Farm to table ファームトゥテーブル

消費者の声に応えるために

本来いちごは夏の気候にあった作物。クリスマスシーズンでも収穫できるようにするため、冬場はボイラーでハウス内をあたため、夏場の日中はハウスを開け閉めしての温度管理が必要に。苗を植えて根がつくまでは、特に目が離せないとか。「いちごは野菜に分類される農産物なんですが、やはり果樹栽培とはまったく手法が違いました。頭を切りかえてやっています」。さまざまなハードルを乗り越えて育てあげたからこそ、ここまでの質、味になったのでしょう。実のしまった果肉は、口の中でぷちぷちと種が弾ける音がするほど。甘さもバツグンでした
いちご姫はパッケージも工夫をしています。芸工大の学生に依頼して、フィルムも箱もオリジナルのデザインに。ギフトにもよろこばれそうですね。
生産者  森谷栄助
スタッフ 奥様、他
事業内容 いちごの栽培
所在地  東根市
連絡先  東根市神町中央1-8-1
     JA神町 0237-48-1504
自宅   0237-47-2056
「長い時間冷すと甘みがなくなるので、できるだけ買った日に食べてほしいです。重ねたままは痛みやすいので、食べるまで時間があく時はバットなどに一段に並べて保存するのがベスト。洗うのは食べる直前に。そのままで充分甘いですが、うちの子ども達はコンデンスミルクをつけるのが好きですねー」。
『神町いちご倶楽部』のメンバーは、森谷さんを始め、塩野さん、平山さん、鈴木さんの4名。福島や仙台などの産地も視察して栽培方法を学んだそうですが、「あっちは太平洋側、山形は日本海側。気候条件、品種、栽培方法など不安材料は山ほどありました。でもチャレンジのしがいがあるし、今も一日一日が勝負。いちご命ですよ」と、真剣に取り組んでいる姿勢が伝わってきました。

温暖な気候を好む桃は、
山形が日本北限の生産地です。
日中の暑さと朝夜の涼しさで甘さが綴じ込められて、
むっちり丸い果実に育ちます。
4月になると、桃畑には淡いピンク色の花が咲き始めます。桃の原産地は中国の黄河や揚子江の流域といわれ、故事によると「桃源郷」はすなわち「理想郷」のこと。春雨の中、うっすらと霧がかった光景は幻想的で、おとぎ話の世界に紛れ込んだかのようです。
のどかで平和な眺めとは逆に、工藤さんにとって「最も忙しいのがこの時期」だそう。
「摘花といって、果実が成りすぎるのを防ぐために、余分な蕾や花を一つ一つ摘みとっていくんですよ」。栽培している桃の木は200本以上。早朝5時には朝食を持って畑に出かけていくそうです。実が成長してきた後も形の悪いものや病気になった果実を摘果し、十分に日が当たるよう混み合った枝を間引きしていきます。
高校の頃から、家業のさくらんぼ栽培を手伝っていた工藤さん。平成元年、桃団地の設立をきっかけに、新たな勉強が始まりました。当初は満足のいく実がならなかったり、せっかく育った実が収穫前に落ちてしまったり。何が原因か分からず模索していく中で、枝を切り落とすせん定にポイントがあったことを見つけだします。「強い枝に実を生らせると果肉もしっかりするし甘さにコクがでる。でも、所々に強く長い枝を残さないと木が弱る。枝が酔っぱらったみたいになっていたらダメなんだよ」。工藤さんが作る桃の木には、盆栽のような美学があります。平成十年十二年には、農協の桃あかつき立ち木品評会で最優秀賞を受賞しました。桃は病気の感染時期が長いため、殺菌、殺虫に十分な配慮が必要です。現在は東根果樹組合のもも部長を務め、今年からエコファーマーの取り組みも開始。「作る側にとっては何十個の桃でも、食べる人にとっての評価はその1個だからね」という言葉が印象的でした。
グリーンツーリズムの活動をしている奥様。桃を食べた人たちから届く「おいしかった」のハガキが何よりの励みだそう。
生産者  工藤高男
スタッフ 奥様
事業内容 ももとさくらんぼの栽培
所在地  東根市
連絡先  東根市農業協同組合 東根支所
     東根市大字東根甲1390-1 0237-43-1121(代)
自 宅  東根市大字東根甲2116 0237-43-2010
「桃は固いのが好きな人、やわらかいのが好きな人とそれぞれ好みがあるからね。どちらにしても冷やしすぎは甘さが落ちるから、食べる1〜2時間前に冷蔵庫へ入れておく位がちょうどいい。一番おいしいのはね、もぎたてを川の水で洗って、皮のまま
ガブッと食べる、これが最高!」
工藤さんが栽培しているのは『あかつき』『川中島白桃』『ゆうぞら』『いけだ』の4品種。それぞれに特徴がある中で、『ゆうぞら』は果肉がしまって上品な白砂糖のような味。幻の桃と言われる『いけだ』は黒砂糖のようなコクがあり、「これが上手く作れたら一流。やりがいがあるよ」と工藤さん。グリーンツーリズムの活動をしてる奥様と共に、桃の花摘みやそば打ち体験なども行っているそうです。

すっかりおなじみのデラウェアは、
その昔ヨーロッパで「畑のミルク」と呼ばれていたとか。
ブドウ糖は体内に吸収されやすく、
即エネルギーに変わるから、疲労回復や体力増強に効果的。
ビタミンB1、B2、C、血管をじょうぶにするビタミンE、
カルシウムや鉄分も豊富です
ぶどうの産地といえば南陽市や高畠町などを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、村山エリアにもいくつかの産地があります。その一つが「青菜漬」で知られる本沢地区です。今回お話をうかがったのは、JAやまがた西部営農センター本沢果樹部会の部
会長をつとめ、約27年前からこだわりのぶどう作りにとりくむ寒河江恵市さん。80aのハウスと20aの露地栽培を行っています
日本の栽培方法は棚づくりです。外国では、ほとんどが垣根づくりですが、湿気を嫌うぶどうの性質に合わせて生み出された独自の方法といわれているとか。 6月下旬から出荷されるハウスものは栽培の準備も早く、毎年2月下旬からスタート。 最も積雪量が多い時期にぶどう棚の雪下ろしとハウスのビニールのはりかえをしなければなりません。「これが1年で最初の大仕事ですね」。そして3月中旬には芽が出始めます。副芽と言われる余分な芽を摘み取る作業が4月まで続き、最初のジベ処理(ジベレリン処理)が行われます。「ジベレリンという植物ホルモンをぶどうの房に浸すことで、植物ホルモンの作用により1つ1つの粒の種をなくすことができるんですよ」。たしかにデラウェアは種なしぶどうとも呼ばれています。果実なのに種がない・・・。不思議に思っていた人もいたのでは?
まだ小さくて、実の堅い黄緑色の房一つ一つに、ジベレリン溶液を浸す作業は、 腕を上げたままの作業なので首が凝ってしまいます。特に山場にある傾斜のきつい畑では、一日中足を踏ん張って作業をしなければなりません。同時に、果房の結実を良くするための摘芯や、適度な数に揃えるための摘房、5月の下旬に2回目のジベ処理、水やりなどを経た6月下旬、畑一面を紫色の房が彩り始めます。お中元などに利用されることが多いため、8月上旬までの短期間がピーク。いよいよ、よろこびの収穫です。
「同じ房の中でも実は上の粒の方が甘くておいしいんですよ。洗うときは食べる分だけ水で洗うようにしてください。保存は新聞紙で包んだり、一房ずつキッチンペーパーで包み、野菜用保存袋に入れて冷蔵庫へ。粒を房から外してそのまま凍らせ、シャーベットにしてもおいしいですよ」
代表者  寒河江恵市
スタッフ 奥様 
事業内容 ぶどうの栽培
所在地  山形市
連絡先  山形農業協同組合 西部営農センター本沢果樹部会 
     山形市長谷堂1109-1 023-688-5773
傾斜地にあるぶどう畑では作業をするのは大変ですが、換気がよい分、温度管理をしやすいとのこと。「薬剤を利用するより、原点に帰って手間をかけることで、本当においしいものができるんですよ」と話してくれました。またつぎの世代へ農業を伝えるために、小学生や中学生を対象にしたぶどう作りの体験教室も行っているそうです。

「山形の果物といえば?」の質問に、
ほとんどの人が「さくらんぼ」と答えるはずです。
栽培の発祥は、なんと紀元前1世紀のイタリアで、明治の始め、
日本への導入とほぼ同時に、上山市でも栽培が始まりました。
「山形の果物と言えば?」の質問に、ほとんどの人は「さくらんぼ」と答えるはず。
栽培の発祥は、なんと紀元前1世紀頃のイタリアで、明治の始め、日本への導入とほぼ同時に、上山市でも栽培が始まりました
90歳で現役のおばあちゃん、奥様、ラ・フランスなども手がける息子さんと共に果樹農家を営んでいる川口さん。さくらんぼの栽培を始めたのは約30年前。この農園は、自らパワーシャベルを操作して作ったのだとか。「仕事っていうのは、自分で覚えてやるから楽しいんだよ」
お話をうかがったのは、5月の受粉期。さくらんぼは自分の花粉では実を着けないので、人工受粉をしなければなりません。川口さんは約5万匹のミツバチを放して受粉させています。ハチたちが木から木へ、せっせと花粉を集めまわることで受粉する訳です。足りない部分は、川口さんが毛バタキがついた花粉交配機で、花をそっとなでるようにしながら補っていきます。「たまにだけど、刺されたり、耳や鼻の穴に入ってくる時もあるね(笑)」。その後は、多くなりすぎた実を間引きする摘果、雨から守るためのビニールがけ、ルビーのように輝く実にするために反射シートを敷いて、日陰ができないようこまめに摘葉します。たっぷりと太陽の光を受けることで、糖度は18度以上になり、25度までアップしたこともあるそう。「この辺りの土壌は赤土だし、雨量が少なくて寒暖の差がある内陸性気候。蔵王連峰のおかげもあって、糖度が勝負の佐藤錦を育てるにはぴったりなんだ」
栽培の管理は1年中

極上のさくらんぼに仕上げるために、もう一つ大切なのが剪(せん)定です。収穫後の夏の時期と1月から2月の間に、来シーズンのさくらんぼの実り方を想定しながら、余分な枝を落としていきます。川口さんが一番好きな仕事は何ですか?という問いに返ってきたのは、意外にも冬の剪定でした。「雪景色の中で、ただただ枝を切り
落としている時間は、心の中がからっぽになる無の状態。これが何だかいいんだね」。
生産者  川口俊雄
スタッフ おばあちゃん、奥様、息子さん夫婦、パートさん
事業内容 さくらんぼの栽培
所在地  上山市
連絡先  上山市関根字三島627-2
     JA山形南部営農センター 023-673-3108
自宅   上山市三上53 023-674-3164
「洗うときは軸を取らずにそのままで。冷やしすぎないほうが甘さが分かりますから、常温のまま、冷水で洗うのがいいですね。荒塩をふりかけたり、濃い塩水にくぐして食べる方法もありますよ。スイカと同じで、塩を振り掛けることで、甘味を引き出す
ことができるんです」
生産者:川口俊雄
果樹部会会長、生産対策委員の技術長を務めている川口さん。詰め方、着色、熟度、糖度など9項目を審査する「パック詰め」と「裸詰め」の品評会で入賞の経歴もありという実力者。佐藤錦のほかに、早生の紅さやか、7月上旬に出まわる紅秀峰、やや遅れて収穫できる紅てまり(これは甘さプラスほどよい酸味があって、川口さんが好きな味だとか)などを栽培しています。