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はじめに

経営者の高齢化に伴い、廃業予備軍の中小企業が全国に127万社存在し、その5割は経営黒字(儲かっている)という実態を中小企業庁が公表しました。

 

この本を手に取っていただいた読者のみなさんは、M&A(エム・アンド・エー)をご存知でしょうか。M&Aという言葉はビジネスの世界ではかなり浸透してきた言葉ですが、高齢世代の経営者のみなさんにとって、「企業の乗っ取り」と思っている方も多数存在するのではないでしょうか。

 

M&Aは企業の売買ですが、中小企業のM&Aの多くは「後継者不在」や「将来の先行き不安」という理由で、第3者(社)に自社の経営を委ねる事業継続の一手法です。前述した廃業予備軍127万社の大半は前者の後継者不在を指しています。後継者不在経営者の大半は高齢者です。多くのマスコミが「大廃業時代の到来」などと恐ろしい言葉を使用し、高齢となった中小企業経営者の廃業に対し警鐘をならしているます。

 

「廃業」の救済策の一つにM&Aがあります。しかし、高齢世代経営者の方々にとって自社の売却が伴うM&Aは、なかなか受け入れ難いのではないでしょうか。そこで、M&Aで余生を謳歌している私の生き方が、廃業を思いとどまる一助になるのではないかと思い、ペンを走らせています。

 

私は現在宮城県仙台市に移住していますが、2002年2月まで、人口約9万人の城下町山形県米沢市で、親子2代に渡り同族の中小企業を経営していました。経営者とはいっても父親が創業者であるため、私は世襲で社長を承継した、いわゆる二代目経営者でした。その弱小中小企業の経営者であった私は、M&Aという手法で第3者に自社の経営を任せ、私は別会社を創業したのです。49才の時でした。

 

 現況は、M&Aで明るい老後の第2人生を迎えていますが、16年前は悩みぬきました。「売却して会社はどうなるのか」「社員は退職に追い込まれないだろうか」「社員はどのように私を見るだろうか」「「地域内でどのように思われるだろうか」「家計や暮らしはどうなるであろうか」「果たして売却が成立するのであろうか」「売却後自分はどのような人生を歩めばいいのだろうか」・・・連日悩み続けました。

 

 わたしはさておき、M&Aという事業承継の手法を知っていれば、事業承継を控えている中小企業にとっても「鬼に金棒です」。先見の目を持った後継者不在の中小企業経営者は、続々とM&Aを実践しているではありませんか。今では、後継者不在の中小企業にとって、M&Aが最高の承継手法と認識されるようになってきました。しかし、公になっていない大きな問題がありますそれは・・・。

 

優良企業が自社を売却すれば、多額の売却益が手に入り、余生の資金となります。しかし、金銭面ではM&Aに勝る手法はないでしょうが、売却後の元社長の生きがいという点について、売却から16年経過の現在、少々疑問を持つようになってきました。経営者は多忙といつもつぶやきながらも、それは生きがいのひとつでもあったはずです。その生きがいが失われるのですから、M&Aを実践するには、売却後のしっかりとした生きがい作り計画が不可欠です。そのためのアドバイスとして、本書の中で「M&Aで明るい老後を迎えた私の秘訣」のタイトルで私見を述べてみました。

 

M&Aの存在をしらず廃業している元経営者

M&Aを知っていながらも決断できず途方にくれている経営者

M&A売却後の余生を悲観し立ち止まっている経営者

M&Aは大企業の戦略と勘違いし、自社に不向きと勝手に判断している経営者

 

このような経営者を知ると手を差し伸べたくなります。M&Aを決断実践し十六年後、今度は老後の生活に突入しようとしている私のM&A人生を書としてまとめることで、廃業を思いとどまる経営者が一人でも現れ、M&Aで事業が継続されることになるのではないかとの思いで、本書を上梓することにしました。

 

中小企業のM&Aは、間違いなくこれからの時代に求められる経営戦略の一つです。国策での支援もスタートしています。社会の変革が目まぐるしい現代社会、古くなった既存の経験値だけでは荒波を乗り越えることは困難な時代です。将来の自社の姿を想像し、企業の存続と発展の為に今なにをすべきか。経営者の英断が求められています。

 

「悲観的に物事をとらえ、楽観的に物事を進める」

「楽観的に物事をとらえ、悲観的に物事を進める」

 

私の人生は49歳で前者を選びM&Aで物事を進め、現在明るい老後を迎えていますが、みなさんはどちらを選ぶのでしょうか。

 

2018年5月

鈴 木 均

 

 

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