Farm to table ファームトゥテーブル

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香り高くて、ひと口噛めば広がるコク。庄内地方のだだちゃ豆に対して、
内陸地方の味覚といえばこの「秘伝豆」。
9月下旬から10月初頭に収穫する晩生ゆえに、枝豆界の大取りと言えそうです。
昔から大豆栽培が盛んな地域だった河北町西里地区。ここに転機が訪れたのは平成5年。「秘伝」という風味豊かで甘みのある品種との出会いが始まりでした。
いいと思ったことは積極的に取り入れていく性格の後藤さん。生産者の中心となって地区内に作付面積を増やし、県内でも有数の秘伝枝豆の産地へと導いていきます。
東京の市場へも臆することなく一人で出かけ、売値の交渉を掛け合ってくるバイタリティの持ち主です。
お話をうかがった時は、ちょうど収穫直前。畑一面に広がる青々とした葉っぱと、ふっくらと実の入ったさやを見せていただきました。おいしい豆を作る秘訣は?
「土寄せだな。生育時期の間、根元に何度か土をかけてあげると根っこがびっしりと這って丈夫になるんだ。それにこの辺は水はけがいいからね、豆作りに適しているんだよ」。
また後藤さんのところでは、最初の植え付けは畑に直接種を蒔くのではなく、ポットから移植する方法をとっています。「ハトから食べられるのを防ぐためなんだ。ハトも味が分かるんだろうな。こればっかりねらってくる(笑)」。
枝豆は鮮度が低下すると、食味が急速に落ちてしまう作物だとか。これを防ぐために、今年から鮮度保持効果の高い資材を使った袋に入れて出荷しています。
何でも冷蔵庫に入れた状態と同じで、呼吸しながら眠ってしまうというスグレモノ。当然コスト高になってしまいますが、「劣化した商品を持っていく訳にはいかない。
やると決めたら直ぐだ。ぐずぐずしていたら売れなくなってしまうからね」。土づくりに関しても日々新しいことへチャレンジ。有効微生物が増殖し、土壌が肥沃になるという米ぬかや鶏糞を混ぜるなどの研究をしながら、専用の肥料も開発しました。「食味向上のためには、常に勉強」。これからはハッピーシリーズのブランド化が目標だそうです。
生産者  後藤誠雄
スタッフ 奥様、息子さん夫婦
事業内容 枝豆の栽培・さくらんぼ・ラフランスの栽培
所在地  河北町
連絡先  JAさがえ西村山園芸課
     寒河江市中央工業団地75 0237-86-8185
自 宅  西村山郡河北町西里625-1 0237-72-4353
後藤さんが栽培している枝豆は、JA寒河江西村山を通して、おもに生協や関東市場に出回っています。県内ではまだ一部のスーパーでしか扱っていませんが、今後は地元の方にも食べてもらえるよう、地域全体で作付面積を増やしていきたいとのことでした。
●水洗い後、塩でさやの毛を取る気持ちでもみ荒いする。
●沸騰したお湯に塩を入れゆでる。
●ゆで上がったら湯気を切り塩をまぶす。
 「水で冷やすと風味が損なわれるので、
 うちわ等であおいで冷ますと美味しいですよ」。

山形の風物詩<芋煮鍋>には欠かせない名脇役といえば、
甘みと辛味が調和する長ネギ。
これがなくては味のしまりがでませんからね。
関西と関東ではさまざまな食文化の違いがありますが、長ネギもその一つ。関西ではお好み焼きの一種<ネギ焼き>に代表されるよう緑色の部分を食べ、関東では白い部分が多く使われます。
ここ山形も白が主流。パーンとしたツヤツヤの肌、包丁をあてた時のシャキシャキという音、強い香りはなんとも食欲をそそり、蕎麦の薬味、秋から冬にかけては鍋料理に欠かせない野菜です。
「栽培で気をつけることは、防除と土寄せです」とキャリア約20年の加藤さん。長ネギは白い部分ができるだけ長くなるよう、土寄せといって伸びてきた根元に何度か土をもり、日に当てずに育てていきます。
ただし長ネギの病原菌は根から入り、どんどん広がってしまうため、葉っぱとの分岐点が土に埋まらないよう、慎重に行わなければなりません。
「地温が高いと菌が繁殖してしまうから、25度以下の早朝から8時頃までに作業をおわさないと。盛夏の時期は特に危険ですし、雨上がりの日は出来ないんです」。
土には酪農家や有機センターから取り寄せたもみ殻を入れた堆肥を使っています。「化学肥料よりもちがいい。それに土の中に空気の層ができてやわらかくなる。長ネギは酸素が好きなんで成長が早くなるし、適度なしまりがでてきます」。
土の上に勢いよく伸びる緑の葉を見るかぎり、長ネギは丈夫な野菜のように思いがちですが、意外にも暑さにも弱く、30度以上になると生育が止まってしまうとか。
「規格に合う大きさにするのが難しくてね。今年は冷夏だったんで、よく育ってますよ」。
本来長ネギは晩秋から冬が旬。9月頃から行われる山形の芋煮会に合わせようと、早生の栽培が始まったのですが、関東方面からの評価も高く、今では各方面の市場に出回っているそう。「ねぎ坊主がでたら、終わりだからね。掘り遅れないよう、どんどん収穫していかないと」。
生産者  加藤友康
スタッフ 家族
事業内容 長ネギ、米の栽培
所在地  寒河江市
連絡先  JAさがえ西村山
     寒河江営農生活センター
     寒河江市中央工業団地75 0237-86-8186
加藤さんは寒河江部会の副部会長、事務局長を務めています。出荷の際の規格は、夏ネギがSサイズ(11m/m以下)〜3L(25m/m以上)、秋冬ネギがSサイズ(12m/m以下)〜3L(28m/m以上)。「よく育った時はうれしいですね」。加藤さんのネギはほどんどが3Lサイズでした。
「葉っぱの部分はカロチン(ビタミンA効果)などの栄養価が高いので、細かく刻んで炒め物にしたり、残さず食べてほしいです。この地域で作る芋煮は、煮込むほかに食べる時にも刻みネギをぱっと乗せて食べます。風味がきいておいしいですよ」。加藤さんの長ネギは直売所の「あぐり」でも販売されています。

作物がおいしく育つ山形の中でも、特に理想的な場所が高冷地。
高原野菜という名前、聞いたことがありますか?
キャベツといえば、ビタミンCが豊富な野菜。外側の濃い緑色の部分と、芯の周囲に多く含まれているようです。そして見逃せないのが、ビタミンU。
キャベジンともいわれるこの成分は、潰瘍の治癒に効果があるといわれるほどで、胃や十二指腸の粘膜を修復し、保護する働きをするのだそう。
辛味成分のイソチオシアネートによる抗ガン作用も注目されていて、よく噛んで食べると効果が期待できるそうですよ。
生でも茹でても炒めても良し。食べ方も万能選手のキャベツは、一年中店頭で見ることができますが、どれも同じ味という訳ではありません。
熊谷さんが育てているのは、高冷地野菜(こうれいちやさい)。標高600m〜1000m位の冷涼な気候を利用して栽培される野菜のことで、葉がよくしまって、しかも柔らかく、みずみずしく育つのが特徴です。畑にうかがったのは9月中旬でしたが、すでに厚手の上着が必要なほどの涼しさ。この辺りは5月でも雪が残っているそうです。約30年前、この土地を求めて土づくりから始めた熊谷さん。
「戦後の食糧難の時にカボチャを植えた場所だったらしく、土の質はよかったんですよ。ただ石が多くてね」。最初の1年は石との格闘だったとか。
「畑の基本はやっぱり土。土力(ちりょく)をつけることが大切なのね。それから苗作り。天然の夜露があるから水はあまりやらないの。
こういう土地で育っていくんだって、苗に覚えさせると、ゆっくりだけど立派に育つのよ」と奥さん。
種まきを始める4月から、収穫が終了する11月上旬まで、山形市内からトラクターで通ってくるだけでも大変な気がしますが、「3日も来ないと気になって、気になって。
農業やっていて、辛いって思ったことはないわね」。夏になると「このキャベツが食べたくて」と、わざわざ買いに来る固定ファンもいるそうです。
生産者  熊谷利昭 
スタッフ 奥様(千恵子)
事業内容 キャベツ、大根、白菜の栽培
所在地  山形市大字青柳886
栽培地  寒河江市
連絡先  023-623-2186

日本でも貴重となった野菜の一つが赤根ほうれん草。
その品種を育てている人が、山形市風間にいます。
「夏秋のキャベツは葉肉がしっかり巻いてあって、重い物を選んでください。採れたては生で食べてほしいですね。質のいいキャベツを調理するなら、じゃがいもみたいに、ふかしキャベツがおすすめ。湯気がでているうちにバターと醤油をさっとたらしてね」。熊谷さんのキャベツはファーマーズトマトなどでも販売されています。
暑さに強く、収量も多い西洋種が盛んに栽培されるようになるにつれ、栽培に手がかかるため、徐々に作られなくなってしまった東洋種。
「あの赤い根をした、甘いほうれん草の味が忘れられない」と、懐かしむ声がささやかれるのが山形赤根です。
日本でも数少ない生産者の一人となった柴田さん。父の代から作り始めて約80年、種を採って、植えてを繰り返してきたそう。「以前は部会もあったんだけど、30年位前かな、長雨で畑に水がたまって、ほとんどが根腐れをおこしてしまった。あの時期、もういいやって止めてしまった人がたくさんいました」。
菠薐は中国語でペルシア(イラン)のこと。原産地を表しています。ほうれん草は大きく分けて、中国から日本へ渡った東洋種と、ヨーロッパで栽培されてきた西洋種があり、今は両方を合わせた中間種が増えています。
東洋種は葉が薄めで切れ込みがあり、濃い赤色をした根が特徴。味が穏やかなのでおひたしに向き、「唐菜」「赤根菜」の名で各地に広がりました。丸い葉をした西洋種はアクがあるので、バターソテーなど加熱する料理が合うようです。
この場所で栽培をしているのは現在2世帯のみ。高冷地野菜の部会としては4〜5名のメンバーがおり、夏秋キャベツの産地で有名な群馬県嬬恋村をはじめ、青森など、各地へ見学にも出かけたそうです。
柴田さんが作るほうれん草は甘みがあります。アクが少なく、糖度が高い。「なんでって聞かれます。やはり土です。
親父から教わったことを守ってきましたから」。藁を発酵させた藁をまいたり、長い年月の中で畑そのものが育っているのでしょう。
そして間引きにも自信があるとか。「ぱっと葉が開いた時に、12cmから15cm間隔で、さっと抜く」。選ばれた苗は、土に這うようにしてたくましく育っていきます。
ちょっとの台風でも倒れない。しかも一株の重さは約700g。大きく育つ方が味もいいそうで、全国から約160品種のほうれん草を集めて行った大会で、赤根は最優秀賞に輝いたそうです。
生産者  柴田吉美
スタッフ 奥様(千恵子)
事業内容 赤根ほうれん草の栽培
所在地  山形市
連絡先  山形市風間1317
自 宅  023-687-2321
「甘味が高く、アクがないので、生のサラダにしても食べられます。さっと茹でておひたしにしたら、醤油の他に、ゴマあえ、ピーナツあえ、白あえにしたり、玉子とじの汁物、常夜鍋(ほうれん草やと豚肉の鍋)などにも合いますね」。
柴田さんが栽培している山形赤根は、あるテレビ番組の厳選素材としても登場するほど。ほうれん草以外にもゴーヤ、オクラ、トマト、里芋などを栽培していて、まさに農業のプロ。いろんな方が、相談しに来られるようです。

60cm以上にもなる大きな葉、一株1kgのビッグサイズにもなる青菜。
丸ごと漬けた青菜漬は山形の食文化を担う漬物になりました。
長野県の野沢菜漬、九州の高菜漬など、各地に茎葉を使った特産品がありますが、山形県といえば青菜漬。
材料は高菜と同じアブラナ科の野菜で、明治40年代に種子が導入され、漬物用に山形青菜(やまがたせいさい)として栽培がスタートしました。
昔の人にとって漬物は、野菜の収穫がない冬の時期の大切な保存食。青菜には、カロチン、カルシウム、ビタミンC、鉄分などが含まれています。