- What's NEW
-
「議員ファースト、やめて」…議員報酬引き上げに再考を求める陳情書を提出!!??
議員報酬の引き上げに関する陳情書を22日に提出した。ここに至るまでの経緯には重要な前段があった(詳しい顛末は7月13日付当ブログ参照)。去る7月9日、何の前ぶれもなく突然、最大幅で月額10万円のアップ案が市民説明会で示された。そのちょうど1カ月前の6月10日、5年以上に及んだ新図書館問題について、議会側は賛成16反対8の賛成多数で市側の「駅前立地」にゴーサインを出した。「駅前か病院跡地か」―。市民を二分した“立地”論争について、ある議員が賛成討論に立った。「いつまでやってんのか」ー。選良としての品位を疑わせる発言にびっくりした。 その余韻が冷めやらない中で、今度は「報酬引き上げにご理解を」と議員一同が頭を下げている。市民をどこまで愚弄(ぐろう)するつもりかと強い憤りを抱かざるを得ない。そんな中、旧花巻病院跡地への図書館立地を求めている市民グループは全議員(25人=欠員1人)を対象にアンケート調査(公開質問状)を実施したが、半数以上の14人が回答を拒んだ。「市民の信託を受けた市の代表機関」(「議会基本条例」前文)が機能していないことを思い知らされた。「議員は市政全般についての課題及び市民の意見、要望などを的確に把握するとともに…」―。同条例(第5条)は「議員の活動原則」について、こう定めている。 「日ハ君臨シ カガヤキハ/白金ノアメ ソソギタリ/ワレラハ黒キ ツチニ俯シ/マコトノクサノ タネマケリ」―。稗貫農学校(現花巻農業高校の前身)の教師時代、宮沢賢治は校歌がなかった生徒たちのために自ら作詞した「花巻農学校精神歌」を送って励ました。銀河宇宙を突き抜けるような清冽(せいれつ)なこの歌はいまでは“市民歌”としても親しまれている。ちなみに、現職の中にはこの学び舎の門をくぐった同窓議員が複数人いる。「そこで学んだはずの“賢治精神”は一体、どこに…」と問いたい。ついでに言うと、「駅前立地」へは諸手を挙げた、これらの同窓議員はそろって、アンケートへの回答拒否組である。 花巻市は将来都市像を高らかにこう謳っている。「豊かな自然/安らぎと賑わい/みんなでつなぐ/イーハトーブ花巻」―。受難者に寄り添うというこの精神、つまり「公共への献身」を全議会人で共有して欲しいと切に願いたい。市議としての「原点」に立ち返り、報酬のあり方そのものを市民とともに再考する真摯な論議を心から期待したい。なお、今回の陳情書は9月29日開催(予定)の「市議会議員報酬調査検討特別委員会」(高橋修委員長)に付託され、審議される。 件名: 議員報酬引き上げに関する市民説明と意見聴取の徹底について 趣旨: 議員報酬を月額339,000円から最大幅で439,000円へ引き上げる提案について、花巻市議会基本条例およびまちづくり基本条例の理念に基づき、市民への十分な説明、意見聴取、透明な手続きの確保を強く求めます。あわせて、厳しい経済情勢と市民感情をふまえた再考を要請いたします。 理由: 物価高と円安の影響により、市民の暮らしは極めて厳しくなっています。食品価格は高騰し、実質賃金は過去3年間低下が続いています。光熱費や生活必需品の支出に苦しむ市民にとって、議員報酬の10万円増額は「議員ファースト」と捉えられても仕方がありません。市民に選ばれた議員が、自らの報酬を引き上げることには極めて高い説明責任が伴います。ところが、これまでの議論は十分な情報開示もないまま進められており、多くの市民が経緯を把握できないまま、報酬引き上げが先行した形です。 花巻市議会基本条例第24条第2項は、報酬改定時に「市民の意見を参考にすること」を定めており、第8条・第9条も説明責任と応答責任を明示しています。また、まちづくり基本条例でも、市民参加による熟議と合意形成が原則とされています。一部で「市民説明会」が実施されたとはいえ、広報の範囲や議論の中身は不十分で、議員一人ひとりの賛否理由すら説明されていない現状では、市民の納得には到底つながっていません。 このまま拙速に議決すれば、議会そのものへの信頼が大きく損なわれかねません。報酬引き上げに先立つべきは、まず信頼の回復であり、十分な説明と参加の機会です。 要望事項 1.報酬引き上げの根拠資料や審議経過の全面公開 2.議員個々の賛否理由の説明責任の履行 3.市民が参加可能な説明会や意見交換会の再実施 4.パブリックコメントなど市民意見を反映する制度の導入 5.現下の経済状況をふまえた慎重な再検討 本件は、報酬額の問題にとどまらず、議会制度の信頼と正統性に関わる重要課題です。市民の声に真摯に向き合い、開かれた議論を尽くすことを強く要請いたします。 (写真は報酬引き上げを協議する報酬特別委員会=8月1日午後、花巻市議会委員会室で) ≪追記≫~misunderstanding 「市政堂」を名乗る方から、議員報酬にからんだ次のようなコメントが寄せられた。 「『市民の大切な税金を預かっている』―。以前は市長の口から何度かこのセリフが発せられたが、このところ、とんと聞かなくなった。市長擁護の議員たちに囲まれ、市民の税金を好きなように使おうとしているように見受けられる。そもそも市長をはじめ議員たちの報酬は、誰のおかげで手にしていると思っているのか?市民の税金ではないか!多くの市民の声に耳を傾けることもなく、チェック機能を持たない議員たちの必要性に疑問を持つ」 ★オンライン署名のお願い★ 「宮沢賢治の里にふさわしい新花巻図書館を次世代に」―。「病院跡地」への立地を求める市民運動グループは七夕の7月7日から、全世界に向けたオンライン署名をスタートさせた。イーハトーブ図書館をつくる会の瀧成子代表は「私たちは諦めない。孫やひ孫の代まで誇れる図書館を実現したい。駅前の狭いスペースに図書館を押し込んではならない。賢治の銀河宇宙の果てまで夢を広げたい」とこう呼びかけている。 「わたくしといふ現象は/仮定された有機交流電燈の/ひとつの青い照明です/(あらゆる透明な幽霊の複合体)」(『春と修羅』序)―。賢治はこんな謎めいた言葉を残しています。生きとし生ける者の平等の危機や足元に忍び寄る地球温暖化、少子高齢化など地球全体の困難に立ち向かうためのヒントがこの言葉には秘められていると思います。賢治はこんなメッセージも伝え残しています。「正しく強く生きるとは銀河系を自らの中に意識してこれに応じて行くことである。われらは世界のまことの幸福を索(たず)ねよう、求道すでに道である」(『農民芸術概論綱要』)ー。考え続け、問い続けることの大切さを訴えた言葉です。 私たちはそんな賢治を“実験”したいと考えています。みなさん、振って署名にご協力ください。海外に住む賢治ファンの方々への拡散もどうぞ、よろしくお願い申し上げます。 ●オンライン署名の入り口は以下から https://chng.it/khxdhyqLNS ●新花巻図書館についての詳しい経過や情報は下記へ ・署名実行委員会ホームページ「学びの杜」 https://www4.hp-ez.com/hp/ma7biba ・ヒカリノミチ通信(増子義久) https://samidare.jp/masuko/ ・おいものブログ~カテゴリー「夢の新花巻図書館を目指して」 https://oimonosenaka.seesaa.net/2025.08.22 -
「記憶」の再生…戦後80年の「8・15」に想うこと~歴史の“無化”に抗(あらが)いながら!!??
戦後80年―。先の大戦の戦争“遺児”もすでに85歳の老境を迎えた。戦争の真っ只中に「生」を受けたはずの当人の記憶の中から、その“戦争”が日々薄れていく。敗戦の日の8月15日、何か急かされるような気持で、私は地元の博物館へと急いだ。そこではテーマ展「戦争と花巻」(7月5日~8月24日)が開かれていた。めっきり弱った足腰の動きを気遣って、受付の館員が使い勝手のいい車いすを用意してくれた。たっぷり、2時間。えぐられたような穴が開いた黒い塊(かたま)りが目に飛び込んできた。 「九九式双発軽爆撃機(胴体部分)」と書かれた説明版にはこう書かれていた。「後藤野飛行場から出撃した渡邉秀男少尉(享年22歳)が搭乗し、福島県原町(現南相馬市)に墜落した特攻機の一部です」―。後藤野飛行場(現北上市和賀町後藤)は昭和13(1938)年に建設され、「最北の特攻出撃基地」と呼ばれた。敗戦末期には陸軍特別攻撃隊の隊員8人が配属され、そのひとりが静岡県出身の渡邉少尉だった。釜石市が2度目の艦砲射撃に見舞われた8月9日、3機に出撃命令が下され、渡邉機は太平洋上の連合艦隊への突撃を試みたが、何らかのトラブルが発生。原町郊外の山林に墜落したとみられている。 「兵隊さんの魂が入っているから…」―。80年ぶりに“ふるさと”岩手に戻ってくるきっかけは墜落現場に住む地元民たちのこんな思いがあったからである。まもなく「軍神」となるはずの若き特攻隊員たちには出撃前、ひと時の「家庭のあたたかさ」を味わってもらうため、民家への寄宿が提供された。渡邉少尉はいまも続く当市の味噌・醤油製造の老舗「箱崎醤油店」に約2週間ほど身を寄せた。死出の旅立ちを前にそこでは一体、どんな会話が交わされたのであろうか。 渡邉少尉の短い一生を追想しているうちにふと、心づいた。「そういえば、14年前に福島原発事故が起きたのは少尉が非業の死を遂げた現場からわずか20キロほどしか離れていなかった」―。この不思議な偶然に頭を混乱させながら、私はこの日のために携えてきた一冊の本のページを繰(く)った。 『80年越しの帰還兵―沖縄・遺骨収集の現場から』(新潮社刊)―。ともに大手新聞社出身のフリージャーナリスト、浜田哲二・律子夫妻の2冊目の“記憶”の配達日記である。前著『ずっと、ずっと帰りを待っていました―「沖縄戦」指揮官と遺族の往復書簡』(同社刊)については、2024年4月4日付の当ブログで紹介した。失速し、ぐるぐると宙を旋回する渡邉機の機影が、続編とも言える本書と二重写しになった。「佐岩さん、あなたは誰ですか」という一節が目に止まった。 20年以上、沖縄で戦没者の遺骨収集や遺留品の返還運動を続けてきた浜田夫妻は3年前の初冬、糸満市の現場で「佐岩」と彫られたハンコを見つけた。「珍しい名前だから、すぐ遺家族に返せる」と思った。しかし、当ては完全に外れた。「平和の礎(いしじ)」がある平和祈念公園のデータベースにも「佐岩性」は記録されていなかった。自分たちで収集した部隊資料の中に「佐藤岩雄」という名前があった。北海道の出身で、大隊の第三中隊に所属していることが分かった。「名字と姓を一文字ずつ組み合させたとしたら…」 印章学の研究者、ハンコ屋の業界団体である全日本印章業協会…。「佐藤岩雄さんが、“佐岩”というハンコを持っていた可能性は十分あります」―。協会の福島恵一会長はこう話し、続けた。「姓と名の一文字を取ったハンコでも印鑑登録は認められています」。はやる気持ちを押さえながら、夫妻が北海道に向かったのはその年の6月。地元警察や町役場、印章業協会から紹介された地元のハンコ屋さん、果ては映画「ゴールデンカムイ」で有名になった旧陸軍第7師団の「北鎮記念館」、北海道護国神社…。記者時代に鍛えた“地取り”調査(聞き込み)が役に立った。こんな記述に涙がボロボロとこぼれ落ちた。 「家族をとても大切にする伯父だった思います。遺骨や遺品が何も返らないのがよほどつらかったのでしょう。父親は旅行に行く知人に頼んで手に入れた沖縄の土を墓に納めたと聞きました。岩雄が持っていたハンコだと思います。こんな小さなものでも伯父の証。いただけますか。仏壇に供えて供養したい」―。競走馬の産地として知られる新ひだか町(旧静内町)に住む、岩雄さんの弟・武さんの長男である秀人さん(64)は慈(いつく)しむようにハンコをなでながら、こう語ったという。 「昭和20年12月16日、栄養失調症により、ソ連ウスリ-州ウオロシロフ地区リポ-ウツイ収容所で戦病死」―。黄色に変色したその紙片(戦死公報)にはこう書かれている。渡邉少尉の数奇な運命、そして戦火に散った「記憶」の配達に奮闘する浜田夫妻の姿を思い浮かべながら、私は無意識のうちに父親の記憶をさかのぼっている自分に気がついた。敗色が濃厚になった昭和19年夏、旧満州(中国東北部)へ。約1年後の敗戦でソ連軍の捕虜となり、シベリアの収容所に抑留された。享年37歳だった。 「捕虜たちの仕事はほとんどが石炭堀りだった。みんなガリガリにやせこけてね。タバコを差し入れしたこともあった。多くの人が死んだらしいけれど、みんなそのまま土に埋められたと聞いている。日本語の唄がいつも聞こえてきた」―。今から35年近くも前、私は父親の面影を求めて、元収容所跡を訪ねた。目指した場所は「ソ満」国境のウスリ-河のほとりにあった。荒涼とした草原が捕虜たちの“墓所”だった。シベリア抑留者は総数で約64万人といわれ、うち約6万人が死亡している。村人たちは当時の記憶を昨日のことのように記憶していた。私は道端に転がっていた石炭のかけらと異国の土くれを持ち帰り、いまは亡き父母が眠る墓にそっと、納めた。 「記憶の再生」という言葉がふと、口元に浮かんだ。戦後80年の節目の2025年―。歴史の記憶を修正したり、捏造(ねつぞう)したりする“狂気”が日本列島をおおいつつある。「息が詰まりそうな日常から少しでも逃れたい」―。そんな思いにかられた私は父親の唯一の“形見”である2冊のノートを仏壇から取り出した。父親が通っていた慶應義塾大学理財科(当時=現経済学部)の講義記録である。万年筆でびっしり書かれた字面から、几帳面だったその性格がしのばれるが、私自身に生前の記憶はない。 「哲学」ノートの一節にこんな文章が載っている。「霊魂ノ救済ハ矢張リ、一ツノ情熱ヲ感ズル所ニアルガ、而シソコデハ霊魂ノ本質ガ凡ユル感覚的ナ障害カラ超越シテ居る場合デアル」―。「霊魂の救済」という言葉が胸に突き刺さった。そして、思った。「こんな“哲学っ気”が今の私と似ていると言われれば、似ているのかもしれないな」と… 朝鮮半島出身者、台湾出身者、さらにアイヌ民族や連合国軍捕虜…。浜田夫妻は「そこに眠るのは『日本人』だけではない」と題した最終章をこう結んでいる。「戦争が生む悲劇と薄れゆく記憶に立ち向かうべく、沖縄で戦没者に向き合うアイヌにルーツを持つ若者と、遺骨収集を続けてくれている若き記者。あの戦争から80年、日本の未来も捨てたものではない」―。私にとっての80年目の「8・15」はこんな風にして、過ぎていった。そうとは気づかずに「記憶の再生」を試みていたのかもしれない。(コメント欄に関連写真を2枚掲載) (写真は渡邉少尉が搭乗していた特攻機の胴体部分=花巻市高木の花巻市博物館で) ≪追記≫~アイヌ戦没者の消息を求めて!!?? 当ブログをアップした直後の18日午前11時すぎ、文中に紹介した浜田哲二さんからさっそく、返信があった。こう書かれていた。そのナミダが一体、何だったのか。読みながら、ふたたび「滂沱(ぼうだ)の涙」が流れ落ちた。 「現在、北海道に来ています。アイヌ民族の戦没者を追いかけているのです。これが簡単ではありません。〈道東の〉白老に一軒家を借りて、コタン(集落)を回る日々。差別され続けた方々の苦難は、並大抵なものではないことを改めて知らされました」ー。浜田夫妻の『80年越しの帰還兵』によれば、沖縄戦で犠牲になったアイヌ出身の“日本兵”は43人に上っている(北海道アイヌ協会調べ) ★オンライン署名のお願い★ 「宮沢賢治の里にふさわしい新花巻図書館を次世代に」―。「病院跡地」への立地を求める市民運動グループは七夕の7月7日から、全世界に向けたオンライン署名をスタートさせた。イーハトーブ図書館をつくる会の瀧成子代表は「私たちは諦めない。孫やひ孫の代まで誇れる図書館を実現したい。駅前の狭いスペースに図書館を押し込んではならない。賢治の銀河宇宙の果てまで夢を広げたい」とこう呼びかけている。 「わたくしといふ現象は/仮定された有機交流電燈の/ひとつの青い照明です/(あらゆる透明な幽霊の複合体)」(『春と修羅』序)―。賢治はこんな謎めいた言葉を残しています。生きとし生ける者の平等の危機や足元に忍び寄る地球温暖化、少子高齢化など地球全体の困難に立ち向かうためのヒントがこの言葉には秘められていると思います。賢治はこんなメッセージも伝え残しています。「正しく強く生きるとは銀河系を自らの中に意識してこれに応じて行くことである。われらは世界のまことの幸福を索(たず)ねよう、求道すでに道である」(『農民芸術概論綱要』)ー。考え続け、問い続けることの大切さを訴えた言葉です。 私たちはそんな賢治を“実験”したいと考えています。みなさん、振って署名にご協力ください。海外に住む賢治ファンの方々への拡散もどうぞ、よろしくお願い申し上げます。 ●オンライン署名の入り口は以下から https://chng.it/khxdhyqLNS ●新花巻図書館についての詳しい経過や情報は下記へ ・署名実行委員会ホームページ「学びの杜」 https://www4.hp-ez.com/hp/ma7biba ・ヒカリノミチ通信(増子義久) https://samidare.jp/masuko/ ・おいものブログ~カテゴリー「夢の新花巻図書館を目指して」 https://oimonosenaka.seesaa.net/2025.08.15 -
消えたHPの告示…公募型プロポーザルの怪…文書開示請求が延長へ~市長コメントにこそ、違和感が~「もう、無茶苦茶でござりますがな」(花菱アチャコ)!!!???
「真っ赤なウソとはこのことか」―。新花巻図書館の整備基本・実施計画の受託業者を選定するプロポーザル方式による公募が7月24日からスタートしたが、同日付で市HP上に掲載された告示の一部がその直後に削除されていたことが分かった。一方で8月1日、この件について議員説明会が行われた際には、HP上では削除されたままになっている、その部分が資料として提供されるなど混乱の極みを見せている。12月3日を目途に最終の受託業者が決定する段取りになっているが、迷走に迷走を重ねてきた新図書館問題の行く末にはまだ、多くの紆余曲折が予想される。真相を見極めるためにこの日、関連文書の開示請求をした。 そっくり、削除された部分には当初、こう記述されていた。「公募プロポーザルの実施にあたっては、専門的助言を得るため、日本建築学会会長で公共施設整備の経験豊富な東北大学大学院の小野田泰明教授が属する一般財団法人青葉工学振興会と令和7年7月7日(月曜)に契約を締結しております」(「専門家との連携」)―。その一方で、HP上に公開されている「プロポーザル選定委員会」(乾久美子委員長ら6人)のメンバーの一人に小野田教授自身が名前を連ねていることも明かになった。オヤっと思った。「委託―受託」関係に見られる“利益相反”の構図がふいに頭に浮かんだのである。この件についてはこの日の議員説明会でも複数の議員から、質問が相次いだ。 たとえば、助言を与える側とそれを受ける側が同一人物であるということはある種の利益相反に相当するとも受け取られかねない。少なくとも「公平・公正」の観点からは問題ではないのか。そして何よりも、いったん公開された「告示」がなぜ急きょ、削除されるに至ったのか―などなど。 これに対して、市川清志・主任専門員(前生涯学習部長)ら当局側は「(小野田教授が)選定委員を兼ねることに違和感はなく、まったく問題ない」と切って捨てた。さらに、「削除」の一件については「教育委員会議やこの日の議員説明会に示した上で、HP上に公開することにしており、これまでは一切掲載していない」とシラを切った。この発言には傍聴していたこっちが腰を抜かした。冒頭に掲げた文書は(7月)24日の早い時点で市HP上に公開された「告示」を私自身が自宅のプリンターで印刷した原物だからである。「専門家との連携」問題で当局側がなぜ、これほどまでに過敏にうろたえるのか―。疑念は逆にいや増すばかりである。 他方、松田英基副市長を除いた5人の選定委員のうち、3人が「建設」関係の専門家になっていることも分かった。図書館という公共建造物はその造形美と同時に内部空間にどのような図書館“理念”を盛り込むかが生命線と言われている。このアンバランスをどう考えるか。たとえば、いまや時の人である元岐阜市立図書館長(前「メディアコスモス」総合プロデューサー)の吉成信夫さんはどのような経緯をへて今回、選定されたのか。図書館学の総本山と言われる公益社団法人「日本図書館協会」などの助言を得るようなことはしなかったのか。こうした背景についても今後、追及していきたい。 (写真は削除される前に市HP上に公表された「告示」部分=インターネット上の市HPからプリント) 2025.08.01 13:24:masuko:[ヒカリノミチ通信について] ≪追記ー1≫~船頭(先導)さん、大活躍!!?? 「コンプラふねふね」を名乗る方から、以下のようなコメントが寄せられた。当局側の”蛇行”操船が市民の側に予期しない疑念、というか疑心暗鬼を呼び起こしているのではないのか。当ブログで指摘した「専門家との連携」という告示はいったん削除された後、その削除の理由に言及しないまま、現在に至っている。一方、議会側に提供された資料にはちゃんと、載っている(1日付の市HP参照)。この”疑念”を払拭(ふっしょく)することこそが先決ではないのか。なお、投稿者の「コンプラ」とはおそらく、「コンプライアンス」(法令遵守)をもじった表現だと思う。 「新図書館の建設場所は病院跡地希望が圧倒的に多く、色々なデータでもそれがしっかりと数字で示されていた。しかし、『市民会議』にて、ある教授のお導きで覆した。今回もまたある教授のお導きにより、花巻の図書館建設は予定されている航路を進むことになるのか?タイタニック号にならないことを祈る」 ≪追記―2≫~上田市長がコメント、氏名の誤記も!!?? 上田東一市長は今回の公募プロポーザル方式に関し、以下のようなコメントを3日付で個人のアカウントに投稿した。しかし、公式のHP上での言及はいまだにない。さらに、選定委員会の副委員長である「吉成信夫」さんを「信雄」と誤記するなど信じられないミスを犯している。揚げ足を取るつもりはないが、これから大事業を託そうという方の名前を失念するとは…。歯が浮くような美辞麗句の背後に広がる闇の暗がりを見せつけられた思いがする。 ※ 7月24日から新花巻図書館整備基本・実施設計業務の公募プロポーザルによる設計業者募集公募を開始しております。公募の審査は一次審査、二次審査の二段階の手続きで実施されます。委員には、建築・都市計画の専門家であり日本建築学会会長の小野田泰明東北大学大学院教授、岐阜市における図書館などで全国的に有名な図書館理念・実装の専門家吉成信雄先生など図書館建築の基本設計・実施設計者を選定する上で極めて強力な5人の方々に委員となっていただき、また花巻市からは松田副市長が委員となりました。 委員の構成については日本建築学会が公表している「設計者選定の指針」に基づき「建築設計の専門家を含めて行政外部の専門家の過半数」としております。市が公募プロポーザル実施にあたって作成した実施要領等(市ホームページで公表しております)は大部のものとなっていますが、この作成にあたっては小野田泰明先生(一般社団法人青葉工学振興会)から他自治体が作成した実施要領等に関する資料を提供いただき、また花巻市特有の条件も加味したものとする上で極めて有益なご助言をいただいており、その意味で選定委員としての役割を超えたご助言を市のために果たしていただいております。 委員の方々にも実施要領等を確認していただき、決定したものになります。今回、委員の皆様には設計者選定に必要な範囲で市のために委員としての役割を果たしていただき、委員としての役割は設計者選定までとなります。しかしながら、今回の委員の先生方は建築または図書館に関して全国でも大変有名で実績がある方々ですので、今後先生方に受けていただける場合には、その後も図書館の整備にあたって市のためにご助言いただくことをお願いしたいと考えております。 このようなすばらしい先生方が市からの依頼を受けてくださり、市のためにご助言くださることを心から感謝し、また心強く感じる次第です。市民の皆さまに喜んでいただける図書館整備を進めていきます。 ≪追記ー3≫~HPの削除部分がやっと、再掲へ 新図書館の設計業務を委託する「公募型プロポーザル」に関し、7月24日付でいったん市HPに掲載され、その直後に削除されたままになっていた「専門家との連携」の部分が8日付で同上の市長コメントを引用する形で再掲された。なお、選定委員会副委員長の「吉成信夫」さんの名前も正しく改められた。 ≪追記―4≫~文書開示が最大規模の47日間の延長へ!!?? 「7月24日付の市HP上に公開された(その後、削除)公募プロポーザル関連文書の中の『専門家との連携』に記載された『契約』内容のすべて」―。8月1日付で開示請求していた当該文書の開示時期が当初の8月15日(15日間)から最長幅の9月16日(47日間)へと延長になった。担当の新花巻図書館計画室はその理由を「開示請求のあった行政文書には第三者に関する情報が記録されており、その第三者への意見照会に日数を要するため」―としている。“果報”は寝て待とう。 ≪追記―5≫~やっぱり、よほど知られたくないようで…!!!??? 8月1日に行われた公募プロポーザルに関する議員説明会の会議録が8日付の市HPで公開された。「専門家との連携」にかかわる質疑応答の部分(要旨)を以下に再録する。これではまるで、冒頭に掲げた文書のコピ―が私の“捏造”(ねつぞう)みたいな言い草に聞こえるではないか。私の怒りはここにある。 (羽山るみ子議員)「(議会資料には記載がある)『専門家との連携』という部分がホームページには掲載されておりません。市民に対しての情報公開が正しくなされていないのではないか」 (梅原新花巻図書館計画室長)「ホームページに専門家との連携の部分が公開されていないことにつきましては、まずは教育委員会議定例会で報告し、その後本日の議員説明会を経ましてホームページ等に掲載しようと考えて おりました。(7月24日付のHP上に)専門家の連携のところは公開しておりません」 ≪追記ー6≫~公募プロポーザルに関する質問・回答書 13日付の市政全般と新花巻図書館計画室専用のHP上に現在、公募中の整備基本・実施計画に関する質問とそれに対する回答が掲載された。質問項目は252点にも及び、19ページの大部となった。専門的な見地からの質問が多く、業者間の関心の高さがうかがえる。詳しい内容は以下から。質疑の中で改めて浮き彫りになった注目点については後日、報告する。 質問・回答書 (PDF 442.6KB) ★オンライン署名のお願い★ 「宮沢賢治の里にふさわしい新花巻図書館を次世代に」―。「病院跡地」への立地を求める市民運動グループは七夕の7月7日から、全世界に向けたオンライン署名をスタートさせた。イーハトーブ図書館をつくる会の瀧成子代表は「私たちは諦めない。孫やひ孫の代まで誇れる図書館を実現したい。駅前の狭いスペースに図書館を押し込んではならない。賢治の銀河宇宙の果てまで夢を広げたい」と話している。 「わたくしといふ現象は/仮定された有機交流電燈の/ひとつの青い照明です/(あらゆる透明な幽霊の複合体)」(『春と修羅』序)―。賢治はこんな謎めいた言葉を残しています。生きとし生ける者の平等の危機や足元に忍び寄る地球温暖化、少子高齢化など地球全体の困難に立ち向かうためのヒントがこの言葉には秘められていると思います。賢治はこんなメッセージも伝え残しています。「正しく強く生きるとは銀河系を自らの中に意識してこれに応じて行くことである。われらは世界のまことの幸福を索(たず)ねよう、求道すでに道である」(『農民芸術概論綱要』)ー。考え続け、問い続けることの大切さを訴えた言葉です。 私たちはそんな賢治を“実験”したいと考えています。みなさん、振るって署名にご協力ください。海外に住む賢治ファンの方々への拡散もどうぞ、よろしくお願い申し上げます。 ●オンライン署名の入り口は以下から https://chng.it/khxdhyqLNS ●新花巻図書館についての詳しい経過や情報は下記へ ・署名実行委員会ホームページ「学びの杜」 https://www4.hp-ez.com/hp/ma7biba ・ヒカリノミチ通信(増子義久) https://samidare.jp/masuko/ ・おいものブログ~カテゴリー「夢の新花巻図書館を目指して」 https://oimonosenaka.seesaa.net/2025.08.14 -
「図書館とは屋根のついた公園である」…新図書館のプロポーザル選定副委員長に吉成さん~現代版「羅須地人協会」を~「IHATOV・LIBRARY」の実現への一歩か!!??
「年間来場者を15万人から100万に伸ばせ」―。『賑わいを創出する図書館』という著書の帯にはこんな言葉が踊っている。この驚くべき数字を実現したのは元「みんなの森 ぎふメディアコスモス」総合プロデューサーの吉成信夫さん(69)。図書館の最前線に身を置くその吉成さんが新花巻図書館にかかる設計業務の担当業者を決める「プロポーザル選定委員会」(委員長=乾久美子・横浜国立大学大学院教授ら6人)の副委員長に選出された。心強い人材である。 メディアコスモスは岐阜市内にある市立中央図書館を中核とした複合施設で、2015(平成27)年7月にオープン。吉成さんは公募によって、初代図書館長に就任。5年間の館長職を経てその後、メディコスの総合プロデューサーに。この間、2022(令和4)年には「図書館と市民運動を軸に地域の可能性を追及している」として、図書館の先進的な活動に送られる最高賞「ライブラリーオブザイヤー」を受賞した。見通しがきく広々とした内部空間と金華山や岐阜城、鵜(う)飼いの長良川など取り入れた雄大な周辺環境の整備は著名な建築家、伊東豊雄さんが手がけた。 吉成さんと岩手とは不思議な縁(えにし)で結ばれている。(宮沢)賢治好きが高じて、東京生まれの吉成さんは1996(平成8)年、賢治生誕100年のこの年に一家で岩手に移住。賢治が技師として働いた旧東北砕石工場に併設して建てられた「石と賢治のミュージアム」(一関市東山、1999年オープン)の開設をほぼ一人で担った。また、自然と共生する“賢治ワールド”を実現しようと2年後には葛巻町の廃校を利用した「森と風のがっこう」(NPO法人岩手子ども環境研究所)の開設にこぎ着けたほか、一戸町奥中山の「いわて子どもの森」(県立児童館)の館長なども歴任した。 「図書館とは屋根のついた公園である」―。この言葉にうなった。以来、私は図書館の理想像を求めて、吉成さんの“追っかけ”を始めるようになっていた。「森と風のがっこう」があった廃校跡地にも足を運んだ。吉成さんが館長に就任したのはオープンのわずか3か月前のこと。会館1周年の記念講演でこう述べている。 「私が館長として考えてきたことは、柳ヶ瀬商店街を活性化することに図書館がどうやって寄与で きるのか、ここに来た人をどうやって向こうまで振り向けられるのか、それから、どうやったら本を通じて商店主たちを浮かび上がらせることができるか、スポットライトを浴びせることができるのかということを考えたかったわけです」―。現図書館が建つのは岐阜大学の旧医学部の跡地。「柳ヶ瀬ブルース」が流れた柳ヶ瀬商店街にも次第に活気か戻りつつある。私は雷に打たれたような衝撃を受けた。 「まるで、当市が置かれた状況と瓜二つではないか」ー 吉成さんの著作に『ハコモノは変えられる―子どものための公共施設改革』(2011年1月刊)がある。行政主導型からの発想の転換を促し、それを実践してきた“奮戦記”ともいえる記録である。名勝・金華山を望むテラス席は人気の的で、霊峰・早池峰山を遠望できる当地の立地環境とも似通っていた。「(花巻)病院跡地に新図書館を」という私の強い思いは吉成さんの背中を追い続けた当然の結果だった。 「駅前か病院跡地か」―足かけ5年以上に及んだ“立地”論争については、当ブログでその都度、言及してきたので繰り返さない。ただ、吉成さんこそが場所を特定する際の「対話型」市民会議のファシリテーター(進行役)として、最適任だと思っていただけに「あとの祭り」の悔しさはぬぐえない。なぜ、「駅前立地」が決定してからの登場だったのか。なぜ、図書館の生命線のひとつと言われる「場所」選定に際しではなかったのか。昨年4月にメディコスを退任した吉成さんはいま、柳ヶ瀬商店街の無印良品内にある「本のひみつ基地」の主(あるじ)である。こんな本の目利きは副委員長の就任あいさつで、以下のように語っている(要旨) 「花巻は、宮沢賢治が生涯を過ごしたまちとして全国に知られています。彼の残した共生的な世界観や自然観は、今なお国内外で輝きを増し続けています。花巻の文化的風土が育んできた先人たちの学びの精神を受け継ぎ、賢治という傑出した知性を輩出したこのまちに、新たな図書館が生まれます。プロポーザルを提出される皆さんには、新たな図書館像、言い換えれば、新たな時代の羅須地人協会を期待します」 新「羅須地人協会」宣言に胸が高鳴った。吉成さんは新著の「はじめに」で高らかに謳っている。「公共施設は誰のためのものなのか?という問いががずっと私の内にあった。巨額の税金を投入してつくるものである以上、魂の入っていないハードとしての『ハコモノ』は作ってはいけないと強く思っていたからだ。そういう意味で言えば、これからお話しするものがたりは、ハコモノは変えられる!という私の人生を賭けた格闘の日々の記録かもしれない」 私は将来的には「IHATOV・LIBRARY」(まるごと賢治「図書館」)を病院跡地に独立館として、立地することを夢見ている。仲間たちはそのためのオンライン署名(以下)を呼びかけている。吉成さんの“追っかけ”はこれから先も終わることはない。”夢の図書館”に的確に応答してくれるのは、座右の書として賢治の『農民芸術概論綱要』を掲げる、この方しかいないと思うからである。なお、公募プロポーザルによる業者選定は12月3日に最終決定する予定になっている。 (写真は吉成さんの新著。“全身図書館人”の面目躍如。沖縄のシーサー(魔除け)たちも大喜び) ≪追記―1≫~出版記念会~『賑わいを創出する図書館』 図書館の“魔術師”とも呼ばれる吉成信さんの新著『賑わいを創出する図書館』(KADOKAWA)の出版を祝う会が7月17日に岐阜市内で開かれ、開館9ヶ月半で来館者100万人を達成した快挙を祝福した。その様子な以下から 『賑わいを創出する図書館』出版 メディコス初代館長の吉成 ... ≪追記ー2≫~ハラスメント被害者が救われる世の中を 「匿名」を希望する方から次のようなコメントが寄せられた。 「はじめまして。こちらのブログは少し前にあがっていた花巻市スポーツ協会事務局長のパワハラ騒動の記事で知りました。私は協会に近い人間です。件の人物については昔から様々な方面で問題になっていました。増子さんのおかげで、今回やっと問題が表沙汰となり個人的には感謝しています。当人は今も反省することもなく、何の処分も受けずにのさばっていると聞きます。これは協会の対応も問題視するべきではないでしょうか。被害者への冒涜と考えます。この問題が風化されぬよう、増子さんのお力添えを切に願います」 ★オンライン署名のお願い★ 「宮沢賢治の里にふさわしい新花巻図書館を次世代に」―。「病院跡地」への立地を求める市民運動グループは七夕の7月7日から、全世界に向けたオンライン署名をスタートさせた。イーハトーブ図書館をつくる会の瀧成子代表は「私たちは諦めない。孫やひ孫の代まで誇れる図書館を実現したい。駅前の狭いスペースに図書館を押し込んではならない。賢治の銀河宇宙の果てまで夢を広げたい」と話している。 「わたくしといふ現象は/仮定された有機交流電燈の/ひとつの青い照明です/(あらゆる透明な幽霊の複合体)」(『春と修羅』序)―。賢治はこんな謎めいた言葉を残しています。生きとし生ける者の平等の危機や足元に忍び寄る地球温暖化、少子高齢化など地球全体の困難に立ち向かうためのヒントがこの言葉には秘められていると思います。賢治はこんなメッセージも伝え残しています。「正しく強く生きるとは銀河系を自らの中に意識してこれに応じて行くことである。われらは世界のまことの幸福を索(たず)ねよう、求道すでに道である」(『農民芸術概論綱要』)ー。考え続け、問い続けることの大切さを訴えた言葉です。 私たちはそんな賢治を“実験”したいと考えています。みなさん、振るって署名にご協力ください。海外に住む賢治ファンの方々への拡散もどうぞ、よろしくお願い申し上げます。 ●オンライン署名の入り口は以下から https://chng.it/khxdhyqLNS ●新花巻図書館についての詳しい経過や情報は下記へ ・署名実行委員会ホームページ「学びの杜」 https://www4.hp-ez.com/hp/ma7biba ・ヒカリノミチ通信(増子義久) https://samidare.jp/masuko/ ・おいものブログ~カテゴリー「夢の新花巻図書館を目指して」 https://oimonosenaka.seesaa.net/2025.07.26 -
「日本人ファースト」と映画「国宝」と…排外と包摂(ほうせつ)のはざまに漂う〝魂の交歓“~2人の在日3世からの訴え!!!???
「日本人ファースト」という狂気じみた絶叫を振り払いたい一心で、参院選の投開票が行われた20日、隣町の映画館に飛び込んだ。293席はほぼ満席で、最前列に残っていた1席に辛うじて、滑り込んだ。見上げるような目の前のスクリーンではきらびやかな歌舞伎の舞が狂うように踊っていた。 映画「国宝」(吉田修一原作、2025年)は仁侠一門に生まれた立花喜久雄(吉沢亮)が希代の女形にのし上がるまでの一代記である。監督は在日コリアン3世の李相日(イ・サンイル)さん。日本中の感動を呼び起こした「フラガール」(第30回日本アカデミー賞最優秀作品賞、2006年)を手がけたことでも知られる。本作は禁断の歌舞伎の世界に渦巻く「血筋や才能」、「信頼と裏切り」に切り込んだ作品で、いまや社会現象にもなりつつある。「あなた、歌舞伎が憎くて憎くて仕方ないんでしょう。でもそれでいいの。それでもやるの。それでも舞台に立つのがあたしたち役者なんでしょうよ」―。“人間国宝”の万菊(田中泯)が喜久雄にこう諭(さと)した刹那(せつな)、私はいきなり現実に引き戻された。 「バカ・チョン」発言(16日付当ブログ「追記―3」と「追記ー4」参照)―。今回の参院選で大きく躍進した参政党の神谷宗幣代表は終盤戦の応援演説で、「朝鮮人差別」をむき出しにして、こう言い放った。鬼気迫る喜久雄の名演技とこの発言との乖離(かいり)に一瞬、頭の中が真っ白になった。李監督は喜久雄の生い立ちについて、「その中に…外様というと語弊があるかもしれませんが、血筋ではない人たちも多々加わって、それぞれ長きにわたってファミリ―を“組成”してきたわけです」(パンフレットから)と語り、こう続けている。「(主演の吉沢が)どこからきたのか…出自が分からないようなたたずまいがいい」― 血筋や出自…。李監督はこうした”血”のこだわりを超越した地平にこそ、例えば歌舞伎のような真の伝統「文化」が開花するということを示したかったのではないか。「文化は国境を超える」ー。室町時代から江戸時代にかけて、朝鮮から日本に派遣された「朝鮮通信使」という外交使節団があった。 主に将軍の代替わりを祝うために、国書を持参して日本へ。通信使は約400人から500人で構成され、訪日は12回にわたった。日韓の平和構築と文化交流の基礎をつくった当時の記録は2017年、ユネスコの「世界記憶」遺産に登録された。 スクリーン上では最後のクライマックスシーンの「曽根崎心中」が演じられていた。その瞬間、「日本人ファースト」というあの絶叫がウソのように耳の底から消えていった。まるで、敗者がどこかに身を隠すかのように…。(あるいは、これは私の空耳だったかもしれないが)割れるような拍手とともに、幕が下りた。満席の会場を眺めながら、私は「土俵際で踏んばったな。この国はまだ、大丈夫かもしれない。あきらめるのは早すぎる」と独りごちた。いまの時代状況を逆照射する映画との出会いに救われたような気持になったのである。 歴史修正主義者は少なくとも、修正されるべき”歴史”の存在を前提にしているのに対し、参政党の主張の中にはそもそも、その”歴史”そのものさえ存在しない。存在するのは、例えば「創憲案」という表現に見られるような歴史の”捏造”(ねつぞう)だけであり、これは十分に「犯罪」である。 (写真は吉沢亮が演じる女形の熱演=インターネット上に公開の写真から) ≪追記ー1≫~「日本人ファ―スト」と「国宝」…どっちが本物の“社会現象”か!!?? 俳優の吉沢亮、横浜流星らが出演し、歌舞伎の世界を描いた映画『国宝』が、公開から46日間(6月6日~7月21日)で観客動員数486万人、興行収入68.5億円を突破。社会現象とも言える盛り上がりを見せる中、本作が「第50回トロント国際映画祭」Special Presentation部門に出品されることが決定した。李監督の作品が同映画祭に出品されるのは、2006年『フラガール』、2013年『許されざる者』、2016年『怒り』に続き4作目となる(オリコンニュース) ≪追記―2≫~明日のディストピア 「排外主義者たちの夢は叶(かな)った」という一文でその本は始まる。「特別永住者の制度は廃止された。外国人への生活保護給付は明確に違法となった。公的文書での通名使用は禁止となった。ヘイトスピーチ解消法もまた廃された」。パチンコ店は風営法改正で、韓国料理屋や韓国食品店は連日の嫌がらせで廃業に追い込まれた。父が在日韓国人、母が日本人の主人公はふとつぶやく。「日本初の女性総理大臣が、あれほどまでの極右だったとは僕もすっかり騙された」 李龍徳(イ・ヨンドク)の小説『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』(河出文庫)の冒頭部分である。まるで参院選後の日本を予言するような戦慄(せんりつ)の近未来!現実との類似はそれだけではない。排外主義的な法改正は、中道左派の政党がほぼ絶滅し、神島眞平(かみじましんぺい)なる人物率いる極右政党「新党日本愛」が野党第一党に躍り出て、政権与党と政策取引をした結果だった。 作者は在日三世の作家で、初版は参政党の結党(2020年4月)に先立つ同年3月。「日本人ファースト」がどんな結果を招くかを、この小説は余すところなく描く。待っているのはヘイトクライムが横行する絶望的なディストピアだ。放置すれば事態はすぐここまで行く。極右の主張は感染力が高い。だからこそ対抗しうる言葉を発し続けることが必要なのだ(7月23日付「東京新聞」本音のコラム=文芸評論家、斎藤美奈子) ★オンライン署名のお願い★ 「宮沢賢治の里にふさわしい新花巻図書館を次世代に」―。「病院跡地」への立地を求める市民運動グループは七夕の7月7日から、全世界に向けたオンライン署名をスタートさせた。イーハトーブ図書館をつくる会の瀧成子代表は「私たちは諦めない。孫やひ孫の代まで誇れる図書館を実現したい。駅前の狭いスペースに図書館を押し込んではならない。賢治の銀河宇宙の果てまで夢を広げたい」と話している。 「わたくしといふ現象は/仮定された有機交流電燈の/ひとつの青い照明です/(あらゆる透明な幽霊の複合体)」(『春と修羅』序)―。賢治はこんな謎めいた言葉を残しています。生きとし生ける者の平等の危機や足元に忍び寄る地球温暖化、少子高齢化など地球全体の困難に立ち向かうためのヒントがこの言葉には秘められていると思います。賢治はこんなメッセージも伝え残しています。「正しく強く生きるとは銀河系を自らの中に意識してこれに応じて行くことである。われらは世界のまことの幸福を索(たず)ねよう、求道すでに道である」(『農民芸術概論綱要』)ー。考え続け、問い続けることの大切さを訴えた言葉です。 私たちはそんな賢治を“実験”したいと考えています。みなさん、振るって署名にご協力ください。海外に住む賢治ファンの方々への拡散もどうぞ、よろしくお願い申し上げます。 ●オンライン署名の入り口は以下から https://chng.it/khxdhyqLNS ●新花巻図書館についての詳しい経過や情報は下記へ ・署名実行委員会ホームページ「学びの杜」 https://www4.hp-ez.com/hp/ma7biba ・ヒカリノミチ通信(増子義久) https://samidare.jp/masuko/ ・おいものブログ~カテゴリー「夢の新花巻図書館を目指して」 https://oimonosenaka.seesaa.net/2025.07.21 - ...続きを見る