ぼくのニワトリは空を飛ぶー菅野芳秀のブログ

 10日の晩、「置賜自給圏推進機構」の呼びかけで、地域でとれた大豆を地域で加工し、地域で食べることのできる、そんなまちづくりを目指しての「大豆プロジェクトモデル事業」の初会合が行われ、事業のスタートを切った。

豆腐、納豆、みそ、醤油など大豆加工食品はたくさんあるけれど、圏内大豆と輸入大豆との価格差が大きく、地豆の良さを充分に理解しつつも、一部の例外を除き、なかなか取り組めない現実があった。
そこで今回、関係する方々が集まり、生産から消費までのモデル事業をともにすることで、なんとか地産地消の糸口を見いだせないかと話し合った。

会合にはJAなどの生産者(団体)、トーフ、納豆、みそなどの加工業、スーパー、生協などの流通・販売業、消費者団体、それに市や町、県の行政関係者、商工会議所、置賜自給圏推進機構の関係者など25名ほどの人たちが集まり、事業の主旨、目的、課題などを話し合い、モデル事業のスタートを確認しあった。

 地域の主人公はそこに住む住民だ。いま、地域をどう形作っていくのか。そんなことを考えながらの一年が始まる。
前回の補足 <「四つの基本」の4>を子どもとの関係でいえば。

学校の連絡帳に「明日は〇〇作業のために学校を休みます。」と書いて持たせたことはしばしばあった。その度に担任は「がんばってね。」と返事をくれた。〇〇には田植えや稲刈り、雪下ろしなどが入るのだけれど、けっこう休んで一緒に田畑や屋根の雪の上で過ごした。期間とすれば保育園年少から小学校2年ぐらいまでだろうか。保育園はともかくとして、学校の担任はよく了解してくれたものだ。当時の学校には感謝している。
 それも「おれ、稲刈でなく学校に行きたい」と言い出したことで終わった。  いま、娘は関東だけれど、息子は我が家の農作業の中心で働いている。
 96歳の母親は、「もっと違う道もあっただろうに、農業なんてかわいそうだ」と言うが、本人はいたって前向きに頑張っているよ。もちろん、この選択と姿勢が幼少時の体験とどう関係するかはわからないけどね。

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私が2ヘクタールほどの水田農業を継いだのは26歳の春だった。農業に就くにあたって、どんな農業をやりたいのか、農民としてどう生きたいのか。まずは「憲法」を作ろうと考えた。俺のことだ。これがなければ右に左に・・と、大きく迷走し、自分の農業を見失ってしまうだろう。それを防ぐためにも指針が必要だ。若いというか、このあたりはかなり理屈っぽい。
まず、「憲法」の基本を「楽しく働き、豊かに暮らす」と定めた。よくよく考えてみるとやっぱりここに行き着く。農業を生業に選んだことの意味はこれに尽きると。誤解の無いように言っておくが、「豊かさ」とはお金のことではないぞ。
その上で「四つの基本」を決めた。1、食の安全と環境を大切する。2、暮らしの自給を高める。3、きれいな農的景観を創りだす。4、家族みんなが農業に参加できるようにする。
で、実際に取り組んだのが水田の有機栽培とニワトリを大地で飼う自然養鶏との組み合わせだった。くず米、くず野菜、草などをニワトリに。ニワトリのフンを田畑に。健康なコメと玉子、鶏肉を得るだけでなく、肥料も自給できる。玉子は市場ではなく直に町の消費者に直に届けよう。「通信」を書き、玉子に込めた私の思いも一緒に伝えて行く。人と人とが食べ物を通してつながっていける。市場に出すだけの農業では味わえない醍醐味だ。これで農業がより面白くなっていくに違いない。

あれから40年。鶏舎のまわりに植えた梅や桜は大木となり、子どもたちはニワトリ達と戯れながら大きくなった。200軒のお宅にお米や玉子を配っている。だいたい計画通り歩いて来られたと思う。それを支えてくれたのは私の「憲法」の力だったと思っている。
いま、農業の中心は息子に移った。今度は息子が「憲法」を書く番だ。どんな憲法を書くのだろうか。とても楽しみにしている。
東京、山形、大阪と「ストップ!!TPP国際シンポジューム」が開催され、31日の山形会場では、およそ200人の老若男女が詰めかけ、マレーシア、ニュージーランド、韓国からの報告に耳を傾けた。

 マレーシアのファウワズさんからは「TPPの中のISDS条項によって外国から進出した企業は、その国の法律に従わなくても良くなってしまう。国内政策が成立しない。公共事業も外国の巨大企業に奪われてしまうことで、自国の経済発展を考えた発注ができにくくなってしまう」と訴えた。

 ニュージーランドの先住民・マオリ族から来られたモアナさんは「トップ5%が40%の富を持ち、14・6%のマオリは5%しか持てず、最下層に置かれている。いまもなお、植民地化された現実を変えることができていない。そこにTPPがかぶさってくる。TPPの価値観はマオリの伝統的な考え方と相いれない。マオリにとって山や森、川や海は部族みんなのものだ。それらをTPPは西洋的財産権をもって独占しようとする。それはマオリの権利と相いれない。マオリだけでなく、TPPは限りなくその国の人々の権利を奪っていく。」と話した。

 韓国のノ・ムヒョン大統領の首席秘書官だった鄭(チョン)さんは、「韓米FTA締結(2011年)から4年たった現在、アメリカによって韓国の54の法令が変えさせられた。韓国社会はアメリカのような社会にされようとしている。」と報告された。

 フロアからも「TPPによってこの社会が壊されようとしているのに、日本のマスコミは真実を伝えない」などの意見が出された。

 この国際シンポジュームを通して、TPPは単なる交易上の条約ではないこと。その本質は多国籍企業が国を植民地化しようとするものであること。同時に、それぞれの国では様々な反TPPの運動が闘われていること。それらの国境を越えた連携が求められていることなどが明らかとなった。

 さぁ、いよいよ正念場ですね。国会批准阻止に向けて、まずは参議院選で勝利することでしょう。どちら様も頑張り時ですぞ。
この歳になっても、思い出せば耳をふさいでワァーッと叫んで走りだしたい(その点は人によって様々な動作があろうが)恥ずかしい事って年に二、三回はあるよな。ないかな?俺はあるんだ。その度に俺ってダメな人間だなぁって思うよ。
 歳を重ねれば重ねるほどに人格力が増して行くってウソだね。自分に関して言えば・・・ないなぁ。50になっても60になっても・・。だから努力してもどうにもならいとは言わないよ。努力しなかったなら、もっとダメなわけで・・・。これからもがんばっては行くけどさ。でも努力はせずとも(と、外からは見えるんだけど)人格力に長けている人っているよね。
 学力ではないんだ。そんなものは積めば積むほどかえってダメかもしれない。それとはまったく別な資質なんだね、人格力って・・。ここが生きてきた意味に一番かかわるわけで・・。どうすればここを磨くことができるんだろうか。

 あぁあ、また正月、何が何だか分からないままに馬齢を重ねるよ。

<写真は雪と柿が一緒になったひところの風景>
この歳になっても、思い出せば耳をふさいでワァーッと叫んで走りだしたい(その点は人によって様々な動作があろうが)恥ずかしい事って年に二、三回はあるよな。ないかな?俺はあるんだ。その度に俺ってダメな人間だなぁって思うよ。
 歳を重ねれば重ねるほどに人格力が増して行くってウソだね。自分に関して言えば・・・ないなぁ。50になっても60になっても・・。だから努力してもどうにもならいとは言わないよ。努力しなかったなら、もっとダメなわけで・・・。これからもがんばっては行くけどさ。でも努力はせずとも(と、外からは見えるんだけど)人格力に長けている人っているよね。
 学力ではないんだ。そんなものは積めば積むほどかえってダメかもしれない。それとはまったく別な資質なんだね、人格力って・・。ここが生きてきた意味に一番かかわるわけで・・。どうすればここを磨くことができるんだろうか。

 あぁあ、また正月、何が何だか分からないままに馬齢を重ねるよ。

<写真は雪と柿が一緒になったひところの風景>
☀10aあたり8俵(1俵/60kg)が生産目標。
普通にお米を作って農協に出荷していたころは最低でも10a(10m×100m)あたり10俵(1俵/60kg)の収穫量がありました。12俵とって表彰されたこともあります。でもそれをやめて10年になります。今は8俵が目標です。通常の収穫量を10俵としますと、我が家の面積は430aですから、単純に言って86俵ほど減収したところを生産目標としているわけです。なぜそんなことをしているのでしょうか?

1、それは殺菌剤ゼロ、殺虫剤ゼロのお米を作りたいからです。
そのことによって、人体や環境への悪影響を少しでも減らしたいからです。本気でそう思っています。
 多収穫の為には、太った体格のいい稲をつくらなければなりません。それを化学肥料で実現しますが、そんな稲はどうしても病気に弱くなります。そこで農薬の登場です。化学肥料と農薬と・・このセットで米の多収を実現しているのが今の米作りです。
そのようなコメ作りをやめて、殺菌、殺虫剤、化学肥料をゼロにして、もっと食べるものの健康にいいお米を。環境にいいお米を作りたいというのが8俵を目標にした動機です。

2、おいしいお米を作るためです。
我が農園の米は、稲を追い込まず、無理をさせず、そうして自然に成粒になったものだけをお米として選別します。
多収穫のお米はおいしくありません。本来ならば未熟なお米で終わるところを、化学肥料の力で無理やり膨らまして成粒にしてしまい、多収穫を実現します。そんなお米は食べても水っぽくておいしくありません。同じ品種のお米でも、8俵を目標にしている米と決して同じではありません。食べ比べていただければ良くわかります。

3、殺菌、殺虫ゼロのお米は、食べる人の身体を守り育みます。自然環境も汚しません。
もちろん、食べる人の安全を守ります。赤ちゃんでも病気がちな方でも、菅野農園のお米はエネルギーにはなっても害になることはありません。また、近年、ミツバチが激減していますが、その犯人と指摘されているカメムシ用の殺虫剤などもまったく使用していないために、その点での環境への負荷もありません。菅野農園のお米はこんなお米です。

4、他のお米よりも少しは高い価格になっています。
そのような主旨での8俵を目標とする米作りです。スーパーやお米屋さんのお米よりは少しは高くなっています(白米、七分、五分米は10kgで5150円、玄米は4740円・・送料は全国一律650円)。
 どうかこれからも菅野農園の米作り、ご支援いただきますようにお願いいたします。

☁米の中に黒い斑点米が入ることもあります。
この斑点米はカメムシの食痕です。この斑点が1,000粒の中に3粒以内が1等米、4粒入りますと2等米となります。1等米と2等米では600円の差が付きます。この価格を我が家の田んぼにあてはめれば240,000円の差になります。そのために農家は農薬を使わざるを得ませんが、私は使用していません。使わない米作りを皆さんから支えられているからです。3粒が4粒になろうとも、食感的にまったく影響はありません。

土といのちとの循環の下に・・・菅野農園(代表:菅野春平)
〒993-0061 山形県長井市寺泉1483
FAX;0238-84-3196  携帯:090-9636-0360(春平)
アドレス;narube-tane@silk.ocn.ne.jp
12月12日,沖縄社会大衆党代表で参議院議員の糸数慶子さんを山形県置賜地方にお招きし、「沖縄島ぐるみ会議の実践に学ぶ」と題しての講演会を開催します。
 10月初旬に長井市で行われた「戦争やんだ」集会に集まった350名余の市民のなかから、「このまま陣形を解かずに参議院選挙に向けて全県的な運動を創りだして行こう」との声があがり、それへの第一歩として、糸数さんの講演会となりました。
 糸数さんは翁長知事を支える主柱です。表題のお話と同時に、沖縄の現状をお話しいただけるものと思います。
講演会のあと、引き続いて、「戦争やんだ!おきたまの会」の話し合いを行う予定で、置賜を皮切りに、住民パワーを山形全県に拡大していこうと意気軒昂です。
どうして急に俺のブログを訪ねてくる方がふえたんだろう?
一昨日は400件をこえましたよ。
悪いことをした覚えはないし・・・。
してるか・・。
それにしても・・どなたかご存知の方はおいでですか?

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詩人で農民の木村迪夫さんの世界を描いた「無音の叫び声」に寄せた拙文です。
映画は全国公開されています。
               以下 
 私にも後継者として期待されながら農業を嫌い、田舎から逃げ出したいと一途に考えた青年期があった。田舎を出て都会に。幾年かの苦悩の末の26歳の春。逃げたいと思う地域を逃げなくてもいい地域に。そこで暮らすことが人々の安らぎとなる地域に変えていく。叶わぬまでもその文脈で生きて行くことが、これから始まる人生だと考えるに至り、私は山形県の一人の農民となった。

 そんな私にとって、同じ山形県の農民で、ひとまわり上の世代がとてもまぶしく映っていた。この中には木村迪夫さん、星寛治さん、斉藤たきちさんという農民文學の同人誌「地下水」に集う方々や、佐藤藤三郎さんなど山形が全国に誇る農民が数多く存在していた。彼らは今でも第一線で農業を営みながら、詩の創作や社会評論、批評活動などを続けている。
 私はそれらの文章に接しながら、どれだけ励まされてきたか分からない。私だけでなく、多くの後輩たちが今まで何とか農民としての誇りを失わずにやって来られたのも、この方々がいてくれたおかげだと思っている。

 映画「無音の叫び声」がようやく完成した。
この映画は、その先輩たちの一人、上山市の牧野で農業を営む詩人・木村迪夫さんを通して戦後日本の農村を描いたものだ。
 木村さんは11歳の時、父親を戦争で亡くしている。山あいの小さな村、当時、貧しいと言えばみんなが貧しいのだが、特に貧しい農家の長男として、あるいは祖母と母と子どもだけの、村の中でも最も弱い立場の家族として、小さな耕地を耕し「泣きながら」生きてきたという。そんな毎日の中で、生きるために詩を書き、詩にすがって生きてきたとも語る。

 その時々の国の政策によって翻弄され続けてきた農業。木村さんは、上から下りてくる政策に安易に同調することはなかった。
 私がそんな木村さんに特別の親しみを持つようになったのは1977年から始まるコメの「減反政策」反対の取り組みからだった。村ごとに減反面積が割り当てられてくる。一緒に生きてきた村人の中で「減反拒否」を行動で示すことは極めてキツイことだった。拒否する側は農業を軽んずる国の政策に同意するわけには行かないということなのだが、具体的にはその時の村の「係り」とぶつかることになる。村人同士の対立になってしまうのだ。どうするべきか。農民としても、村人としても煩悶する。この苦しさは、私も減反を拒否した側に立ちながらも、破たんしたからよくわかる。私の場合は帰農して数年目だったが、村に生き続けてきた木村さんの厳しさは尋常ではなかったはずだ。

 木村さんには向う傷がいっぱいある。それは相手がとてつもなく大きな力だったとしても、けっして自分をごまかすことなく、自分自身への誇りを何よりも大切に生きてきた証(あか)しだ。まさに農業の世界を木村迪夫として生きてきたのだ。
 「この70年、節目節目で流されまいと踏ん張ってきたが、結局は時代に流されてきたのだろう。だが、苦難の道ではなかったし、自分を見失わずに生きてきたと言う自負はある。」(全国農業新聞8/14)

映画はそんな世界を木村さんの語りとともに描きだす。

                       (山形新聞)
モノで釣れ!!TPPで関税が下がればこんなに得だぞとマスコミを使って情報を垂れ流せ。バカな国民のことだから、ついてくるに決まっている。豚肉がこんなに安くなる。果物も、加工品も・・と。今のところはシナリオ通りにすすんでいるじゃないか。そら見ろ、TPPに賛成だという国民が多数派になりはじめた。
 どこかで誰かの高笑いが聞こえて来るようだ。もとよりTPPの主要な狙いは関税の撤廃と言うよりも、ISD条項を含んだ無関税障壁の分野にある。医療、サービス、投機、保険などの分野にこそ、よりTPPの壊国条約たる本質が含まれている。マスコミもそれを知りながら、TPPに関してはさながらTVショッピングのお得情報のような取り上げ方をやり続けている。

「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない。」2012年12月の総選挙にこのポスターを貼りまわり、選挙戦を闘ったのは自民党だ。それで民主党に勝ち、今の政権が誕生したわけだけれど、その後は我々が見てのとおりだ。しかし、公約を違えようがどうしようが、国民を金やモノで釣ればなんとかなる。今でもそう思っているのだろう。

 アメリカにとって、TPP条約は各州の法制度の下に置かれる。しかし日本にとっては国の法制度の上に置かれ、その主旨にそぐわない国内法制度はやがて撤廃か修正を求められることになる。TPPが通ればそれを前提にした法制度の改修が始まる。不平等そのものだ。
 それを主導するのが国境をこえて存在する多国籍巨大企業群。その下でアメリカ国民も日本国民もカナダもオーストラリアも・・。99%の国民はその餌食としてしゃぶりつくされる。壊国の条約と言われる所以だ。農業も農民もその例外ではない。

 コストをかけずに大規模に展開する。遺伝子組み換えでも、成長ホルモンでもなんでも有りで、目先の利益のためならば環境に無理をかけようが、食の安全を犠牲にしようがかまわない。世界市場で優位に立つ農業はこんな農業。持続的なあり方とは対極にある農業だ。アメリカを筆頭とするこんな農業に自民党は大きく扉を開けようとしている。それだけではない。日本の農業自体をアメリカと同じ形態に変えようとしている。まだまだ不充分とはいえ、環境や食の安全を守るために生産者、消費者、行政、農業団体が協力してすすめてきた従来の農業の崩壊が始まって行く。

 農水省は昨年産(2014年産)のコメの生産費を発表した。それによると1俵60kgあたり15,416円だという。農家はそれを仮渡金とはいえ8,500円で売らざるを得なかった。最終価格に補助金を加えても農家の手取りは1俵あたり12,000円を超えることはあるまい。今年は少し上がったとはいえ生産原価を超えることはないのは明らかだ。
 安さの背景には、日本が毎年輸入する77万トンものコメがあり、国内需給に大きな影響を与え続けている。ガット・ウルグアイラウンド(1993年)で日本が引き受けたものだ。そして今度のTPP交渉。さらに5・8万トンの無関税米が毎年入って来るという。合わせて約83万トン。山形県の総生産量(42万トン)の約2倍だ。コメ作り農民に作付をあきらめさせるに充分なほどの安さが続く。

 俺たちの村は穀倉地帯のど真ん中にある。地区民40戸のなかの14戸がコメの販売農家で、農民の平均年齢は65歳。
その中心的な担い手の建さん(78歳)と重さん(74歳)の二人と話し合う機会があった。話題はどうにもならない安さの中で、いつまでコメを作り続けることができるかの話だ。
「いま使っている機械が壊れた時かなぁ。それまで続けたい」と重さんは言う。
「コメ作りは人生そのもの。できるところまでがんばって行くよ。」と建さん。
こんな建さんや重さんが日本国の米作りを支えている。しかし、それにも限度がある。この人たちが本当にできなくなった時、田に苗を植えられなくなった時が日本農業のというよりも、日本自体の終わりなのだと思う。TPPはそこに我々を引っ張って行く。

 だが、TPPはまだ合意したわけではない。国会批准はこれからだ。当然、12か国の合意署名が揃ったわけでもない。肝心のアメリカだって議会を通過することが困難だと言われ出している。「大筋合意」とはしゃいでいるのは日本だけだ。さぁ、もうひと頑張りだ。ここでくじけていたのでは、後世に言い訳できない。とりあえず、一升ぶら下げて仲間の所に行こうじゃないか。

                   (拙文:農業協同組合新聞掲載)
 いつまでこんな連中を相手にしなければならないのだろう。毎日新聞(10月5日)の社説のことだ。それを読んでからずっとムカムカしている。
「農業の強化を妨げるな」と題したその文章には「今年の新米が、前年より高めの値段で出回り始めた。」、「米価の高止まりは生産性の低い零細農家の温存につながり、担い手への農地集約を妨げかねない。」、「高い米価が維持され、生産性の低い農家が存続すれば、農地集約も進まない。」よって、補助金を削減しろという。いままで何回も繰り返されてきた農業タタキ、農家タタキが書かれている。いったい「高い」という根拠はどこにあるのだろう。

 昨年同様、今年の米価も目も当てられない暴落の中にある。仮渡金とはいえ、今年は1俵/60kgあたり10,000円。昨年は8,500円だった。おそらく最終価格に各種補助金が加わっても1,000〜1,500円前後が上がるだけだ。10,000円前後の絶望的な安さは変わらない。
 この米価はいまから42年前の1973年(昭和48年)の10,300円(1俵/60kg)に近い。当時の新聞購読料は1,100円(1ヶ月)だった。それが今日では3,925円となっている。およそ3.57倍。その数値を当時の米価にあてはめれば1俵あたり39,773円となっていなければならないはずだ。繰り返すが、それを今年も1万円前後で販売せざるを得ない。

地元のスーパーでは新米が10kg3,000円で売られていた。そこから言えば、ご飯一杯(白米で70g)の価格は21円だ。5杯食べても105円。
 それでも新聞社は、米価が高いという。それを言うならば、新聞購読料金を1,100円/1ヶ月にしてから言うべきではないのか。

 他方、農水省はH25年の一俵あたりの生産費を15,229円と発表した。今年もほとんど変わらないだろう。コメを1俵売るごとにその差額分が赤字となっていく。
 この暴落の背後にTPPがある。そこで約束した輸入米7・8万トンを加えれば、およそ85万トンの無関税米が毎年輸入されることになる。山形県の総生産量・42万トンの2倍だ。かくて、暴落はとどまるところをしらない。やっていけないのは規模が大きい農家とて同じだ。かくて農業、農村、農家の壊滅的危機が進行していく。

あぁ、ムカムカがおさまらない。

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