Farm to table ファームトゥテーブル

メモ
繊細なネットが美しい尾花沢の『アールスナイト夏2』です。

メロンを育て始めて30年になります。
メロンの評価は見た目、つまりネットのきれいさが大切な要素なんですよ。いろいろな品種を作ってみましたが、ここ10年位は『アールスナイト夏2』を栽培しています。ふわっとした網目状で、なんというか女性らしい感じの形状で、栽培している時の玉のび(成長)もいい。この土地の気候にも合いますね。栽培を始めて30年になりますが、いいメロンが出来た時は最高ですね。

<出荷の流れ>
1.早坂さんの畑 → JA  → 東京の市場 
2.早坂さんの畑 → 直販
※9月初旬から10月いっぱいまで出回ります。買ってすぐより、少しおいてからがおいしいです。

大切なのは、何といっても温度と水

メロンは十分な水分が必要なので、井戸水と併用して与えていますが、ハウス内は水をやることで湿度が高くなり、そうすると病害虫が発生しやすくなってしまう。もともと病気に弱いから、管理が非常に難しいですね。基本は土づくりと丈夫な苗をそだてること。この周辺は畜産農家も多く、親戚も牛を飼っているので、自家製の堆肥づくりから始めています。

○発生する主な病害虫
・つる枯病・炭そ病・斑点細菌病・アブラムシ

○病害虫に使用する農薬
・ロブラール水和剤・ダコニール1000・ビスダイセン水和剤・DDV乳剤50

○農薬使用で心掛けていること
つる枯病になってしまうと、ほぼ全滅してしまうので防除に注意を払います。基本的に農薬は使いたくないと思うのが当然ですから、最小限の使用量です。メロン部会は現在18名。畑での講習会を独自で行っています。

メロンは、食べる場所(皮に近い部分と種に近い部分)によっても味や食感がまったく違うので、スーパーなどで販売しているカットメロンは、1個のメロンでも味の評価に個人差がでてしまうという難点があります。本当にメロンを楽しむなら、やはり1個まるごとを購入して、十分に味わい尽くすべき。「収穫してすぐと、日にちをおいてからでも違いがあるんですよ」と、ちょっと贅沢な味比べをさせていただきました。やはり少しおいた方が追熟していて、トロ〜リ濃厚、かつ上品な甘さが口いっぱいに広がって、ほんと、メロンは奥が深いです。

by kaori asakura

つるっと美味しい売り出し中の「つるり里芋」です。

試験的に作っているとき、こりゃ美味いって手応えを感じました。
里芋は種いもの保管や管理が大変で、その状態によって質が左右されます。つるり里芋は無菌状態(試験管の中)で育てた苗を定植し栽培するので、病気が少くなく、生育の揃いがいい。また収穫した芋は日持ちがよく、味もおちません。2年間、試験的に作り、平成10年から本格スタートしました。早く煮えて、くずれにくく、翌日もころころしたまま。でも食べるとやわらかく、ごそごそしない。つるりは煮物に向いているから、芋煮にもぴったりなんです。

<出荷の流れ>
1.仁藤さんの畑 → JA  → 生協共立社
2.仁藤さんの畑 → 寒河江市のJAアグリ店
※9月から出回ります。里芋は1株から小芋と孫芋合わせて30個位採れます。

環境にやさしい里芋づくりを実践しています。

堆肥は10アールの畑に2〜3トン。畑にはポリエチレンの被覆材のかわりに、トウモロコシのでんぷんを原料とした被覆材を使っています。これは微生物が分解して土にかえるすぐれもの。費用はかかりますが、環境にやさしい農業を心がけています。平成11年からは生協との付き合いが始まって、年1回は、消費者に芋掘り体験なども楽しんでもらっているんですよ。

○発生する主な病害虫
・アブラムシ類・ハダニ類

○病害虫に使用する農薬
・アドマイヤー1粒剤・ニッソランV乳剤

○農薬使用で心掛けていること
アブラムシ類はウィルスを媒介してしまうので、里芋の生育をさまたげないよう、植え付けの時に殺虫剤を使います。乾燥するとハダニが出るので、水やりをまめにして対策をとっています。

写真は仁藤さんの畑に立っている看板です。環境を考えた農業です。偽物がでまわるほど、「つるり」は人気の品種。ところで勘違いをしていました。里芋の大きい芋を親芋、その周りに付いているのを子芋というのかと思っていたら、「大きいのが子芋、小さいのを孫芋というんだよ」と仁藤さん。9月のうちは子芋が美味しいですが、10月に入ると孫芋の方が養分を吸って味がよくなるそうです。「親のすねかじって子が育つ・・・」どこの世界も同じなんですね(苦笑)。

by Kaori Asakura

くっきり星形の『花笠オクラ』は、中山の特産です。

高知や沖縄なども視察してきました。
7年前から栽培している「花笠オクラ」は、さやの色が濃く、5角がはっきりしているのが特徴。2年物のもみ殻を入れた堆肥で土づくりをしていますが、基本的には水も肥やしもあまりいらない作物で、病気にも強いです。とはいえ、質の高いものを作るまでには20年かかりましたよ。

<出荷の流れ>
1.渡辺さんの畑 → JA → 県内のスーパー
2.渡辺さんの畑 → 中山町のひまわり朝市
※出回るのは5月末〜11月上旬。頭の切り口がきれいなものを選びましょう。

素手では、指紋がなくなります。

一番大変なのは収穫です。オクラは表面が細かい毛に覆われているので、直接手で触れていると皮膚がかぶれてしまったり、長時間の作業になると、こすれて指紋がなくなってしまうこともあります。必ず軍手をしますが、朝晩2回の使用でダメになってしまうこともありますよ。健康食材として注目されていますが、産地が増えないのは、こうした苦労があるからもしれませんねぇ。

○発生する主な病害虫
・アブラムシ類

○病害虫に使用する農薬
・アドマイヤーフロアブル

○農薬使用で心掛けていること
今年は暑かったので、灰カビもなく殺菌剤はつかいませんでした。病気に強いので、月1回の消毒で充分。3、4年前から自主検査を始め、週1回の検品検査を受けています。

オクラはキュウリのように、垂れ下がるのではなく、上に向かって育ちます。ちょうど牛や鹿の角みたいな感じ。ぐいぐいと力強く伸びていく実の中には、ビタミンB1やB2の他、カロチン、ビタミンEなども含んでいて、特有のネバネバには強壮効果があり、大腸ガンを予防するとも言われているとか。渡辺さんを悩ます、表面のうぶ毛は鮮度の目安。びっしりときれいに覆われているものは鮮度もよく、出荷されたての証拠です。写真のように切り口をよく見て、そろっているのを選ぶといいそうです。

by Kaori Asakura

寒河江のお母さんが栽培した『月山つるむらさき』です。

昭和55年から露地栽培をしているんですよ。品種は、大きく青茎系と紫茎系に分かれますが、私は青茎系を栽培しています。露地栽培は葉の色が濃くて肉厚だから、口当たりはちょっとごそっとするけど、味がしっかり。ハウスものは葉の色がやや淡く、トロみがあって食べやすいわね。お浸しだけじゃなく、からし和えや、中華炒め、葉の天ぷら、茎のきんぴらと、捨てるところがないから、余すことなく楽しんでください。ビタミンA、カルシウム、鉄分などが豊富で健康にいいですよ。

<出荷の流れ>
遠藤さんの畑 → JA → 県内のスーパー&東京の市場
※露地は6月中旬〜9月末、ハウスは5月上旬〜10月末まで出回ります。葉がいきいきしたものを選びましょう。

ハウス栽培はエコファーマーの認定を受けています。

水をやりすぎると根腐れするし、少ないと生育が悪くなるので、土壌水分の管理が難しいんです。水やりのタイミングと量は、ようやくコツが分かってきた感じ。女性は情報交換が活発でオープンだから、みんなで励ましあって栽培に取り組んでいます。有機質の堆肥を使うようになって7〜8年になるので、地力もついてきました。

○発生する主な病害虫
・ヨトウムシ類・アザミウマ類

○病害虫に使用する農薬
・特になし・特になし

○農薬使用で心掛けていること
基本的に農薬は使いません。病気にかかりやすい作物ですが、枯れたものや虫がついたものは、毎日気が付いた時に、こまめに手で取り除いています。また、ハウスは防虫ネットを使い、害虫の侵入を防いでいます。

取材終了後「はい、お疲れさま!」とビールケースをひっくり返して、手早くテーブルをセットしてくれた遠藤さん。並べてくださったのが、ツルムラサキのごま和えと中華風豚肉炒め。独特の軽いぬめりが、合わせる食材の味をまろやかに包み込んでくれ、個性的なのに食べやすい。もっきりとした茎の歯応えと、ぬるっとした葉っぱ。まったく違う2つの食感が楽しめるのも、ツルムラサキの魅力ですね。

by kaori asakura

これぞ激カラ!山形の『青辛なんばん』です。

消費者のニーズに合わせて、辛いタイプを作っています。
とうがらしの辛さは皮と種ではなく、中のわたの部分。関東からの「もっと辛いものを」という要望に応えて、10年前から辛い品種を作り始めました。葉は醤油で煮たり油炒めにするなどして食べられますから、県内に出しています。この辺りで栽培している農家は少ないので、定期的に出荷できるようにしたいです。

<出荷の流れ>
遠藤さんの畑→ JA → 県内のスーパー&県内・関東方面の市場
※6月上旬から収穫が始まり、出回るのは10月中旬まで。まっすぐで形がよく、細く長いのが特徴です。

今年から、土づくりに有機肥料を使い始めました。

露地は60坪、ハウスは150坪ありますが、連作障害が出るため、1年、2年おきながらの栽培です。有機肥料を入れた、自家製の完熟堆肥を使ってみるなど、土づくりではいろいろと試みています。虫は暑いと付きにくいので、猛暑だった今年は、特に減農薬になりました。

○発生する主な病害虫
・アブラムシ

○病害虫に使用する農薬
・ベストガード粒剤

○農薬使用で心掛けていること
連作障害がでるので、1、2年おいて土を休ませながら栽培しています。アブラムシが付くと真っ黒になってしまい、出荷できなくなるため、少々の防除剤などは使用しますが、減農薬を心がけています。

山形市内の落合、バイパスにもほど近い場所にある南蛮畑。いつもは車で通り過ぎてしまいがちですが、一面に緑が広がり、ほっとできる場所になっています。一口に南蛮といっても品種はいろいろあって、以前は中辛タイプを作っていたそうですが、「もっと辛いのを!」という東京市場の要望に応えて、一番辛いタイプを栽培しているとか。取材中、お茶請けに出してくださったのは、南蛮っ葉の煮物。ほどよく辛くて、ビールが欲しくなりました(笑)

by Kaori Asakura

苦みの原因になるストレスを与えないようにしています。

種蒔きは、早いと虫が付いて病気になりやすいので、9月10日から20日と遅蒔きしています。青菜はストレスを感じると亜硝酸が溜まって苦くなるんですよ。1株1株の間隔をゆったりとって丁寧に間引きする、肥料もあまり加えない、というのが私の作り方です。

<出荷の流れ>
小玉さんの畑 → 加工所 → 直販&直売所・道の駅
※「むらやま」など漬物が出回るのは11月20日頃から。生で買う場合は、茎の肉が厚くて大きい株のものを選びましょう。

おばあちゃんたちから教わった、伝統的な作り方です。

もともと自家用に作っていた漬物を、30年ほど前から商品化するようになりました。うちのは1株4kgになるのもあるんで、桶漬けにして販売してます。これだとべっこう色になってもおいしいんです。添加物は入れずに塩の力でまろみを出し、自家製の調味料で漬け込みます。茎の肉が厚くやわらかいので、シャキシャキ、バリバリ、 歯触りがいいですよ。

○発生する主な病害虫
・アオムシ

○病害虫に使用する農薬
・アファーム乳剤

○農薬使用で心掛けていること
根こぶ病に注意して、連作はせず、スイカとの輪作で作っています。
 アオムシも場合によっては、手で取りのぞくようにしています。

小玉さんがかつて東京市場に勤める方から言われたことで忘れられないのが、「おいしいものを知らないと、おいしいものは作れない」という言葉だったそうです。世間から高く評価されるものは、それなりの理由がある。漬物も井の中の蛙ではダメで、自己満足ではなく、とにかく周囲の意見を聞きながら作ってきたそうです。

by Kaori Asakura

農薬問題やトレーサビリティなど、食の安全・安心について関心が高まるなか、そうした食生活を実現するためには、どうしたらいいのか。立場が異なる方々に意見交換を行っていただきました。


◎安全・安心に関して取り組んでいることがあればお聞かせください。

佐藤:観光果樹園を開いたのは、消費者に近い立場で栽培をしたかったからなんです。レストランをオープンすることをきっかけに、本格的に低農薬に取り組むことにしました。

椎名:金曜市は生産者が直接販売する形なので、たとえ虫食いがあったり、形が整っていなくとも「それは生産者の方々の顔が見える、責任ある生産物だから」と消費者の方々は信頼してかっていかれます。

瀬尾:直売所は販売しているおばちゃん達から料理法を聞いたり、おまけをもらったり、楽しんで買い物できますよね。「安全」については、無登録農薬の問題が出たときに、再認識することになりました。一番まちがいなのは自分なりの方法として、20年ほど前から、レタス、トマト、キュウリなどの家庭菜園をやっています。でも無農薬だから虫が付くんです。家で食べるので気にしませんが。

佐藤:虫がついているものは食べて安全なのだけど、売り物にはならないんですよね。見た目がいいものを作ろうと思えば、農薬を使わざるを得なくなるし。私が疑問に思うのは、皆さん農薬に対して厳しい反応をされる割りに、日頃インスタントなどの添加物たっぷりの加工食品は平気で食べているような。

深瀬:最近は学校でも「食」に関する教育を取り入れているようです。私の子どもも一人暮らしを始めたのですが、加工食品を買う時は表示を見て、添加物が少ないものを選ぶようにしているって言っていました。

瀬尾:やはり一人一人が勉強することが大事なんですよね。賢い消費者にならないと。



◎安全・安心への思いや、これから実現するために必要なことは何でしょう?

椎名:金曜市は、農薬やBSEなどの食に関するニュースが流れた時期でも集客が落ちなかったんです。毎年、顔ぶれの同じ生産者に出店してもらっていますので、固定客がついています。やはり、作る側と買う側の信頼関係を確立してこその安全・安心といえるのではないでしょうか。

瀬尾:直売は新鮮さが違うし、スーパーにはない価格交渉だとか、生産者との対話が楽しいですね。年輩者は特に遠くまで買い物に行くことも難しいので、直売所はもっと増えてほしいですね。

深瀬:最近、スーパーは有機栽培や低農薬といった表示が少なくなった気がするんですよ。産地だけでなく、信頼できる生産者の表示も徹底してほしいです。消費者は少なからず、農薬使用には疑問を感じています。でもそこから一歩踏み込むことがなかなか出来ていないんです。

佐藤:農薬を使った安いピカピカの野菜を買うか、無農薬だけど割高なデコボコ野菜を買うかということですよね。アオムシが付いているキャベツをきたないと思ってしまう消費者でも、子どもの頃は平気だったんじゃないかな。小さいうちから、作物はどうやってできるのか、どんな作物が安全なのかを、きちんと教えていくことが、今の大人に課せられた責任なのではないでしょうか。


コンシューマー達




生産者  軽部賢一さん
スタッフ 奥様
事業内容 さくらんぼの栽培(佐藤錦・紅秀峰)
連絡先  JAさがえ西村山
軽部さくらんぼ園 寒河江市下河原110-10
         TEL 0237-84-3594

・栽培は露地と加温ハウスで行っています。
・大事な作業の一つが12月〜3月までの剪定です。できるだけ日当たりをよくします。
・寒河江の三泉地区は、さくらんぼの先進地です。

生産者  清野親吉さん
     元山形県指導農業士理事
     西村山郡指導農業士会長
     JAさがえ西村山ぶどう部会部会長
     JAさがえ西村山大江ぶどう部会長
スタッフ 奥様
事業内容 ぶどうの栽培
連絡先  大江町大字本郷戉66 TEL 0237-62-3791

・栽培法は2本主枝。
・畑は、寒河江・大江・西川町の中間に位置する場所で、霧がでない気候。
・地下水でも融雪でも、上質の水はいい味を作ります。

生産者  阿部一男さん
スタッフ 奥様 息子さん夫婦
事業内容 ももの栽培(いけだ・黄金桃・阿部白桃・伊達白桃)
     その他/さくらんぼ
連絡先  阿部果樹園 東根市大字羽入188
           TEL 0237-47-2997

・現在ももの部会「桃源郷倶楽部」のメンバーは7名。各個人で箱のイラストを変え、生産者がわかるようになっています。
・月山、葉山を臨む20aの畑に、72本の桃の木が並んでいる阿部果樹園。

生産者  山内正秀さん
     JAみちのく村山トマト振興部会部会長
スタッフ 奥様
事業内容 トマトの栽培
連絡先  村山営農ふれあいセンター
     村山市楯岡北町1-1-1
     TEL 0237-55-6311
・自作の座れる台車に乗って、摘葉、摘花、収穫と大活躍。
・部会では「ももこたろう」というオリジナルの名前で出しています。

生産者  笹沼和裕さん
     なす部会長
スタッフ 両親 奥様 息子さん
事業内容 ナスの栽培 その他/米
連絡先  JAやまがた中央営農センター
     山形市天神町59
     TEL 023-684-2547
・22、3年前からスタートしたハウス栽培。「蔵王サファイア」は部会で付けた名前です。