水蒸気の動きを知ると人も住まいも健康になる

  • 水蒸気の動きを知ると人も住まいも健康になる
空気には、目に見えない(約10万分の2ミリ)水蒸気を含んでいますが、空気の温度によって水蒸気を含むことの出来る量が変わってきます。

表の通り、20℃の空気には空気1立米に対し、17.3gほどの水蒸気を含むことが出来ますが、5℃空気の場合は6.8gの水蒸気しか含むことが出来ません。

この含むことの出来る水蒸気の量を飽和水蒸気量といい、含むことの出来なくなった水蒸気が結露となるわけです。



私達が日常の生活において、湿度と呼んでいるものは、対象となる温度の空気の水蒸気を含むことの出来る量に対し、含んでいる水蒸気の量の割合を示したもので、これを相対湿度と言います。

例えば、20℃の室内の1立米あたり空気中に6グラムの水蒸気を含んだ場合の湿度は、6÷17.3で34.68%ですが、5℃の空気では、6÷6.8=で88.23%となり、同じ6グラムの空気であっても、室温の違いで湿度は、まったく変わるわけです。

湿度には、もう一つ絶対湿度と呼ばれるものがありますが、これは、その空気中に含まれる水蒸気の量そのものを表すものとなり、このケースだと6グラムが、絶対湿度となります。

ここからが本題です。

空気中に含まれる水蒸気は、相対湿度の高い方から低い方に移動するわけではなく、絶対湿度という、水蒸気の量が多い方から少ない方に移動する性質があるのです。

室内の温度が20℃で60%の湿度の場合、空気1立米あたり10.4グラムの水蒸気を含んでいることになります。

仮に、寝室や洗面室が10℃で湿度が70%だった場合、空気中の水蒸気の量は、1立米あたり6.6グラムほどになり、外が1℃で80%の湿度では、4.2グラムとなり、室内の水蒸気は、寒い部屋や外へと向かい、床下や壁・小屋裏へ移動していくのです。



水蒸気の粒子は、非常に小さく、水や空気を通さなくても、基本的に、ほとんどの建築材料には、透湿性があり、水蒸気はすり抜けていきます。

木や石膏ボード・断熱材の種類によって、水蒸気の通しにくさを表す透湿抵抗は変わりますが、ガラスは湿気を通しませんので、ガラス面が露点温度9.3℃以下になれば、結露が発生するわけです。

そして、室内の水蒸気は、寒い部屋や床下や壁体内へも移動していくのです。

いつも、寒い部屋の窓や押入れでの結露を防ぐには、部屋間の温度差をなくさなければならないと繰り返しご説明しているのは、水蒸気の移動を防ぐためでもあるのです。

そして、目に見えない壁体内結露を防ぐためには、室内の水蒸気を、床下・壁の中・小屋裏に移動させないことが大事で、そのためにも、防湿・気密シートを室内側に施工し、気密性を高めなければならないのです。

気密の重要性については、いつも説明しておりますが、気密シートを丁寧に施工し、C値1.0以下の気密性を保てば、たとえ、壁体内へ水蒸気が侵入しても、その量はごく僅かで、侵入した水蒸気は、断熱材や構造用面材・透湿シートをすり抜け外部へ排出されるのです。

しかし、気密が悪いと大量の水蒸気が入り込み、外へ排出される前に、露点温度以下の断熱材や面材で、せき止められ、構造用の金物部分でも結露が発生し、建物性能が低下したり、構造の腐朽を招き、人の健康など、全てに悪影響を及ぼしてしまうというわけです。

また、室内の湿度や温度が高くなればなるほど露点温度も高くなり、露点温度が上がったり、移動する水蒸気の量も多くなりますので、室温を上げ過ぎに注意し、水蒸気を発生させるファンヒーターの使用は控え、室内干しや加湿もほどほどにしながら、常に換気も意識した暮らしも必要となるのです。

最後に、もう一つ厄介な話を付け加えさせていただきます。

冬期間は、水蒸気の絶対量が少ない外側へ、移動する水蒸気ですが、梅雨や夏場において、壁体内の温度や水蒸気量が多くなると、その水蒸気が、今度は逆に、室温が低く、水蒸気の量が少ない室内側へと移動する力がはたらいてくるのです。



そうなると、気密が良ければ、気密シートの壁体側で水蒸気が、せき止められてしまい逆転結露が発生し、逆に気密が悪ければ室内側に水蒸気が入り込み、昨日紹介したダンプネスの状況を招いてしまうのです。

こうした現象を防ぐために、登場したのが、以前ご紹介した、防湿と透湿を兼ね備えた気密シートとです。

http://daitojyutaku.co.jp/log/?l=452447

弊社の外断熱の家には、こうした気密シートは、不要ですが、夏場のエアコンがあたり前になった現在の暮らしを考えると、内断熱の建物には、必須の部材ではないでしょうか。

人間が、より快適な暮らしを求め冷暖房が普及し、家の内外での温度差が生じ、結露被害が顕著になってきたのですが、CO2を削減し、省エネ性も叶えるためにも、高気密・高断熱住宅を推進して行かねばならないわけで、快適と省エネ・健康と耐久性を同時に実現しようとすると、こうした様々な矛盾や弊害を抱えてしまうのも現実です。

これらの課題を、一挙に解決するために、1988年に誕生したのが、外断熱と二重通気を組み合わせ、気密性と通気性という本来相反する機能を合わせ持つ「ソーラーサーキットの家」ということをご理解いただきたいと思います。










 

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