老兵の半生(メーテルの雪2)

私は黙って、週刊誌を読み続けていました。
時々気になって、ちらちらと彼女の様子をみながら
彼女は、暗い車窓を眺めながら、さびしげな
横顔で、じっと座っていました。
列車が黒磯の駅に、止まったときのことです
彼女は、釜飯弁当を二つ購入し、其の一つを
「よかったら食べませんか」私に差し出し、
てくれました。
其のときから二人の会話が、始まりました。
「どこまでですか」「赤湯までです」と私、彼女は
「置賜で降りるんです」
いろいろ話をしているうちに、彼女は横浜の貿易商社
につとめていて、結婚したのですが、
離婚して、職場もやめ、実家に帰るんだそうです
なぜ、こんなに空いている中で私の前の席を
選んだのですか、と聞いてみました。
亡くなった弟の横顔に私が、どこと無く似ていたので
つい座ったのだそうです。
そんな時の時間のたつのは、すごく早いもので
たちまち、彼女のおりる置賜駅に列車は、
停車してしまいました。
無人駅に降り立った彼女。列車が発車するまで私に
手をふりながら、立ち尽くす彼女に外灯の光
を受けながら、心を締め付けるような印象で
雪は降り注いでいました。
今日の庭先に降る雪をみながら、遠い日の無人駅の
光景を思い起こしていました。
つくづく年なのかなと思える、休日でした。

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