例えば、ご自身の将来が不安で転職の相談に来た際、担当した転職エージェントから
「将来なんてわからないんだから、なるようになりますよ」
なんて言われたらどうでしょうか?
「ふざけるな!真面目に考えてくれよ!」
というのが正直な気持ちかもしれません。
私たちからいきなり「なるようになりますよ」なんてことを言うことはまずありませんが、しかし、私たちと共に転職活動で成功されている人の多くを見ていますと、ある意味「なるようになる」というスタンスで転職活動に取り組み、入社後活躍される方も「なるようになる」という気持ちで前向きに行動されている人が、新しい会社でも高く評価されていらっしゃるように見受けます。
「なるようになる」は、無責任な言葉のように受け取られてしまうかもしれませんが、不確実な時代を生きていくための強い信念と行動力の源になっていくのではないかと思うのです。
そこで今回は、転職活動および入社後の定着がうまくいっていらっしゃる人の特徴を、「なるようになる」の観点を持つキャリア理論の視点からまとめてみました。
「ケ・セラ・セラ」と「プランドハプンスタンスセオリー」
When I was just a little girl
I asked my mother,
what will I be
Will I be pretty,
will I be rich
Here’s what she said to me.
Que Sera, Sera,
Whatever will be, will be
The future’s not ours, to see
Que Sera, Sera
What will be, will be
「ケ・セラ・セラ 未来はわからない なるようになるのよ」
軽やかなリズムで歌い上げるこの曲は、多くの人に愛されて歌い継がれてきました。
この歌のようなキャリアデザインの考え方が実はあります。
「プランドハプンスタンスセオリー(計画された偶発性理論)」というものです。
「キャリアの8割は予想もしない偶然の出来事で形成される」とし、その予期せずに起きる偶然の出来事をただ待つのではなく、自分で機会を生み出したり、チャンスととらえてより良いキャリアを形成するために力を磨いておこう、という考え方です。
ケ・セラ・セラの歌詞は、おおよそこう訳されています。
「お母さん、私、大人になったら可愛くなってるかしら?お金持ちになれてるかな?」
「大丈夫、なるようになってるでしょうよ。未来はわからないわ。ケ・セラ・セラよ。」
ケ・セラ・セラというのは、どうやら間違った文法のスペイン語表現らしく「気にしないで」などに訳されていることもあるようですが、言葉のノリというか、呪文のように考えておく方が、私にとってはしっくりきます。
誤解を恐れずに、ざっくり私なりの理解で表現するなら、ケ・セラ・セラってなんだ?ということを捕捉するのが、「プランドハプンスタンスセオリー」と言えるんじゃないかと思うのです。
プランドハプンスタンスセオリーでは、予期せぬ偶然の出来事を前向きに捉えるだけでなく、自分で積極的に偶然の出来事を生み出し、より良いキャリア形成に生かしていく力を備えておくべきと説きます。
その、より良いキャリア形成に必要なのが「好奇心・持続性・楽観性・柔軟性・冒険心」の5つの力だといっています。
転職を成功させる5つの力
転職は、最初から計画的に予定している方は少ないですよね。
入社時には思いも寄らない「こんなはずじゃなかった」が起きたから転職を考え始めるという方がほとんででしょう。
そういう意味では、転職をするかどうかの岐路も、予期せずに起きる出来事の一つと言えます。
予期せずに起きた転職の場面を、より良いキャリア形成に導く行動や態度を、プランドハプンスタンスセオリーに基づいて具体化してみました。
1)好奇心:たえず新しい学習の機会を模索し続けること。
面白そうな仕事はないだろうか、話だけでも聞いてみようか、色々な企業をあれこれ調べたり、職場見学の機会があればあれやこれやと積極的に質問する。
2)持続性:失敗に屈せず、努力し続けること。
思うような求人情報や企業に出会えなくても、情報収集を欠かさない。
筆記試験や面接で上手くいかなくても、くよくよせず次に視線を向けられる。
3)楽観性:新しい機会は必ず実現する、可能になるとポジティブに考えること。
なかなか縁が繋がらなくても、次のチャンスが来る、もっと自分に合う企業があるはずだと思って前向きに過ごす。
4)柔軟性:こだわりを捨て、信念、概念、態度、行動を変えること
自分にはこの仕事しか向いていない、この業種はなんかイメージが良くない、などと思い込まないで、幅広く職種や業種を考えてみる。
5)冒険心:結果が不確実でも、リスクを取って行動を起こすこと
可能性がありそうな企業に応募してみる。求人が出てなくても企業にアプローチしてみる。
やや強引なところもあるかもしれませんが、こうして書き出してみると、転職活動だけに限らず、どの職場でもより前向きに意欲的に働くために必要な要素だなと改めて思います。
不確実な世の中だからこそプランドハプンスタンスセオリー
転職相談にいらっしゃる方は、「安定性」をキーワードにして企業探しをされる方も少なくありません。
しかし、どの会社であってもはっきり言えることは、5年先10年先も絶対に安定しているかはわからない、ということです。
どれだけしっかりした経営計画を立ていても、外との関係でその通りに進むとは限りません。
自分ではどうしようもないことによって計画が頓挫することは多々ありますよね。家族旅行の予約をしていても、自分以外の家族の病気によってキャンセルになることだってあるでしょう。
世界情勢や経済動向も同じようなもので、先行きを見通すのはなおさら複雑で難しい世の中です。
計画を立ててまっしぐらに向かっていく考え方よりも、プランドハプンスタンスセオリーに則った考え方の方がフィットする場面も多いのではないでしょうか。
「私の転職活動は上手くいくでしょうか?将来、生き生きと働いていられるでしょうか?」
「大丈夫、なるようになりますよ。未来はわからないですが、ケ・セラ・セラ、プランドハプンスタンスセオリーを思い出して、前向きに取り組んでいきましょう。」
不確実で不安の多い今の世の中、転職を考えるきっかけは、会社の業績悪化や待遇の問題、人間関係の問題などネガティブな要因も少なくありません。
苦しいご決断を迫られることもあるかもしれませんが、そのタイミングを新しい人生を切り開くチャンスと捉えて、プランドハプンスタンスセオリーに基づいて、時には「ケ・セラ・セラ」と一緒に歌うような気持ちで、ポジティブに前向きに転職活動を進められるようにサポートするのも、私たちエージェントの務めだと思うのです。
ドリスデイさんが亡くなる、それより少し前の日本時間5月1日、プランドハプンスタンスセオリーの提唱者であるクルンボルツ博士がお亡くなりになったとのこと。
素晴らしい考えを広めてくださった2人の先人たちに感謝しながら、日々学び、前向きに過ごしていこうと思います。
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