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誰も教えてくれないエアコンの話

  • 誰も教えてくれないエアコンの話
TVやラジオのCMで、ジャパネットのエアコンの早期キャンペーンが、度々流されているので、改めてエアコンの話をしたいと思います。

エアコンの選定をする場合、畳数表示を目安にする方がほとんどだと思いますが、この規格は、無断熱で隙間だらけの住宅が、大半だった1964年に業界団体が統一の基準を決めてから、50年以上経過した現在でも、同じ規格だということをご存知でしたでしょうか。



グラフを見てわかる通り、国内には4割ほどの無断熱住宅もあり、気密や断熱の不十分な住宅も多く、エアコンが効かないというクレーム防止のために、変更していないというのが、建前のようですが、何も知らずに、台数を余計に買わされたり、オーバースペックのエアコンを買わされないように注意しなければなりません。



こうした表示も、無断熱に近い隙間が大きい古い住宅を基準にしており、6畳から9畳というのも、木造の家かコンクリートのマンションを目安にしています。

参考までに、このエアコン表示の見方を紹介します。

左上にある期間消費電力量は、東京をモデルとし、 設定室内温度は、 冷房時27℃/暖房時20℃ で、冷房期間は5月23日~10月4日・暖房期間は11月8日~4月16日 です。そして使用時間: 6:00~24:00の18時間 の使用量の目安で、暖房使用時の外気温の設定は7℃です。

※ 宮城の場合は、地域係数という基準で、1.6となっているので、この数字の1.6倍が目安となります。

つまり、このエアコン一台の期間消費電力586Kw×27円=15,822円が東京での電気料金の目安となり、宮城県では1.6倍にして25,315円というのが、大まかな目安となります。

そして、この数字も気密や断熱性能の不十分な古い建物の目安で、性能の高い高気密・高断熱住宅の場合、消費電力は5分の1位になりますので、対象の部屋の冷暖房費とすれば年間5,000前後の電気料金となります。

右上にある7.2という数字は、APFという通年エネルギー消費効率で、冷房と暖房を併せた消費効率を指しており、1の消費エネルギーに対して、7.2倍の能力を発揮する機種ということで、数字が大きければ大きいほど省エネ性が高いということになります。

※ ソーラーサーキットの家では、APFの数値よりも、冷房をあまり必要としないため暖房COPという暖房効率の高い機種を選定しております。

次に冷房(2.2KW)と暖房時(2.5KW)の能力が表示されておりますが、定格時の能力で、この能力を発揮するための1時間当たりの消費電力が、右側に表示されています。

下段の数字は、最低と最高の数字となっており、例えばこのエアコンの場合0.3KWから5.9KWまで対応ができるという機種となります。

定格時2.5KWで運転すると420Wの消費電力で、COPは5.9となり、5.9KWのフルパワーで運転すると、1480Wの消費電力を必要とするということで、COPは2.5位に下がり、効率が悪く、電力料金が上昇します。

このように、エアコンは定格時の運転が一番消費電力が少ないように設計されていますので、定格以下で運転できる機種を選定することも大事です。

そして、左下にある4.5KWの表示ですが、外気温2℃の場合に必要な容量を明示しているのですが、おそらくCOPは3.0位で、消費電力は1350W前後かと思います。

2℃というと、仙台の真冬に近い温度になるので、宮城で、断熱が不十分な住宅の場合は、6畳間に、6畳用のエアコンをつけると、真冬の電気代はかなり割高になるということです。

私が、簡易的に、エアコンの必要能力を計算する方法として、用いるのは

Q値(住宅の熱損失係数)×部屋の大きさ×25℃(冬期間の部屋の温度ー最低気温)です。

※ 宮城の場合だと、冬季の最低温度はせいぜい-5℃位ですので、室温を20℃にして温度差を25℃として計算しています。

ソーラーサーキットの標準仕様のQ値は約1.5位ですので、6畳の広さを暖房する場合、1.5×9.9×25=371Wとなりますので、計算上は、400Wの熱量で十分となります。

つまり、計算上は、ハロゲンヒーターの弱運転(500W)で十分という事になり、逆に暑くなります。

というのも、人が生活していれば、人体からも熱を発しており、成人男性一人につき、1時間で約100Wの熱量を発生させているので、人が2.3人いて、電化製品や照明からも、発熱しているので、本来、暖房はいらないということも、少し頭に入れておいてください。

余談ですが、ハロゲンヒーターなどの電気式の暖房器は、エネルギー効率は、1に対してあくまで1ですので、ハロゲンヒーターを弱運転で500Wの消費電力でも、電気代にすると1時間あたり13.5円かかるのに対し、上記の6畳用エアコンだと、100Wから150W位の消費電力で済むので、3円から4円位でOKとなります。

※ 割安な夜間電力だと1円~1.5円位になります。

この辺が、昨今のヒートポンプエアコンの優秀さという訳です。

ちなみに、120㎡(36.3坪)+16.5㎡(5坪の小屋裏)程度の大きさの建物の場合は、

1.5×136.5×25=5118Wとなり、計算上は2.2KWと2.8KWのエアコン1台ずつで、家中の熱源が、ほぼ間に合う計算になります。

※ ハイスペック仕様だと、1.3×136.5×25=4436Wとなります。

この計算は、間仕切りも何にもないオープンな空間の必要な熱量となりますが、住宅の場合は、部屋間の間仕切りも多いので、弊社では、少し余裕をみて1Fに4KW(14畳用)+2Fに2.8KW(10畳用)で、合計6.8KWのエアコンを設置しているのが通例で、間欠運転ではなく、24時間連続運転しても、年間の暖房費は、十分6万前後で収まるのです。

ただ、注意しなければならないのが、C値(家の隙間面積)で、いくら新築で、省エネ基準を満たしていても、性能値は最低限のレベルという認識が必要で、しかもC値が、2とか3とか5とかのレベルになると、熱損失は大きく、暖められた空気とともに熱は外に逃げ、足元から冷たい空気を引っ張り込み、必要以上のエアコンの容量が必要となります。

また、換気の影響も大きく、熱交換の機能がない3種換気の場合は、換気による熱損失も考慮しなければなりません。

そうなると、エアコンの設定温度も高くなりがちで、光熱費はもちろん、運転音や風量などが気になったり、露点温度も上がる事で、結露が発生しやすくなったり、様々な不具合が起きてくるのです。

よく、建売やローコスト住宅などを購入なされた方が、エアコンでは暖まらない・風が不快だ・暖房費が高いという声が多いのは、断熱性能にくわえ、気密性能も低いからで、換気を消したり、電気ストーブやホットカーペット・中には禁断のファンヒーターを使用してしまい、益々、空気が汚れ、湿気や結露・カビに悩んでいる方も多いのが現状です。

一方で、大手メーカーなどでは、こうしたクレームを避けるために、4台も5台もエアコンを提案したり、全館空調システムや床暖房システムをセットする手法がよく見られますが、多額のイニシャルコストとランニングコストを覚悟しなければなりません。

よく、新築でも、入浴中は、寒くて換気を消すという方も多いようですが、こういう話を聞くと本当に悲しくなってしまいます。

参考までに、3年後に義務化となる省エネ基準のQ値2.4(UA値で0.75)で計算してみましょう。

※ 現在、新築されている住宅でも、70%~80%が大体このレベルです。

2.4×136.5×25=8190Wとなります。

こうした住宅のC値は、概ね5.0というのが、相場ですので、5割ほどの割り増しをして計算しなければならず、8190W×1.5=12285Wとなり、最低でも2.8KW(10畳用)のエアコンが4.5台は、必要になるわけです。



こうなると、機器代のイニシャルコストもさることながら、ランニングコスト的にも、全館暖房にはとても不向きで、いる所だけ暖める局所暖房となり、部屋間の温度差も最低でも10℃前後に広がり、寒い箇所や躯体内で、結露が発生してしまうのは、ある意味しようがないのです。

しかも、この数値は新築時のもので、経年劣化により、徐々に低下していくことも理解しなければなりません。

建売であれ、注文住宅であれ、多くは、エアコン暖房が基本となりますが、気密と断熱が不十分だと必ずこうした不具合が必ず生じてしまうのです。

家も、車同様、燃費で選ぶ時代です。

そして、住む人の健康と建物の耐久性を実現するには、家の温度差を少なくすることが最も重要なポイントでもあります。

家の断熱性能は、冷暖房費に直結しますが、比較する場合はあくまで24時間連続運転がベースになるということをご理解いただきたいと思います。









水蒸気の動きを知ると人も住まいも健康になる

  • 水蒸気の動きを知ると人も住まいも健康になる
空気には、目に見えない(約10万分の2ミリ)水蒸気を含んでいますが、空気の温度によって水蒸気を含むことの出来る量が変わってきます。

表の通り、20℃の空気には空気1立米に対し、17.3gほどの水蒸気を含むことが出来ますが、5℃空気の場合は6.8gの水蒸気しか含むことが出来ません。

この含むことの出来る水蒸気の量を飽和水蒸気量といい、含むことの出来なくなった水蒸気が結露となるわけです。



私達が日常の生活において、湿度と呼んでいるものは、対象となる温度の空気の水蒸気を含むことの出来る量に対し、含んでいる水蒸気の量の割合を示したもので、これを相対湿度と言います。

例えば、20℃の室内の1立米あたり空気中に6グラムの水蒸気を含んだ場合の湿度は、6÷17.3で34.68%ですが、5℃の空気では、6÷6.8=で88.23%となり、同じ6グラムの空気であっても、室温の違いで湿度は、まったく変わるわけです。

湿度には、もう一つ絶対湿度と呼ばれるものがありますが、これは、その空気中に含まれる水蒸気の量そのものを表すものとなり、このケースだと6グラムが、絶対湿度となります。

ここからが本題です。

空気中に含まれる水蒸気は、相対湿度の高い方から低い方に移動するわけではなく、絶対湿度という、水蒸気の量が多い方から少ない方に移動する性質があるのです。

室内の温度が20℃で60%の湿度の場合、空気1立米あたり10.4グラムの水蒸気を含んでいることになります。

仮に、寝室や洗面室が10℃で湿度が70%だった場合、空気中の水蒸気の量は、1立米あたり6.6グラムほどになり、外が1℃で80%の湿度では、4.2グラムとなり、室内の水蒸気は、寒い部屋や外へと向かい、床下や壁・小屋裏へ移動していくのです。



水蒸気の粒子は、非常に小さく、水や空気を通さなくても、基本的に、ほとんどの建築材料には、透湿性があり、水蒸気はすり抜けていきます。

木や石膏ボード・断熱材の種類によって、水蒸気の通しにくさを表す透湿抵抗は変わりますが、ガラスは湿気を通しませんので、ガラス面が露点温度9.3℃以下になれば、結露が発生するわけです。

そして、室内の水蒸気は、寒い部屋や床下や壁体内へも移動していくのです。

いつも、寒い部屋の窓や押入れでの結露を防ぐには、部屋間の温度差をなくさなければならないと繰り返しご説明しているのは、水蒸気の移動を防ぐためでもあるのです。

そして、目に見えない壁体内結露を防ぐためには、室内の水蒸気を、床下・壁の中・小屋裏に移動させないことが大事で、そのためにも、防湿・気密シートを室内側に施工し、気密性を高めなければならないのです。

気密の重要性については、いつも説明しておりますが、気密シートを丁寧に施工し、C値1.0以下の気密性を保てば、たとえ、壁体内へ水蒸気が侵入しても、その量はごく僅かで、侵入した水蒸気は、断熱材や構造用面材・透湿シートをすり抜け外部へ排出されるのです。

しかし、気密が悪いと大量の水蒸気が入り込み、外へ排出される前に、露点温度以下の断熱材や面材で、せき止められ、構造用の金物部分でも結露が発生し、建物性能が低下したり、構造の腐朽を招き、人の健康など、全てに悪影響を及ぼしてしまうというわけです。

また、室内の湿度や温度が高くなればなるほど露点温度も高くなり、露点温度が上がったり、移動する水蒸気の量も多くなりますので、室温を上げ過ぎに注意し、水蒸気を発生させるファンヒーターの使用は控え、室内干しや加湿もほどほどにしながら、常に換気も意識した暮らしも必要となるのです。

最後に、もう一つ厄介な話を付け加えさせていただきます。

冬期間は、水蒸気の絶対量が少ない外側へ、移動する水蒸気ですが、梅雨や夏場において、壁体内の温度や水蒸気量が多くなると、その水蒸気が、今度は逆に、室温が低く、水蒸気の量が少ない室内側へと移動する力がはたらいてくるのです。



そうなると、気密が良ければ、気密シートの壁体側で水蒸気が、せき止められてしまい逆転結露が発生し、逆に気密が悪ければ室内側に水蒸気が入り込み、昨日紹介したダンプネスの状況を招いてしまうのです。

こうした現象を防ぐために、登場したのが、以前ご紹介した、防湿と透湿を兼ね備えた気密シートとです。

http://daitojyutaku.co.jp/log/?l=452447

弊社の外断熱の家には、こうした気密シートは、不要ですが、夏場のエアコンがあたり前になった現在の暮らしを考えると、内断熱の建物には、必須の部材ではないでしょうか。

人間が、より快適な暮らしを求め冷暖房が普及し、家の内外での温度差が生じ、結露被害が顕著になってきたのですが、CO2を削減し、省エネ性も叶えるためにも、高気密・高断熱住宅を推進して行かねばならないわけで、快適と省エネ・健康と耐久性を同時に実現しようとすると、こうした様々な矛盾や弊害を抱えてしまうのも現実です。

これらの課題を、一挙に解決するために、1988年に誕生したのが、外断熱と二重通気を組み合わせ、気密性と通気性という本来相反する機能を合わせ持つ「ソーラーサーキットの家」ということをご理解いただきたいと思います。










 

乾燥より怖いダンプネス

  • 乾燥より怖いダンプネス
ダンプネスという言葉は、あまり馴染みがないと思いますが、室内環境と健康との関連性が強いということで、最近大分目にするようになりました。

ダンプネスは、1990年代頃から、欧米でよく議論されるようになった問題で、室内の高湿度環境のことを指す言葉です。

ダンプビルとかダンプハウスという表現をする方もおりますが、要は湿っぽくてジメジメしている状態の建物ということになります。

画像は、ダイソンさんの商品プレゼン時のデータですが、ダンプネスがもたらす健康への影響についてのエビデンスも大分紹介されるようになりました。

※ 私もダイソンユーザーです。

日本人は、昔から湿気に対して、ある程度の順応性はあるものの、梅雨から夏の時期は、体調を崩す方も多いと思います。湿度が70%から80%を越えるようになると、微生物の活動が、活発になり、カビも発生し、カビを餌にするダニが繁殖してしまいます。

こうしたカビやダニが、人の健康や建物の耐久性にも大きな影響を与えてしまうのですが、特にダニの死骸やフンは、アレルギーの一番の原因になるので、出来るだけ繁殖を抑え、日々の清掃を心掛けることが重要です。

また、室温や湿度が高くなることで、室内の建材や家具・カーテンに含まれるVOC(揮発性有機化合物)や壁や床・ソファーなどの布製品に染み付いた臭い成分なども、揮発されやすくなるのということも理解しなければなりません。

余談ではありますが、人は、呼吸や汗によって、1時間に起きてる場合は、約100グラム・寝ている間でも50グラムの水蒸気を発しています。

そして、汗もまた常在菌によって分解されたり、酸化による化学反応によって、汚染物質を発生させているのです。

こうして、室内の空気は、知らず知らずのうちに、様々な汚染物質で蔓延されてしまうわけですが、昨今のシックハウスは、カビや細菌といった微生物が由来する揮発性有機化合物「MVOC」によって引き起こされ、喘息やアトピーなどのアレルギーの発症率も高まることが、明らかになっているのです。

しかし、病を発症しても、様々な要因が重なり、原因の特定は困難なことから、薬によって症状を抑えることしか出来ないのが現状で、医療ジプシーと呼ばれる病院を何か所も変える患者が多いのも、アレルギー症状と言われています。

結局は、もとの原因と思われる要因を一つ一つ取り去ることが、重要で、住環境や生活スタイルを見直し、室内の空気質そのものを、改善しなければ、なかなか完治することは難しいのではないでしょうか。

昨日、換気量について説明させていただきましたが、今日の住宅は、生活スタイルの変化や換気不足もあって、ダンプネス住宅は、戸建て・マンションとも、非常に増加しています。

ダンプネスをもたらす原因としてあげられるのが

〇 室内外の温度差による結露(冬と夏の壁体内結露も含む)
〇 石油ファンヒーターや過度な冷暖房
〇 換気不足や清掃の悪さ
〇 大量の洗濯物の室内干し
〇 加湿器や観葉植物

その他にも、水はけが悪かったり、風通しが悪い立地や、雨漏り・配管などの漏水などが挙げられますが、家の性能と暮らし方を変えるだけで、ダンプネスの状態は、ほとんど解消することか可能です。

問題なのは、家の中の湿度が高くなりすぎると、家の中は、汚染物質の揮発とカビ臭で、消臭剤や芳香剤・防虫剤や殺虫剤を多用したり、汗を抑えるための制汗剤や香水・洗濯物の乾きも悪くなり、雑菌が繁殖し生渇きの嫌な臭いを抑えるために、必要以上の合成洗剤や柔軟剤を使うようになってしまうのです。

最近、香害が社会問題になりつつありますが、こうした日用品によっても、化学物質過敏症の患者が、急増し、医療費の増加にもつながるのです。

ダンプネスは、負の連鎖による様々な悪循環を引き起こしてしまうのです。

さらに、湿気や結露によって、木材の腐朽菌やシロアリの蟻害を誘発してしまい、家そのものの耐久性も著しく低下してしまうという認識も必要です。

冬の乾燥時期には、インフルエンザの予防や肌荒れ・喉の乾燥を防ぐための加湿対策が、とかく叫ばれますが、ダンプネスがもたらす健康被害や環境破壊・建物の劣化も含めた経済的損失は、遥かに大きいのです。

家の中を湿らせない・床下や壁の中・小屋裏を湿らせないということが、住む人と建物の健康をいつまでも守るのです。

気密と断熱性能を高め、過度な冷暖房を控えつつ、家の中の温度差をなくし、換気や除湿を心がけ、冬期間でも40%前後・夏場でも60%前後に湿度をコントロールすることで、湿気や結露によるダンプネスは解消するということをご理解いただきたいと思います。









健康に暮らすための必要な換気量を知ろう

爽やかな5月に入り、花粉も大分収まってきたので、外のきれいな空気を取り入れたいものです。

皆さんのお宅では、普段一日に何回位、家の換気をしているでしょうか?



私達の子どもの頃は、寒かろうが暑かろうが、両親や祖父母が頻繁に窓を開け、穏やかな日や夏には、一日中開けていたのが普通でしたし、不在時にも窓を開けっ放しにしていた家も珍しくなかったのではないでしょうか。

今でも、年配の方は、一日、何回も窓を開けて換気をしている方も多いのですが、私達の世代も含め、最近の若い方々は、換気の意識はあまり高いとは言えず、ほとんど窓を開けないという方も少なくありません。

その割に、換気機能のない、空気清浄機の設置率は意外と高く、2台も3台もあるお宅があるのが何とも不思議な感じがします。



私達は、実に多くの化学物質に囲まれて暮らしているのが現状で、家の中の空気は、様々な化学物質によって、外の何倍も汚れているという認識が必要です。

しかし、既存住宅の多くは、トイレ・キッチン・浴室にしか換気がなく、換気不足になっている住宅がほとんどです。

また、人は生きていく上で呼吸が欠かせませんが、一日3万回もの呼吸によって、空気中の酸素を取り入れ二酸化炭素を排出しており、室内の空気は人の呼吸や汗腺から発する有機物によっても汚れているということも、頭に入れなければなりません。



隙間風が入るから大丈夫という方もおりますが、隙間風は室内と室外の温度差がもたらす空気の対流現象で、非常に不安定です。

冬期間は、室内外の温度差が激しく、自然と隙間換気がはたらき、換気されている側面もありますが、温度差の少なくなる春から秋口までは、よほど風が強くなければ隙間換気は、ほとんど働かなくなるので、窓を開けるなり、機械換気による空気の入れ替えが必要です。

特に、室温や湿度が高くなる7月・8月には、室内のVOC(揮発性有機化合物)濃度が、湿気や高温の影響によって、高くなりがちで、カビやダニも繁殖しやすくなり、換気が、特に重要になるという理解も必要です。

また、2003年以降、義務化となった換気設備を設置しているお宅でも注意が必要です。

換気設備は義務化ですが、使用するしないは、個人の判断ということもあって、築年数の浅い住宅や新築して間もない家でも、常時、使用している方は少ないのです。

また、運転されていても、フィルターの清掃や交換を忘れてしまい、計画どうりの換気機能が発揮されていないケースも少なくありません。

特に、熱交換機能のない3種換気のお宅では、冬の期間はどうしても寒さを感じてしまい、換気を消してしまう傾向が強く、消したままに春を迎え、そのままの状態が続くお宅もあるのです。



そして、問題なのが、気密性能が悪い住宅では、必要な給気量を満たさず、換気をつけていても、換気のショートカットを引き起こし、換気不足になりがちで、電気代はかかるものの、空回りするだけで役に立っていない換気になってしまっている家も多いのです。



厚労省の基準では、人が、健康な生活を送るために、必要とされる換気量は、1時間に1人あたり30立米となっており、家全体の空気を、2時間に1回の割合で換気することで、清浄な室内空気が保たれることになります。



つまり、機械換気ではなく、窓開けによって必要な換気量を満たすには、1日に12回も家の窓を全開にして、換気しなければならない計算になってしまうのです。

弊社の外断熱の家にお住いの方は、高性能な24時間換気が装備されておりますので、窓開け換気は、特に必要ありませんが、人が心地ちよいと感じる時は、窓を開放して、外の新鮮な空気を取り入れていただきたいと思います。

特に、掃除機やはたきを使って、掃除する時などは、空気中にも、目に見えないハウスダストが舞い上がりますので、掃除後も5分から10分程度、窓を開けていると室内に浮遊するハウスダストも除去できるので効果的です。

最後に、窓開け換気で、注意していただきたいポイントをあげさせていただきます。

〇 砂ぼこりなどが、侵入しやすい家の場合は、風の強い日は避ける
〇 窓を開ける場合は、1か所開けるだけでは効果がないので、何カ所か窓を開け風が流れる様に工夫する。
〇 網戸が汚れている場合は、清掃をする。
〇 小さな虫が侵入しない様に、網戸は右側にする。
〇 網戸な穴が開いたり破れたりしている場合は張り替える。
〇 湿度が高い日や雨が降っている時には、窓開けは控える。

※ 季節の変わり目ですので、換気やエアコンのフィルター清掃も、忘れずに実施していただき爽やかな春をお過ごしいただきたいと思います。






全館床暖房を使いこなすのは難しい?

足元から家全体を暖める全館床暖房に憧れを抱いているお客様がいらっしゃいますが、部分的な敷設はともかくとして、家全体に設置する場合は、慎重な検討が必要となります。

というのも、折角、全館床暖房にしても、上手に活用している方は非常に少なく、後悔している人も少なくないのです。



このデータは、スマイラボというサイトの冬の暖房についてのアンケート調査のデータですが、床暖を設置していても使っていないというユーザーは、32%もいます。



しかも、使用している方でも、全ての床暖を使用したり、24時間運転している方は、驚くほど少なく、多くのユーザーが、いる部屋だけ使う局所運転や使う時だけ入れる間欠運転になっているのが現状です。

これでは、全館床暖房にした意味は薄れ、実にもったいない使い方とも言えるのです。

なぜこうした使い方になるのでしょう。

床暖房をメイン暖房として利用し、部屋間の温度差をなくすには、24時間連続運転が基本となります。

全館床暖は、家全体の温度差を無くすために廊下や水回りにまで、パネルを敷設するわけですので、季節の変り目などは別にしても、全てのパネルを運転させることが必要なのです。

ところが、頭では何となく理解していても、実際の生活では、いない部屋や使わない時まで使うのは、光熱費の無駄という観念がはたらいてしまい、どうしてもこうした使い方になってしまうようです。



床暖房は、立ち上がりが遅く、パネルが暖まるのも、部屋が暖まるのも、それなりの時間が、かかるのはご理解いただけると思います。

電気式の床面はすぐ暖まりますが、不凍液を循環させるタイプの床暖は、不凍液を暖めるのにも、時間を要してしまうので、余計に時間がかかるのです。

こうした間欠や局所的な運転をしていると、床暖房の快適さを得る事は難しく、逆になかなか暖まらないとか、早く暖める為に設定温度を上げて、今度は逆に床が熱くなりすぎたり、負荷がかかり、光熱費が逆に上昇したりもするのです。

また、温度を上げ過ぎると、床材の隙間や不陸・塗膜のヒビなどの問題が生じたり、小さなお子さんがいる家庭では低温やけどの心配も必要です。

その内に、メンテナンスや不凍液の交換も煩わしくなり、いつしか使わなくなるというユーザーも出てくるわけで、こうなると使わなくても床暖の固定資産税だけ、年間数万も払うようになり、実に無駄な投資になってしまうのです。

電気式の床暖房についても、付け加えさせていただきたいと思います。

家の性能によっても、大分差はありますが、全館床暖にした場合のランニングコストはしっかり確認しなければなりません。多くの人は電気代が高く使用しなくなるケースが非常に多いのです。

また、健常者の方には、影響ないかも知れませんが、パネルから発する電磁波の影響は少なくないので注意が必要です。まだ電磁波過敏症と思われる方は、少数ではありますが、シックハウスや化学物質過敏症に一度発症すると、なぜか電磁波過敏症にまで発展するケースが多いようで、因果関係ははっきりしませんが、頭に入れておいていただければと思います。

話を戻しますが、私の知り合いにも、全館床暖房を採用している方がおりますが、この方も、この辺のことを全く理解しておらず、床暖を使わずエアコンをガンガンつけていたので、こうした説明をしたのですが、理解させるのに結構大変でした。

笑い話のようで何ですが、この方が床暖をフルに使う時は、お客さんが来る時や人が集まるお盆やお正月だけだそうで、2.3日前から電源を入れるそうです。そして、お客さんや親せきに床暖暖かくて凄~いと言われるのが、嬉しいようで、床暖はそのためにあるようなもんだと笑いながら言っていました。

とにかく、全館床暖房で、注意しなければならないのが、適温を保つための温度の設定や調整で、タイマーなどを上手に使いこなすためには、断熱に対しての正しい理解と、性能を生かすための暮らし方の工夫や改善も必要で、暑くしすぎると乾燥感が強くなったり、時には窓を開けたりするケースもあるので注意しなければなりません。

単に、Ua値などの性能値ばかりに目をむけ、暮らし方を変えずにいると、省エネで快適に過ごせないばかりか、逆に性能の高さが仇になって、アレルギーが発症し健康を害したり、建物の耐久性まで影響を及ぼしてしまうことも十分ありえるのです。

これは、床暖房に限ったことではなく、エアコンの暖房についても同様で、エアコンも局所や間欠運転する方が、圧倒的に多いのです。



いつも、紹介しているように、断熱性能が優れた家は、エアコンも24時間つけたままの状態と間欠運転するのとほとんど変わりはないのです。

しかも、温度差による結露やカビ・ダニの繁殖も抑えられ、ストレスのない快適な環境の中で健康に暮らすことが出来るのです。

いずれにしても、全館床暖房を設置する場合は、イニシャルコストやメンテナンス費用・ランニングコスト・固定資産税のアップなどを十分に考慮した上で、ユーザー自身が、上手に使いこなせるかの検討が必要ではないでしょうか。

そして、余談にはなりますが、人の足の裏というのは、結構、贅沢で、気ままに出来ており、扱いが難しいものです。

床が冷たいのも問題ですが、逆に暖かすぎると、汗をかいたり、ムズムズしたりと実に厄介だということも、頭の片隅に入れておいていただきたいと思います。

※ 最後に注意喚起ということで紹介させていただきます。

これは床暖房に限ったことではなく、弊社の家やどんな家にも当てはまることですが、何気に大事なことですので、是非、理解しておいていただければと思います。

室内空気の重要性について、いつもご説明させていただいておりますが、室内で呼吸する空気の影響が一番大きいのが、床面の空気になります。

東北大の吉野名誉教授のシックハウスの研究によるものですが、人が呼吸する起源となる部屋の部位に、床・壁・天井とある中で、床面が一番影響するというもので、立っている場合でも53%・寝ていると実に73%の空気が床起源によるもので、座っている場合でも60%以上が床起源となるようです。

立っていても、53%の空気が床が起源するというのは、驚きですが、これには理由があって、人の体温によって、空気の上昇気流がはたらき、床面の空気を上昇させることで、こうした現象になるそうで、同じ面積の天井の比率と比較すると、雲泥の差が生じるのがわかると思います。

私も、これまで床暖房は空気の対流が起きにくく、空気を汚さないという認識でしたが考え方がガラッと変わりました。

何を言いたいのかといえば、床暖房にした場合は、床面の温度が25℃から30℃位に設定するのですが、床面温度が高いということは、通常の家よりも、さらに上昇気流がはたらき、床を起源とする空気の比率が大きくなるということです。

つまり、床材やワックスなどに含まれるVOCの揮発量も増加し、床面に溜まりがちなハウスダストや様々な有害物質も空気中に拡散されやすくなるということになるのです。

これは、全ての住宅に共通する問題ではありますが、床材の選定やワックス・洗剤や消臭剤・ハウスダストも含めて、床面の環境は非常に大事なのです。

また、床暖の場合は、床下断熱が基本となります。気密や断熱施工の精度によっては、床下での結露発生の危険や夏場は地熱の効果も得られない事から、床面が室内温度と変わらず、エアコンの使用量も増えることも想定しなければなりません。

また、足の裏からも、汗や皮脂によって、有機物が発生し床に付着することも、考慮しなければならず、揮発を抑え空気を清浄にするためにも、日々の清掃が欠かせないということもご理解いただければ幸いです。