平成26年度「長井の心を育む推進事業」で公開した写真を取り上げる。
長井のまちには、その歴史の中で様々な建物があらわれては消えを繰り返してきた。現存しているものもあれば消えてしまったものもある。その時々の人々の暮らしを彩り、時代を形どってきた建物等を、大正3年・昭和9年の時間軸周辺でご覧いただく。
長井町役場の大正3年と昭和9年
大正3年の地図
長井町役場は、現在の中央十字路南西にあった。長井町は明治22年の第1次合併で。当初、役場庁舎はなく、宮の摂取院に間借り、小出念仏堂を経て明治27年9月に庁舎を建築した。
大正3年発行の町勢要覧に掲載された長井町役場の写真。これと同じと考えられる写真を下記に示す。
寺院のように見える。明治27年当時の記録を下記に示す。
請負は、第一役場建物 第二土突 第三石工 第四戸障子 第五木羽 第六壁 付帯工事・役場の門、玉垣、掲示場。建具の内戸障子は四二間半、畳は三六畳であった
1 本庁舎 総二階 梁間四間 桁間7間半 総坪60坪
1 天井版 三〇坪
1 棹椽(たるき) 送り五本掛
1 敷板 節なし 違いはぎ
1 構造 事務室1 14坪、宿直室1 2坪25、応接室1 3坪、物置所1 0.75坪、収入部1 2坪25、人民控所1 5坪、小使の間1 1坪、水屋1 1坪、炭置場1 1坪5、玄関1 幅9尺 深さ1間、板縁 9坪(但し節なし、違いはぎ)
建築費:地所買収費650円、庁舎新築費670円、地均し費20円、畳14円57銭、門構造作費10円、周柵代110円、井戸掘等25円42銭、雑費100円 合計1600円
請負入札、落札人
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役場建物 370円 四釜孫四郎
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土突 16円55銭 黒沢新太郎
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石工 115円97銭5厘 今野孝之助
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戸障子 45円20銭 四釜孫四郎
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木羽(屋根) 45円 佐藤菊治
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壁 1坪につき59銭 黒沢新太郎
ほかに 畳 1坪につき16円81銭9厘 大石国吉
追加で、柵下軒下の土止め切石、門柱の泥除け石、便所の手直し、池造り、屋根の足止め、炬燵の炉縁、火の用心手桶、堀のマミ造りなど150円の支出
竣工式
明治27年10月14日午前10時。招待案内は、町会議員18名、区会議員5名、町医者2名、郡医師1名、堰頭3名、衛生組頭40名、町内の有力者160名、工事関係請負者5名などへ。来賓は郡長、裁判所判事、他町村長(近隣14か村案内の内6名参加)、警察署長、郵便局長。
門柱はスギの緑門とし、傍に長井町役場竣工式と寒冷紗に大書きした標識を立てた。当日は
午前7時 總宮神社安部神官による御祓の式執り行う。供物は川菜、瓢子、埴土山、神酒。
午前10時 竣工式執行 事務室に於いて
○第一撃柝(げきたく・拍子木)
町長式辞 建築委員経過報告 郡長祝辞 町長答辞 他町村長代表祝辞
本町会議員祝辞 衛生組頭惣代祝辞 本町有志者祝辞 請負者に賞与式
式終了
○第二撃柝
二階の室にて案内者一同とともに祝宴
諸品借物 竣工式執行のため役場で借りたものの主な物
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うすべり 83枚 因・32 大二・10 〈清・10 □・16 土屋・10 □・5
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黒、八畳敷ケット 1枚 因
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懸け燭 8丁 土屋
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座布団 17枚 三清
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夏火鉢 10個 三清
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花瓶(古銅、瀬戸、他) 土屋
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燭台(古銅) 芳賀
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お盆(各種) 草刈
当時の様子が目に浮かぶ。建坪が30坪、民家並みの広さだ。
昭和9年の地図
大正3年と同じ場所に役場はある。昭和33年に現在の場所に市庁舎を建てることとなるが、しばらく、分庁舎として使用していた。昭和9年の町勢要覧に掲載された役場の写真は下記に。
大正3年のものと見比べていただきたいが、同じ建物である。大正3年では1階2階の窓が障子であったが、昭和9年では2階のみガラス戸に変わっている。左側の建物は電気部。電気部は、町営で大正3年から取り組んだ事業で、山形電気株式会社から電気を買い町内の需要者に供給していた。当時は役場内で事務をとっていたが、事業拡大に伴って写真左の倉庫兼事務所を建てた。建設年は大正11年以前。
昭和9年になると、役場前にカフェ第1号「コマドリ」が営業している。昭和6年からで、以降、「グリーン」「ホンギリ」「クローバー」が開店しまちなかに賑わいを見せ始める。役場敷地内には、現在松ケ池公園にある「横山孫助胸像」が昭和5年に建立されている。
上記写真は大正14年のもの。2階の窓が障子からガラス戸に。左が電気部の建物だが、道路(本町通り)に面したところに、電気や照明の展示も行っていた。
この役場庁舎は、およそ70年で幕を閉じることになった。