ある飲食店の閉鎖

ふらっと入ったカクテルバーが、気に入って
一年ほど前から七、八人も座れば一杯になる
カウンターだけの座席に、腰を下ろし店長相手に
ひと時の憩いを楽しんできた。
様々な相席の知らない客との会話も、仕事とか
その他の関わりもない中での雰囲気は、
自分が自分だけでいられる、束の間で
あった気がする。
"まぁ"行く度に客数はまばらで、静かで私にとっては
居心地のいいひと時であった事は確かであった。
それが今月末をもって、閉店だという。
残念ではあるが、商売だから仕方がない
経営者の考えの中から、決断したものと思う。
私も経営者の端くれであり、その店の経営者の
気持も理解できるし、従業員の気持ちも良くわかる
経営が成り立つことと、一生懸命仕事に打ち込み
努力する事とは、必ずしも比例しないのが
昨今の景況である。私も遠い遠い昔この世界で
商売をして、三年ほどで店を潰した経験があるが
人間の癒しを司る商売ほど難しい商売はない。
簡単に開業できるが、継続することが非常に難しい
しかしながら、この商売に携わった人達を見ると
いずれも、しっかりした大人に成長している
人達が多い。別の道を今後歩むんであれば
どの道でも、成功の度合いがすこぶる高いと
思われる、人の気持ちを知り尽くしているから。

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