りするのならと、特別にはからってくれて、早くかつ大きく割り引いてくれたんです。いつでもドイツの地から日本のみなさん、長井市のみなさんに心を寄せています。どうかよろしくお伝えください。」

くみさんはこのように話していました。情感豊かな方ですから、きっとくみさんの涙腺は緩みっぱなしだったのでしょう。俺にしたってくみさんからのメールや電話でその模様を知るたび同じように緩んでしまいましたよ。
 測定器は、長井市の「バードゼッキンゲンクラブ」(遠藤三雄会長)を通して、市民がいつでも活用できるようにと市に寄贈されました。

久しぶりにいい話です。
ありがたい話です。


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本日、山形市の山形大学で「家庭科教育研究者連盟」の夏季シンポジュームがおこなわれます。下はそのなかで私が話を受け持つことになった分科会の紹介です。かつてブログに書いたものも含まれていますが邪魔でなければお読みください。


「分科会名「レインボープラン〜循環型農業の成果と課題」

昨年の秋、同じ村で米作りをしている百姓仲間が来てこう言った。
「米が安すぎだよ。今年、農協への生産者の売り渡し価格は1俵(玄米60kg)あたり9,000円だとさ。ついに10,000円を切ったよ。ほぼ40年前の価格に戻ったことになるんだぜ。それでな、40年前の朝日新聞の一ヶ月の購読料はなんぼかいうと・・だ。」
と、彼は書きとめてきたノートをめくって
「900円。それが今日では3,925円となっているからおよそ4・36倍だ。それを米の価格にあてはめれば・・だな。一俵あたり39,370円だ。それを9,000円だぜ。話題の戸別補償を加えても10,500円だよ。いくら規模を拡大しても追いつけない。この国では米作りは無理だということだべな。」とまくし立てた。そうかもしれない。それに、この米価によって、農法においても、化学肥料と農薬による省力化された農業がいっそうすすむだろう。環境と食にとって、決してプラスにはならない。時代に逆行している。

今年の2月のある日、隣町で米作りと和牛の肥育をやっている友人がやってきてこう言った。
「今度はTPP(環太平洋経済連携協定)だとさ。無関税で農産物が入って来るんだと。これが通れば自給率は14%まで下がると農水省が試算している。農業をやめろといっているのと同じだな。」
水田とともに、数千年の歴史を刻んできた村はいま、少しずつ崩壊への道を歩もうとしている。わが村の水田農家の平均年齢はおよそ67歳。日本の農家の平均年齢とほぼ一緒だ。後継者は育たない。期待された大規模農家も立ち行かない。村はこのまま衰退して行くのだろうか。

そして3月の原発事故を経て6月。千葉県の百姓で野菜農家の友人がやってきてこういった。
「ようやく春野菜の収穫にこぎ着けた。だけどな、あの日から今日まで、長年お付き合いをしていた生協から注文がほとんど入らなくなった。成長した葉物はそのまま収穫せずに、トラクターで畑に鋤(す)き込んだよ。このまま百姓を続けることができないのではないか。」

低米価もTPPも原発災害も根っこは一緒だ。経済成長と市場原理。いずれもその伸びきったところでの出来事だという点で。
「これまでも農業は自然死への道だったよ。TPPやめてそこに戻ればいいというわけではない。放射性物質を取り除いて、田畑が元の状態にもどればOKだということでもない。この国のあり方を、もっと根本から組み立てなおすことが求められているのだけど・・。」
千葉の友人はそんなことを言って帰って行った。
彼が言うように、この国の農業も食料もエネルギーも、いま新しく出直すことが求められている。
さて、山形県長井市ではレインボープランという名の市民と行政が協力しながら進めてきた事業がある。これをとおして「環境」、「循環」、「健康」、「福祉」、「自給」、「参加」などの視点から新しい農(土)と市民の関係を築こうとしてきた。具体的にはまちの台所の生ごみを集めて堆肥をつくり、農家がそれを活用して農薬や化学肥料を削減した作物を生産し、まちの台所に返そうという循環の事業である。稼動して13年。この事業は、時代への「対案」として育てられてきた。
この実例を報告しながら、農、食、地域やこれからの暮らし方、社会のあり様を考えようとする。
「3・11」以後、少なくとも意識レベルでは生き方、暮らし方を変えようと考える人たちも多くなっていると聞く。不幸な中にも希望はある。この機を逃してはならない。

ともに考えてみませんか?

(写真は真冬の我が家。暑いから寒い時の・・・)






 たくさんのご注文ありがとうございました。
おかげさまで若鶏の玉子はキレイになくなりました。
皆様のご支援に感謝いたします。