老兵の半生(初めての一人旅)

昭和21年私小学校一年生の夏休み、国鉄長井線の車中
母親に連れられて、母の実家にとまりに行き一日多く
私だけが泊まり、「一人で汽車に乗れるよね、切符も買えるよね」
「うん・・・」初めて一人で小さな旅をすることに、ものすごい
不安を感じていた私でした。三月生まれの私は、同学年生より
小柄で「内弁慶外みそ」な性格であり静かな子供でした。
高々鮎貝駅から長井駅までの、わずかな区間であったのですが
切符を握り締め、一生懸命に駅名を確認しょうとしていたのです。
勿論当時は、蒸気機関車が列車を引張る三両編成であったように
記憶してます。乗客も沢山の人々で列車内では、大きな荷物を
背負ったおばさん、「あんびんしゃっぽ」をかぶったおじさん
達で一杯でした。突然耳元で「僕、あんびん食べない」と言う声
がしました。当時あんこいれの餅菓子など、貧乏な家庭の私など
年に数回、おやつとして買ってもらえるほどでした
隣に座っている、年のころ22さんの"おねいさん"が
新聞紙で、包まれた餅菓子を私の目の前に差し出していました。
乗り越ししないで、無事長井駅に降りることが、出来るか心配で
隣のひとが、どんなひとかは、頭になかったのです。
「そう長井駅で、降りるのお姉さんも長井駅で降りるから
一緒にいこうね」そういって三個の餅菓子を持たせてくれました。
その一つを食べ、後の二つを二人の妹のためポケットにしまい
手を引いてもらいながら、長井駅に降りたのです。
「大丈夫、家までいける」「うん」そうゆうと私は駆け出して
いたのでした。ほんの短い時間の出会いでしたが、なぜか鮮明に
そのことを今でも覚えています。今でも大好きな餅菓子を
もらった性かもしれませんが。

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