レブロン・ジェームズ「裏切り者」と呼ばれた男が故郷に捧げたNBA優勝
2015-2016シーズンNBAファイナル第7戦は現地19日、クリーブランド・キャバリアー
ズ(キャブス)が敵地オークランドで、93対89のスコアでゴールデンステイト・ウォリ
アーズを下し、昨年のリベンジを果たし初優勝した。試合終了のブザーが鳴り終わると、
チームを牽引したレブロン・ジェームズは人目もはばらかず泣いた。故郷・クリーブラン
ドに愛され、そして故郷を「裏切った」男が、恩返しを果たした瞬間だった。
オハイオ州アクロンで生まれたレブロンは、高校時代から圧倒的な能力で全米でその名を
轟かせ、大学に進まずNBA入り。高卒ルーキーとしては異例のドラフト全体1位でオハイ
オ州クリーブランドを本拠地とするキャブスに入団する。
「選ばれし者」と将来を嘱望されたレブロンは1年目から活躍し、新人賞を獲得。2年目に
は、ドアマットチームと言われていたキャブスを8年ぶりとなるプレーオフ進出に導くな
ど目覚ましい活躍を見せるも、なかなかNBAの王座には届かない。
2006-2007シーズンには初のNBAファイナルに進出するも、サンアントニオ・スパーズの
組織的なディフェンスに抑え込まれ、4戦全敗で敗退。2008-2009、2009-2010と2シー
ズン連続でシーズンMVPに選ばれ、個人としての実力は誰しも認めるところも、チームと
して結果がついてこない。
2010年にFAなったレブロンは、優勝の栄冠を求め、マイアミ・ヒートへの移籍を決め
る。だが、去就を全国ネットの特別番組「The Decision(決断)」で発表する派手なやり
方が全米の批判を浴びた。移籍に対してクリーブランドのファンたちも連日レブロンに罵
声を浴びせ、彼のユニフォームを燃やした。地元のヒーローは一転、「裏切り者」として
憎悪の対象になった。
ヒートはレブロンに加え、クリス・ボッシュ、ドウェイン・ウェイドという”BIG3”を形
成。移籍会見で優勝へ自信満々だったレブロンだが、移籍初年度の2010-2011シーズン、
ヒートは優勝を逃す。活躍できなかったレブロンは多くのバッシングを受けた。
しかし翌2011-2012シーズン、レブロンは欲しかったNBA王者のタイトルを獲得。
個人としてもレギュラーシーズンとファイナルのMVPにも輝いた。
初優勝の際には「クリーブランドで優勝できたらどんなに良かったか。どれほど素晴らし
かったか想像することしかできないよ」と故郷への思いも明かした。翌シーズン、ヒート
は連覇を達成。レブロンへの批判もいつしか収束していく。
念願だったNBA王者となったレブロンは2014年シーズン後、決断を下す。古巣キャブスへ
の復帰だ。ヒートは優勝を狙える強豪だっただけに、この移籍は大きな驚きを呼んだ。
レブロンは「自分の目標が多くの優勝を手にすることであることに変わりはない。けれ
ど、オハイオ州北東部に優勝をもたらすことが、今は何よりも重要なんだ」と移籍への思
いを明かした。
キャブスもレブロンの復帰に合わせ、選手補強を図り、2014-2015シーズンにはNBAファ
イナルに進出するも、ウォリアーズの前に敗退する。初優勝をかけて臨んだ今シーズンの
NBAファイナル、キャブズは再びウォリアーズと戦った。
3ポイントシュートを得意とする「スプラッシュブラザーズ」(ステフィン・カリー、ク
レイ・トンプソン)を擁するウォリアーズはNBA新記録となるシーズン73勝を達成し、史
上最強との呼び声もあるチームだ。
キャブスはあと1敗したら敗退という崖っぷちまで追い詰められるも、レブロンが第5戦、
第6戦と41得点を挙げる活躍で3勝3敗のタイに持ち込む。第7戦も27得点、11リバウ
ンド、11アシストの”トリプルダブル”を記録し、要所では3ブロックと攻守に活躍。
私が一番鳥肌が立ったプレイは、試合終盤89対89の場面でのシュートブロックをした
場面だった。その後にアービングの3ポイント(これも痺れた)とレブロンのフリース
ローで93対89として第7戦の勝負が決まった。(レブロンは、第5戦以降、平均36.3
得点、11.7リバウンド、9.7アシストで通算3回目のファイナルMVPを獲得した)
キャブスは、NBA史上初となる1勝3敗からの逆転優勝を成し遂げた。
試合終了を告げるブザーが鳴った瞬間、レブロンは「クリーブランド、この優勝をお前に
ささげる」と叫び、泣き崩れた。
かつてマイアミに移ったレブロンを「裏切り者」と非難したクリーブランドの人々はい
ま、こう思っているかもしれない。
「レブロンは、優勝の準備のためにマイアミに行ったんだ」と。
BuzzFeed Japan掲載記事含む