Farm to table ファームトゥテーブル

おいしさと安心を届けたい。生産者たちの仕事をお話しします。
農作物は生き物ですので、成長する過程で病気になったり、虫に食べられたりします。
この原因となる病原菌や害虫を防除するのが農薬です。
病害虫の被害にあった作物では、市場からは受け入れてもらえません。
商品価値のある作物を、十分な量で収穫するために、防除が行われているのです。

食品衛生法に基づき、人が一生涯の間に毎日摂取しても健康上影響をもたらせない一日の摂取量を試算し、
農薬の残留基準がきめられています。
山形県では、作物ごとに使用時期、使用回数等を示した「山形県農作物病害虫防除基準」を策定し、
安全な農作物栽培を指導しています。
生産者はこれを守ることはもちろん、たくさんの人々に喜ばれる農作物の栽培を心がけています。
JA天童野菜研究会 ねぎ部会部長
生産者   加藤昇さん 
スタッフ  奥様、他
事業内容  ネギの栽培 その他/米・さくらんぼ 
連絡先    JA天童野菜研究会 ねぎ部会
天童市大字矢野目字西沼田3227 023-653-0052

・ネギ部会は14、5年前に発足し、現在40名のメンバーがいます。
・農薬の使用は出荷の30日前までに終わるようにします。
・白根は30cm位が丁度よく、葉は3枚と決まっています。
○発生する主な病害虫
・さび病・ネギアザミウマ・黒斑病・べと病

○病害虫に使用する農薬
・バイレトン水和剤5・モスピラン水溶剤・ポリオキシンAL水和剤・リドミルMZ水和剤

○農薬使用で心掛けていること
さび病はいっきに広がるので、よく見回って防除に務めます。出荷前の検査は毎月1回。部会でランダムに提出し、問題があれば全体の出荷がストップになる仕組みです。
手をかけた結果が出やすいから、ネギづくりはおもしろいですね。

元肥としてゆっくりと効くロング肥料に、もみ殻の有機質を追肥して栽培しています。今年は5割を有機質にして、成育の状態を試験中です。天童は農薬の安全な使用に対する取り組みが早く、自分たちで勉強し、徹底しやすいリスト表を作成しました。ネギは育てている間の草刈りがとにかく必須。除草剤は1〜2回しか使いませんから、日々草との戦いです。
山形の芋煮には、天童の『元蔵』です。

特に食べて欲しいと思うのは「元蔵」ですね。
10年前から、9月1日に行われる日本一の芋煮会フェスティバルに協力していて、部会で約6000本を提供しています。品種は「元蔵」「秀逸」「美白」「吉蔵」などがあって、それぞれ収穫の時期が違います。中でも元蔵は春の早い時期から栽培して11月下旬まで収穫でき、やわらかさがダントツ。煮物にもいいですよ。

<出荷の流れ>
加藤さんの畑 → JA → 県内のスーパー&関東の市場
※出回るのは7月20日〜12月中旬。葉の色が濃く、白根がしまっているものを選びましょう。
「ナス漬の中でも浅漬が合いますね。漬物もね、採れたてをすぐに漬けると味が格段いい。漬けあがったなすは、中の空気を出すように1個ずつ握り締めると、軟らかくなって食べやすくなります。変わったところではビール漬などもおいしいですよ」
生産者  山内正秀さん
     JAみちのく村山トマト振興部会部会長
スタッフ 奥様
事業内容 トマトの栽培
連絡先  村山営農ふれあいセンター
     村山市楯岡北町1-1-1
     TEL 0237-55-6311
・自作の座れる台車に乗って、摘葉、摘花、収穫と大活躍。
・部会では「ももこたろう」というオリジナルの名前で出しています。
「冷やしトマトが一番だね。薄くきって軽く塩をふるだけ。肝臓にいいらしいから、晩酌のときに食べていますよ。トマトを切るとき、中身の種とゼリーがこぼれないコツは、まずへたを取って頭の部分を薄く切る。中に見える白い放射線状の白い線に合わせて切る。やってみてください」
○発生する主な病害虫
・ミカンキイロアザミウマ・灰色かび病・葉かび病

○病害虫に使用する農薬
・モスピラン水溶剤・ベルクート水和剤・ダコニール1000

○農薬使用で心掛けていること
 トマトは高温多湿に弱く、梅雨期や高温などの条件で病害虫が発生します。
 特に梅雨期には灰色かび病という葉や果実を侵す病気が発生するため、
 予防的な防除は不可欠です。また、近年、トマト黄化えそ病を媒介する
 ミカンキイロアザミウマが増加しており、害虫対策も欠かせません。
子どもたちから喜んでもらえるように。

トマトは根だけでなく全身で栄養を吸収するんです。
菜種や米ぬかカニの殻などを入れた発酵肥料を使っていますが、良い肥料でも与えすぎてはだめ。その加減が難しいです。地元の学校給食で使われるようにもなりましたし、1年に3回トマト部会のメンバーで園地巡回を行いながら、エコファーマー認定に取り組んでいます。

>>> トマト農家 山内正秀さん

>>> さらにパワーアップした味のトマト「桃太郎エイト」

おなじみの「桃太郎シリーズ」から、
さらにバージョンアップしたのがこの品種。
丈夫でしかも、糖度も高い。通常3〜4度に対して、
7度前後と、まるで果物のようなトマトです。
山内さんが作る、初代桃太郎よりも丈夫な、パワーアップした味のトマト「桃太郎エイト」。

果肉がしまっているから、皮を湯むきしてサラダにすると最高です。
・従来の品種に比べ病気に強いトマト。

<出荷の流れ>
山内さんの畑→JA→関東の市場→道の駅「むらやま」→村山市内の幼稚園、小学校、中学校の給食
※6月下旬〜11月上旬まで出回ります。手に持って、ずっしりと重いものを選びましょう。

>>> トマト農家 山内正秀さん

>>> 山内さんの安全栽培にかける熱き思い
JA山形市セルリー部会 技術指導員
生産者   會田和夫さん
スタッフ  奥様
事業内容  セルリーの栽培 その他/米 
連絡先    自宅 山形市宮町1-6-11 023-631-3491

・全国に産地が増えないのは、栽培がむずかしいからでしょうね。
・いっちょまえの生産者になるまで、5年はかかるべねー(笑)。
・セルリー部会18名の共販で、25cm〜30cmの長さで出荷しています。
○発生する主な病害虫
・斑点病・ヨトウムシ

○病害虫に使用する農薬
・ダコニール1000・アファーム乳剤

○農薬使用で心掛けていること
病原菌は土の中にいるので、排水を良くしてカラッとさせ、春作の場合はハウス内の換気にも気をつけています。健康な苗を作ることで、消毒は月に1回程度で済んでいます。毎年、土壌診断もしてもらっています。
昔から贅沢な野菜と言われているんですよ。

セルリーはどこでも育つ丈夫な野菜のように思われがちですが、実はまったく逆。根が弱いこともあって、栄養のある土と清水を好むので、いわゆるグルメな性質なんです。ですから堆肥は有機質のもみがらを10アールに対して10トンから15トンも入れ、水は馬見ヶ崎川からの伏流水を使っています。とはいえ愛情をかけすぎてもよくないし、すぐにはいい結果がでない。セルリーは栽培するのが難しいだけに、おもしろいんだよね。
セルリー一筋36年。山形の『ベストセルリー』はやわらかな歯触りです。

山形産の質は、全国的にも評価が高いんです。
セルリーはグリーン系と黄色系の2種類があって、日本では黄色系が一般的です。食感がやわらかで、甘みとうま味がある。サラダはもちろん、漬物や炒め物、スープの具としても合いますよ。昔は薬用だったそうです。熱を加えてもビタミンなどの栄養が変わらないから、いろんな料理を楽しんでみてください。

<出荷の流れ>
会田さんの畑 → JA  → 県内のスーパー&仙台・東京の市場
※5月25日〜6月25日、10月25日〜11月いっぱいまで出回ります。葉茎に光沢があって、肉厚のものを選びましょう。
グルメな品種といわれるセルリーの堆肥は、会田さんの自家製です。もみ殻を十分に分解させて使っているとか。「堆肥は手のひらでぎゅうっと握ると固まって、はなしてポロポロになったら出来上がり」。収穫したばかりのセルリーをおすそ分けしていただきましたが、いやもう、味がしっかりあってビックリ。甘みというより、旨味といった方が的確で、生でどんどん食べられます。独特の苦みがある葉っぱは、天ぷらにするとおいしいそうですよ。

by kaori asakura
生産者  安達但男さん
     スイカ生産部長
事業内容 スイカの栽培
連絡先  みちのく村山農業協同組合
     村山営農ふれあいセンター
     村山市楯岡北町1-1-1
     TEL 0237-55-6313
・最近はカット販売用の大玉が求められているため、1個を充実させる。夏の成長にあわせて、ビニールを移動させる方式で栽培している。
「スイカは採れたてが最高においしいですから、頂き物なども早めに冷やして食べて下さい。
残った皮は浅漬に。実のと緑の皮の部分を取り除いて、厚めの千切りや1cm幅位の食べやすい大きさに切って塩もみし、数時間おけば完成です。ビールのつまみにも合いますよ」
○発生する主な病害虫
・つる枯病・炭そ病・褐色腐敗病・ワタアブラムシ・ハダニ

○病害虫に使用する農薬
・ダコニール1000・ダイセド水和剤・リドミルMZ水和剤
・モスピラン水溶剤・コロマイト乳剤

○農薬使用で心掛けていること
 スイカは乾燥地帯が原産で、梅雨時期には褐色腐敗病や炭そ病、
 炭疽病といった病害が多発します。またアブラムシは、
 生育初期から茎葉に寄生し、生育を著しく阻害したり、
 モザイク病等、重大な病害を媒介します。
 放置すると病害虫が蔓延し、収穫できなくなるため、
 必要に応じた農薬防除を実施します。
安全に出荷することがブランドの努め。

スイカの生産部会には西部地区だけでも350名います。仕事を始める前の早朝6時から講習会を開いたり、農薬の使用基準も自主的に決めて、出荷前の残留農薬検査も徹底しています。尾花沢スイカのブランド性を、さらに高めていくのが我々の役目ですね。

>>>スイカ農家 安達但男さん

>>>夏の風物詩。一押しのスイカ「祭ばやしスリーセブン」
大豆専用のコンバインで刈り取りますが、サヤに付いた毛が乾燥して舞い上がるため、
「うっかり吸い込むと咳が止まらなくてね、これが大変なんですよ」とご主人。平成14年から秘伝大豆の格付けも行われるようになり、粒の大小や粒揃いなどの検査を受けて出荷です。
河北町の秘伝大豆は、そのほとんどが山形市内の豆腐専門店へ納められています。天然のにがりと、蔵王山麓を源流とする地下水で作られているそうで、「出来上がった時に持ってきてくれて、みんなで試食をしました。ちゃんと大豆の味がする、おいしい豆腐になっていましたね」。
「夏秋のキャベツは葉肉がしっかり巻いてあって、重い物を選んでください。採れたては生で食べてほしいですね。質のいいキャベツを調理するなら、じゃがいもみたいに、ふかしキャベツがおすすめ。湯気がでているうちにバターと醤油をさっとたらしてね」。熊谷さんのキャベツはファーマーズトマトなどでも販売されています。

作物がおいしく育つ山形の中でも、特に理想的な場所が高冷地。
高原野菜という名前、聞いたことがありますか?
さくらんぼやりんご、ラ・フランスなどの果樹栽培をしていた森谷さんが、地元の仲間といちごの栽培に取り組むことにしたのは5年前。「最初に立ちはだかった壁は、資金繰りでした」。事業によっては公的な補助金の制度を利用できるのですが、山形県内でもあまり前例がないため、融資を引き受けてくれるところが見つからない。何度も窓口に足を運び、視察にも同行してもらって説明、説得を繰り返したそうです。
同時に販路も見つけなければなりません。「市場をまわりって、取り扱ってくれるようアピールしました」。
長崎素材研究会 オクラ部会長
生産者   渡辺清春 
スタッフ  奥様
事業内容  オクラの栽培 その他/米・きゅうり・ストック 
連絡先    JAやまがた長崎支店 中山町大字長崎165 023-662-2231

・花は観賞用にしてもいいくらいきれいですよ。
・オクラは垂れ下がるのではなく、上に向かって育ちます。
・オクラ部会は23年前に発足し、現在10名のメンバーで栽培しています。一番ニーズが高いのは8〜9cmのMサイズ。
○発生する主な病害虫
・アブラムシ類

○病害虫に使用する農薬
・アドマイヤーフロアブル

○農薬使用で心掛けていること
今年は暑かったので、灰カビもなく殺菌剤はつかいませんでした。病気に強いので、月1回の消毒で充分。3、4年前から自主検査を始め、週1回の検品検査を受けています。
素手では、指紋がなくなります。

一番大変なのは収穫です。オクラは表面が細かい毛に覆われているので、直接手で触れていると皮膚がかぶれてしまったり、長時間の作業になると、こすれて指紋がなくなってしまうこともあります。必ず軍手をしますが、朝晩2回の使用でダメになってしまうこともありますよ。健康食材として注目されていますが、産地が増えないのは、こうした苦労があるからもしれませんねぇ。
くっきり星形の『花笠オクラ』は、中山の特産です。

高知や沖縄なども視察してきました。
7年前から栽培している「花笠オクラ」は、さやの色が濃く、5角がはっきりしているのが特徴。2年物のもみ殻を入れた堆肥で土づくりをしていますが、基本的には水も肥やしもあまりいらない作物で、病気にも強いです。とはいえ、質の高いものを作るまでには20年かかりましたよ。

<出荷の流れ>
1.渡辺さんの畑 → JA → 県内のスーパー
2.渡辺さんの畑 → 中山町のひまわり朝市
※出回るのは5月末〜11月上旬。頭の切り口がきれいなものを選びましょう。
オクラはキュウリのように、垂れ下がるのではなく、上に向かって育ちます。ちょうど牛や鹿の角みたいな感じ。ぐいぐいと力強く伸びていく実の中には、ビタミンB1やB2の他、カロチン、ビタミンEなども含んでいて、特有のネバネバには強壮効果があり、大腸ガンを予防するとも言われているとか。渡辺さんを悩ます、表面のうぶ毛は鮮度の目安。びっしりときれいに覆われているものは鮮度もよく、出荷されたての証拠です。写真のように切り口をよく見て、そろっているのを選ぶといいそうです。

by Kaori Asakura