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星空の下で(6)

「しかし、我々は担任の"ほしこ"には大分迷惑を掛けたクラス
だつたよね」と加藤 今は亡き"ほしこ"(担任のあだ名)の
話に移っていく。彼はほっそりとして背が高く年齢は、当時
50歳を超えていたと思う。感じが干物の干し子に似ていて
性格が、しなこかったのでそういうあだ名で、影では呼んでいた
しかし我々には全力で、接してくれていて問題が起こるたび
校長に直談判、いつも我々の盾になって庇ってくれていた。
自慢は自分のクラスが、全校の中でも地域の他の高校の中でも
平均的な学力は、ずば抜けてよかった事でした。
我々のクラスは個人的問題をおこすより、全体で問題を起こす
回数が多かったのかも知れません。個人的問題も全体責任と
考え、年上がしきって全体で処理しようする気運がおおかった。
担任の彼は、少々学則に外れた点が起きても新しい学校の
中で、定時制と言うハンデで劣等感を持ってはいかん
成績だけは負けるなといつも話していて、唯一赤点を取った
時は、何のために学校で苦労して学ぶのかと、ひどく怒った
事を我々は覚えている。
我々が卒業して、20数年後彼は逝去しているがその一ヶ月前ほど
訪れた我々に、弱弱しい声で「立派に生きてるな、頑張った
かいがあったね」といった言葉がいまも耳に焼き付いている。
話は少しそれたが、彼に迷惑を掛けた一番の問題が
遭難事件、次が灰皿事件であった。

社内健康診断の結果

血圧正常、但し貧血気味毎年少しずつその値が5年間ほど
低くなっている。早速主治医に駆け込んで診察を受ける
色々検査をしてもらったが、男子としては確かに貧血気味と言う
鉄分が足りないらしいが、悪い血液の病気はなさそう
鉄分が足りないとは、日頃沢山の鉄に囲まれて仕事を
しているのにと思ったが、それと此れは別か。
改善するのは65歳前までだと効果が有るが、70歳では
そんなに気にする事はないと主治医はいう。「でもね、せめて
80代までは生きたいから」と言うと「大丈夫だよ」と
笑われてしまった。
「もうひとつ先生アルコールを飲んだ夜は、小便が近くなり
何回も便所に行かなければならないから、それに効く薬や
処方はありませんか」と聞くと「酒を飲まなきゃいいだろう」
と言われ「アルコールは利尿作用が有るので、小便が近く
なるのは当たり前」とこれもわらわれてしまった。
主治医がいると言う事はありがたい。精神的にも話すと
気持ちが安定する。

大空を飛ぶ夢

昨夜の夢はヘリコプターの教習所で学んでいる自分。
年齢は不詳だが、眼下の紅葉の山々の間をぬって操縦桿を
上下、左右に動かしながら飛んでいる自分がいた。
不思議なほどに鮮明に記憶に残っている。夢の世界とは
誠に面白いもので、いつも現在の年齢ではなく若い年齢であり
体力的にも万能のようなのであり、疲れも知らない。
夢とはどこから、出てきて映像化され一瞬の記憶として
残るのだろう。本人の思いや、過去の記憶の一部が夢見る人の
都合の好いストーリーに、書き換えられて脳の中で映像として
表われる。
ネットで夢について調べてみると、数え切れないほどの
解釈や著書があり、心理学から夢占い、神のお告げ等々まで
の分析が記されていた。
本人が持っている、願望、観念、等が睡眠中にあたかも現実の
経験であるかの様に感じる一連の心像のことだという
私には難しすぎて、理解できなかった。
現実的には、少し疲れているのか、何か目的願望が強いのか
歳を重ねることへのあせりが、出てきているのか自分の
深窓を分析するまでには、至らなかった。

暖房機の点検

今日は社内暖房機の一斉点検を行う。
いよいよ10月の月末を迎えようとしている。11月を迎えれば
いつ初雪を迎えてもおかしくない季節となり、暖房機
を稼動させる日も多くなるでしょう。スイッチが入るか
燃料ホースが劣化してないか、コンセント部分に埃が溜まって
いないか、各セクションでの点検の指示を出す。
季節の移ろいは誠に早く、もう初冬を迎えようとしている。
今年はカメムシが、異常に多く家庭内にも、社内事務所にも
侵入して、その匂いで嫌われている。カメムシの多い年は
大雪になるだろうと、異口同音に話しているが、その根拠を
説明できる人はいない。昔からの言い伝えらしいが大雪は
ごめんこうむりたい。


星空の下で(5)

「ところで、平井の密造酒思い出すよな」酒好きの松田が
話し始める。

「静かにあがれよ」平井がそっと声を掛ける物置の二階に
通じる梯子を、アノラックを着たままシーンと静まりかぇった
学校帰りの雪の降りしきる9時40分頃平井の後から私、加藤
松田と足音を偲ばせ、平井の部屋に上る。
目的は平井の実家で作った、ぶどう酒いわゆる当時は、密造酒
の部類である。当然アルコール度も日本酒くらいある。
「今日はたっぷりあるから、遠慮するな」平井はそういって
リットル瓶を持ち出してきた。私は買ってきた干しするめを
鞄から取り出し、口でさきながら新聞紙の上に並べる
それぞれ酒が、好きな連中だが一応歳は行っていても高校生
だから、おおびらに外では飲めないし、又そんな金もない身分
であったから、冬場の平井のこの部屋は、色気こそないが
我々のオアシスであった。現状の日本を語ったり、将来の
自分を語り合ったり結構、高尚な話で盛り上がっていた。
平井の実家は葡萄畑を持っていて、一応農家であるがそんなに
大きな農家でなく、長男の彼は加藤と同じ会社で働いていた
私同様この二人も通信教育を受けていて、同様に新設校に
入学して、初めて通信教育でも仲間であったことを知ったのでした
平井も卒業後は、電気部品メーカーの総務部長まで、昇り
積めたのに、定年前に退職しタクシー会社の社長に就任し
55位で、社長を辞任し静岡の蜂蜜屋に弟子いれし、現在は
独立して蜂箱を車に積んで全国を旅してる変わり者。
「さて平井、ご馳走様」それでは儀式。我々は万年床をはぐり
ドライヤーを片手に熱風を、万年床に吹きつける。
「平井はよ床に入れ、梯子下の電気は消していくから」
平井を置いて、夜の雪道を帰る我々、いつしか雪もやんで
満点の星空が輝き、深夜の冷気が紅葉した頬に心地よかった。