内断熱の気密や断熱施工の難しさについて、少し説明したいと思います。
内断熱工法の場合、内部結露対策として、壁体内に室内の水蒸気が侵入しないように、室内側に防湿フイルムを張り、防湿層を完全な形で施工しなければなりません。
しかし、住宅には配管や配線・コンセントや照明・床と壁・壁と天井などの構造躯体の取り合い部が多数あり、こうした部分の施工には高い技術と丁寧な施工にくわえ、厳しい現場の管理も求められますが、検査の義務化もない防湿工事は、工期やコストが優先されがちな、現場にて対応するのは非常に困難です。
こうした事情もあって、改正された省エネ基準では、気密基準が削除され、気密測定をするメーカーが激減したという現実をご理解いただきたいと思います。
しかし、気密を疎かにした省エネ住宅は、いくら断熱だけを強化しても意味はなく、性能を発揮しないばかりか、将来、内部結露によって、住む人の健康や建物の耐久性までも損なう危険性があるという認識が必要です。
さらに、気密同様に、完全な施工が難しいのが断熱工事となります。
繊維系の断熱材を充填する場合、隙間なく充填しなければならないのは当然ですが、壁体内には柱や間柱、筋違いといった構造材に加え、ボルトや金物・窓など断熱材が途切れる部分が多数存在し、これらの部分を丁寧にカットし隙間なく充填するのはとても難しいのです。
特に注意が必要なのは、防湿フィルムを張らなくてもOKとされ、現在も多くのメーカーで採用している高性能グラスウールという、袋つめされた断熱材を利用する場合で、気密も取れずに断熱施工がデタラメで隙間だらけの現場も少なくありません。
このように、現場では、無数のカットが必要となり本来は、カットした小口から水蒸気が侵入しないようテープ処理をした上で、充填するのが正式な施工法ですが、無造作に詰め込んでいる現場が多く見受けられます。
こうした家を、高気密・高断熱というのは誤りで、長年、高気密・高断熱の家づくりに取り組んでいる私達にとっては、非常に腹立たしくもあり、少し言い過ぎかもしれませんが、詐欺に近い行為に思えてなりません。
ただ、現場で作業する職人さんは、決して手抜きでこうした施工をするというのではなく、単純にこれまでどうりのやり方で施工しているだけに過ぎないといった何とも悩ましい側面もあるのです。
本来は、職人自身が、結露の仕組みやその危険性を理解して、気密や断熱工事に当たらなければならないのですが、そうした認識を持つ職人も少なく、指導・教育しなければいけない、現場監督すら理解していないケースが驚くほど多いのです。
内断熱で採用される繊維系断熱材は、隙間なく施工するのはもちろんのこと、よれたり・つぶれたりしない様に充填しなければ性能値どうりの断熱性は発揮できません。
また湿気や水にも弱いので、雨には絶対にあたらぬように、保管中はもちろん、施工中の雨対策には、十分な注意が必要になってきます。
これらの対策を完全に実践しているハウスメーカーはごくわずかであり、考慮せずに施工しているケースがまだまだ多く見られますので注意が必要です。
特に、建売やローコストを売りにしているパワービルダーの現場は、予算と工期の短縮が最優先され、雨が降ろうとやりが降ろうと基本的にはお構いなしですので要注意です。
最近では、こうした問題を解消する為に、壁の中に隙間なく断熱材を充填出来るとして、ロックウールやセルロースファイバー・ウレタン等の断熱材を現場にて吹付施工するメーカーも大分増えてきましたが、構造用金物などの熱橋部分での結露を抑えるための断熱補強を履行している業者はごく僅かです。
接合金物の熱橋対策についてはこちらをご覧ください。
考えなくていけないのが、こうした目に見えない部分での不具合は、湿気や結露によって徐々に断熱材や構造材の劣化を招くことで、自ずと、耐震性や断熱性能とともに耐久性も低下してしまうのです。
こうした問題は、内断熱に限ったことではなく、外断熱でも同様の問題ですが、家づくりには、気密と断熱の施工精度の高い業者の選定が、非常に重要になるということをご理解いただければ幸いです。
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