Farm to table ファームトゥテーブル

消費者の声に応えるために

本来いちごは夏の気候にあった作物。クリスマスシーズンでも収穫できるようにするため、冬場はボイラーでハウス内をあたため、夏場の日中はハウスを開け閉めしての温度管理が必要に。苗を植えて根がつくまでは、特に目が離せないとか。「いちごは野菜に分類される農産物なんですが、やはり果樹栽培とはまったく手法が違いました。頭を切りかえてやっています」。さまざまなハードルを乗り越えて育てあげたからこそ、ここまでの質、味になったのでしょう。実のしまった果肉は、口の中でぷちぷちと種が弾ける音がするほど。甘さもバツグンでした
11月末、雪が積もる前に収穫し、いよいよ漬け込み開始。1次加工は塩漬の作業。
「1つの桶に3500Kg。ひたすら塩をふるから、目がヒリヒリと痛くて。この時が一番大変。30cmの板を渡して、その上に8人のメンバーが乗り、重しをかけていくんです。かけ声をかけてリズムを取るから、青菜ダンスっていってます(笑)」。
5、6日経ったら塩水を洗ってしぼり、オリジナルの調味料、砂糖、酒精、醸造酢に漬けて袋詰め。また細かく刻んだ干し大根、ニンジン、から芋、ショウガ、紅花をまぜたおみ漬も作っています。
注文は北海道や関東方面からも多く、顧客リストだけで400名ほどいるとか。発送がすべて終わる1月か2月には、スタッフみんなで旅行にでかけるそうです。
生産者  渡辺長四郎さん
スタッフ 奥様
事業内容 アスパラガスの栽培 その他/米
連絡先  本沢集荷場
     山形市大字二位田9
     TEL 023-688-5773

・アスパラ研究会は現在17名のメンバーがおり、それぞれの方法で栽培しています。
・約20年ほどアスパラガスを作っています。
○発生する主な病害虫
・茎枯病・ヨトウムシ・ジョウシホシクビナガハムシ・ハスモンヨトウ

○病害虫に使用する農薬
・ICボルドー・アディオン乳剤・DDVP乳剤50・アファーム乳剤

○農薬使用で心掛けていること
 収穫期間中は殆ど農薬を使いません。収穫が終った後、
 葉を茂らせて秋まで地下部に栄養を貯めますが、
 この期間は病害虫の発生が多いため、
 適切に農薬を使用して健全な株養成を行い、
 次年度においしいアスパラガスが採れるよう努めています。
毎年の土づくりが、元気なアスパラガスを育てます。

アスパラガスは土から出てきたら、ぐんぐん伸びてすぐ収穫できます。虫がつく暇がないので、収穫期は農薬を使わなくていいんですよ。とはいっても、大変なのは収穫が終わってから。来年の作柄を良くも悪くもするのが収穫後の肥培管理なんです。5、6年前からコーヒーかすを混ぜるなど、土づくりを研究しています。健康なアスパラガスは健康な土づくりからです。

>>> アスパラガス農家 渡辺長四郎さん

>>> 忘れられない味のアスパラガス「バイトル」
渡辺さんのつくる、一生食べたら忘れられないアスパラガス「バイトル」。

まさに健康野菜のアスパラガス。シャキッとしていて、朝採りはとても甘い。アスパラギン酸・カロチン・ビタミンCなど、健康にいい栄養素をたっぷり含んでいますからね。消費者の方には毎朝新鮮なアスパラガスを食べてほしいです。

<出荷の流れ>
渡辺さんの畑→JA→市場→おもに山形のスーパー
※出回るのは春から夏の間。長さを27cmに揃えて、120gで出荷しています。

>>> アスパラガス農家 渡辺長四郎さん

>>> 渡辺さんの安全栽培にかける熱き思い
無袋りんごは、もぎたてよりも少しおいてからの方がおいしいという人もいます。店頭に並ぶ頃には、食べ頃になっていますよ。生はもちろん、りんごの場合は品種によって、煮て焼いても使えるし、食物繊維のペクチンという成分は、アレルギー疾患の予防効果にもなるようです。
資金の目処がたち、従来の果樹畑を更地にしてハウスを建て、いよいよスタート。
「地面に直接植えずに立ったまま作業ができる高設ベッドを導入し、寒い時期に根の活性を高めるための温水パイプを設置するなど、画期的な方法を積極的に取り入れています。「培養土は有機質含量が高い、天然土壌改良材のピートモスを入れたもの。
排水・保水性がとてもいいんです」。そこへ流しているのが、一度酸性とアルカリ性に電気分解した混合水。水の分子が細かいので、吸収がとてもいいのだそう。
生産者  阿部一男さん
スタッフ 奥様 息子さん夫婦
事業内容 ももの栽培(いけだ・黄金桃・阿部白桃・伊達白桃)
     その他/さくらんぼ
連絡先  阿部果樹園 東根市大字羽入188
           TEL 0237-47-2997

・現在ももの部会「桃源郷倶楽部」のメンバーは7名。各個人で箱のイラストを変え、生産者がわかるようになっています。
・月山、葉山を臨む20aの畑に、72本の桃の木が並んでいる阿部果樹園。
「桃は固いのが好きな人、やわらかいのが好きな人とそれぞれ好みがあるからね。どちらにしても冷やしすぎは甘さが落ちるから、食べる1〜2時間前に冷蔵庫へ入れておく位がちょうどいい。一番おいしいのはね、もぎたてを川の水で洗って、皮のまま
ガブッと食べる、これが最高!」
○発生する主な病害虫
・灰星病・黒星病・せん孔細菌病・シンクイムシ

○病害虫に使用する農薬
・ロブラール水和剤・ベルクート水和剤・デランフロアブル・フェロモン剤

○農薬使用で心掛けていること
 ももは実にカビがつく灰星病、内部を食べるシンクイムシ、
 樹全体を弱らせるせん孔細菌病などの病気にかかりやすいデリケートな果物です。
 その中でも病害虫の発生を予察したり、フェロモン剤をつかうなど、
 農薬を減らす工夫をしています。
 地域のもも桃栽培農家全員がエコファーマー取得に取り組み、
 地域全体で安全安心な果物づくりを行っています。
安全栽培は土づくりから。

果樹そのものが丈夫なら虫はつかないんです。
昭和60年頃から仲間と「桃源郷倶楽部」を発足させ、栽培技術の安全性と食味の向上に関する勉強を続けています。安全栽培の基本は、有機のぼかし肥料を使った土づくり。土にとって大切な微生物が死んでしまわないよう、農薬の使用は最低限にし、防除には天然成分のフェロモン剤を使用しています。

>>> もも農家 阿部一男さん

>>> 安心安全あたりまえ。自慢のもも「いけだ」
お話をうかがったのは、5月の受粉期。さくらんぼは自分の花粉では実を着けないので、人工受粉をしなければなりません。川口さんは約5万匹のミツバチを放して受粉させています。ハチたちが木から木へ、せっせと花粉を集めまわることで受粉する訳です。足りない部分は、川口さんが毛バタキがついた花粉交配機で、花をそっとなでるようにしながら補っていきます。「たまにだけど、刺されたり、耳や鼻の穴に入ってくる時もあるね(笑)」。その後は、多くなりすぎた実を間引きする摘果、雨から守るためのビニールがけ、ルビーのように輝く実にするために反射シートを敷いて、日陰ができないようこまめに摘葉します。たっぷりと太陽の光を受けることで、糖度は18度以上になり、25度までアップしたこともあるそう。「この辺りの土壌は赤土だし、雨量が少なくて寒暖の差がある内陸性気候。蔵王連峰のおかげもあって、糖度が勝負の佐藤錦を育てるにはぴったりなんだ」

日本でも貴重となった野菜の一つが赤根ほうれん草。
その品種を育てている人が、山形市風間にいます。
生産者  清野親吉さん
     元山形県指導農業士理事
     西村山郡指導農業士会長
     JAさがえ西村山ぶどう部会部会長
     JAさがえ西村山大江ぶどう部会長
スタッフ 奥様
事業内容 ぶどうの栽培
連絡先  大江町大字本郷戉66 TEL 0237-62-3791

・栽培法は2本主枝。
・畑は、寒河江・大江・西川町の中間に位置する場所で、霧がでない気候。
・地下水でも融雪でも、上質の水はいい味を作ります。
○発生する主な病害虫
・灰色かび病・ベと病・褐斑病・カミキリムシ類

○病害虫に使用する農薬
・スイッチ顆粒水和剤・ストロビードライフロアブル
・ICボルドー66D・ラビキラー乳剤

○農薬使用で心掛けていること
 清野さんが部長をつとめる大江ぶどう部会では、
 全員がエコファーマーの認定を受け、化学農薬と化学肥料の使用を削減、
 堆肥投入による土づくりに取り組んでいます。
 手間はかかりますが除草剤を使わないで草刈りをしたり、
 古枝の粗皮を削ったり、園地を耕うんなどして、
 病害虫の出にくい環境を作り、防除を削減しています。
畑が語る「安心・安全」。

うちでは農薬は使わないんです。必要ないからです。ちょっと畑を見てください。きれいだと思いませんか?美しい畑には病気が出ないんです。だから農薬はいらない。
農薬は土を固くする。固くなった土は樹の根の生育を阻害しますよね。いいぶどうを作るにはまず健康な樹を育てないとね。あまり一般的ではないけど、うちでは樹間を耕運して土をふかふかに保つんです。土づくりが安全栽培の基本です。

>>> ぶどう農家 清野親吉さん

>>> 美しい畑が産むぶどう「デラウエア」
すいか生産部会部会長の大山弘一郎さんは、16歳からこの仕事を始め、今年でキャリア55年になる大ベテランです。現在栽培しているのは富士光TR。
20年近く作られてきた富士光をバージョンアップしたもので、寒さに強く、「形もいいし、味はさっぱりしてザブッとした食べ応え」と大山さん。かぶりついた時にみずみずしいさが口いっぱいに広がるそう。
3月の下旬になると、いよいよ土づくりの開始です。炭の粉を融雪剤としてまいて雪をとかし、4月には雨から守るビニールトンネルを設置して、土を温めます。畑を歩くと、足が沈むほどやわらか。「良質の堆肥を混ぜてあるから、大きくて、甘い果肉になるんだよ」。長年の積み重ねによって作り出された、大山さん流の土だそうです。
接ぎ木した苗が成長してきたら、2日がかりで定植。3月20日前後に1番花が咲き始め、今度は絡み合った枝の整理です。「ハウスは特に枝が増えやすいので、こまめに摘芯や摘葉をしなければなりません」。農業は一般的に、冬場は休みの時期と思いがちですが、なすのハウス栽培は、ほぼ1年中。「初収穫の時、出来映えが良いと、本当にうれしい。これの気持ちを味わいたいから、どんな時期でもがんばれるんです」と話してくださいました。
90歳で現役のおばあちゃん、奥様、ラ・フランスなども手がける息子さんと共に果樹農家を営んでいる川口さん。さくらんぼの栽培を始めたのは約30年前。この農園は、自らパワーシャベルを操作して作ったのだとか。「仕事っていうのは、自分で覚えてやるから楽しいんだよ」
生産者  笹沼和裕さん
     なす部会長
スタッフ 両親 奥様 息子さん
事業内容 ナスの栽培 その他/米
連絡先  JAやまがた中央営農センター
     山形市天神町59
     TEL 023-684-2547
・22、3年前からスタートしたハウス栽培。「蔵王サファイア」は部会で付けた名前です。
○発生する主な病害虫
・土壌病害・アザミウマ類・アブラムシ類・うどんこ病

○病害虫に使用する農薬
・バスアミド微粒剤・スピノエース顆粒水和剤
・ベストガード水溶剤・アミスター20フロアブル

○農薬使用で心掛けていること
 収穫期が近づくとアブラムシやうどんこ病等の病害虫の発生が増えてきます。
 これらの病害虫が多発すると腐れや変形果の原因となり食用に適さなくなります。
 残効期限が短く毒性の低い農薬を使って、
 安全で美味しいなすづくりに努めています。
何年やっても完璧はない。だからこそ面白いんだよね。

なすの部会メンバーとは月に1〜2回集まって農薬の内容と回数を確認したり、全国の産地をまわって勉強しています。なす以外の作物から学ぶことも多く、個人的にはいちごやトマトの産地で土壌の視察をしたり、名古屋の堆肥工場へも出かけました。うちではもみ殻や鶏糞を1年寝かせた自家製の堆肥でやっています。なすに合う安全栽培の方法をいつも考えていますよ。

>>> ナス農家 笹沼和裕さん

>>> まさに宝石のようなナス「蔵王サファイア」
さがえ西村山つるむらさき部会会長
生産者   遠藤良子さん
事業内容  つるむらさきの栽培 その他/米 
スタッフ  ご主人
連絡先     JAさがえ西村山 寒河江営農生活センター  
寒河江市中央工業団地75  0237-86-8186

・収穫は早朝と夕方。
・つるむらさき部会は寒河江市だけでも37名ほどで、西村山全体では30%のメンバーが女性です。
・ 日持ち、鮮度が保てる袋に詰めて出荷しています。
○発生する主な病害虫
・ヨトウムシ類・アザミウマ類

○病害虫に使用する農薬
・特になし・特になし

○農薬使用で心掛けていること
基本的に農薬は使いません。病気にかかりやすい作物ですが、枯れたものや虫がついたものは、毎日気が付いた時に、こまめに手で取り除いています。また、ハウスは防虫ネットを使い、害虫の侵入を防いでいます。
ハウス栽培はエコファーマーの認定を受けています。

水をやりすぎると根腐れするし、少ないと生育が悪くなるので、土壌水分の管理が難しいんです。水やりのタイミングと量は、ようやくコツが分かってきた感じ。女性は情報交換が活発でオープンだから、みんなで励ましあって栽培に取り組んでいます。有機質の堆肥を使うようになって7〜8年になるので、地力もついてきました。
寒河江のお母さんが栽培した『月山つるむらさき』です。

昭和55年から露地栽培をしているんですよ。品種は、大きく青茎系と紫茎系に分かれますが、私は青茎系を栽培しています。露地栽培は葉の色が濃くて肉厚だから、口当たりはちょっとごそっとするけど、味がしっかり。ハウスものは葉の色がやや淡く、トロみがあって食べやすいわね。お浸しだけじゃなく、からし和えや、中華炒め、葉の天ぷら、茎のきんぴらと、捨てるところがないから、余すことなく楽しんでください。ビタミンA、カルシウム、鉄分などが豊富で健康にいいですよ。

<出荷の流れ>
遠藤さんの畑 → JA → 県内のスーパー&東京の市場
※露地は6月中旬〜9月末、ハウスは5月上旬〜10月末まで出回ります。葉がいきいきしたものを選びましょう。
取材終了後「はい、お疲れさま!」とビールケースをひっくり返して、手早くテーブルをセットしてくれた遠藤さん。並べてくださったのが、ツルムラサキのごま和えと中華風豚肉炒め。独特の軽いぬめりが、合わせる食材の味をまろやかに包み込んでくれ、個性的なのに食べやすい。もっきりとした茎の歯応えと、ぬるっとした葉っぱ。まったく違う2つの食感が楽しめるのも、ツルムラサキの魅力ですね。

by kaori asakura
「畑の基本はやっぱり土。土力(ちりょく)をつけることが大切なのね。それから苗作り。天然の夜露があるから水はあまりやらないの。
こういう土地で育っていくんだって、苗に覚えさせると、ゆっくりだけど立派に育つのよ」と奥さん。
種まきを始める4月から、収穫が終了する11月上旬まで、山形市内からトラクターで通ってくるだけでも大変な気がしますが、「3日も来ないと気になって、気になって。
農業やっていて、辛いって思ったことはないわね」。夏になると「このキャベツが食べたくて」と、わざわざ買いに来る固定ファンもいるそうです。
高橋さんがそばの栽培を始めたのは約10年前。田んぼとストックという花の生産に加えて、「新らしいコンバインを買ったんで、そばもやろうかと(笑)」。
栽培は6月上旬から始まります。まずは春からの雑草を減らす耕起と、水はけを良くするための溝掘り。やせた土地でも育つことから、かつては米の収穫が難しかった山間などで多く栽培されていたもの。
あまり手間がかからないから仕事は楽?と思いきや、「農業は自然が相手ですからね。きちんと耕耘しないと種をスズメやハトに食べられてしまうし、水に弱いので、生育期間に強い雨が降ると台無しになってしまうんですよ」。
過去には1/3しか発芽しなかったことや、大雨にたたかれたり台風で倒れてしまったり、収穫前に初雪が振って半分しか収穫できなかったこともあったとか。多く蒔いても収量はほんのわずか。「そういう年はほんとガッカリしますよ」と高橋さん。