『〔図解〕世界の歴史』(創元社)の著者J.Mロバーツは、「こまごまとした事実の羅列は百科事典や歴史事典に任せることにして、そうした文明を軸に『歴史を物語る』ことに主眼を置いた」という。
「からみあった無数の事実の中から物語を紡ぎだす」のが歴史家の仕事だと確信しているという。
そういえば、紫式部が何時生まれて何時死んだか、結婚していたのか、それらのすべての事実を知るよりも、「源氏物語」を読む方が、よほど自分の生きていくことを考える上で役に立つのではなかろうか。
最近、医療の領域においても「物語を基礎にする医療」という考えが出てきたそうだ。「あなたは癌です。手遅れで治療方法はありません」というのは事実である。しかし、その人の人生、その人の家族、そこにはいろいろな「物語」があるはずだ。それを考慮しつつ医療を行おうというのだ。まったく素晴らしいことである。
(「縦糸横糸」より)
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