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藤さんという老人が近所に住んでいた。
痴呆症の始まった奥さんを施設に入れて、
ちびちゃんというポメラニアンと一緒にいた。
ちびちゃんにも老衰が始まっていて、もう目が見えなかった。
「ちびを連れて施設に入るわけには行かないので」
と、犬の散歩で出会うと言っていた。

12月の初めころ、藤さんの家に売家の看板がでた。
ちびちゃんの最期、
藤さんの行き先を思った。

表札のかけかえられた家の前を通ると
ももとななは、まだちびちゃんの匂いを捜している。


2005.03.29:higetono:count(387):[メモ/やれやれ]
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