355 『日本の聖域 ザ・タブー』

  • 355 『日本の聖域 ザ・タブー』

編者:「選択」編集部

(新潮文庫 平成28年11月1日 発行)

 

聖域(サンクチュアリ):〔犯してはならないとされる〕神聖な地域(区域)   ・・・新明解国語辞典

 ということからしても、タイトルは支障のないような表現になっているものの、「ザ・タブー」となればまた違った意味を持たせていることは明らか。神聖なものとして忌避する、というよりはある一定の社会における禁句であったりする。

 そして、そこに本当に神聖性があるのかどうかといこと。

 この本の原題は『日本の聖域 この国を蝕むタブー』である。

 私たちがメディアで知ることは少なくはない。けれども、その大手メディアが伝えないことが、それもとても大切なことが多いとすれば、私たちは何も知らないのと同じか、あるいは自分に迫っている危険を認識しないままで日々過ごしていることになる。

 最近、この本の帯に出ている電通などは事件が発覚し、今まで出なかった事柄がニュースで出てきて、私たちも知ることとなった。東京オリンピックの問題についても、かなりもやもやした状態で、本当にちゃんとできるのか、という思いにもさせられる。 天皇陛下の生前退位問題もだいぶ明らかなカタチで報道されてきている。

 東北のこの地に住んでいて気になるのは、東日本大震災で事故が起きた原発に関わることだろう。数十年前から心配する向きはあったものの、「原発は安全で無害」というふうに思い込まされていたことが、全く意味をなさないことが、震災以降やっと判ったのだ。 原発に近いところでもその危険性を訴える人はもちろんいた。けれども、政策として、自治体などへの交付金ばらまき政策やら様々な方法で、安全神話づけにしてきた。事故が起きて初めて人間の出来ることの無力さというものに愕然とさせられ、恐怖を感じた。

 いたずらに恐怖を煽ってはならないことは判るが、真実を伝えないというのも罪が重いと思う。今、原発処理の中で何が起きているのか、一般のメディアからは全く伝わってこない(と同じ)。あまつさえ、アンダーコントロールにあると言い、世界的なスポーツの祭典をひじょうに近い場所で開催するということになってしまった。

 そういった意味で、マスメディアでは伝わってこないことを知り、聖域と言われるていることについて知り、話すことをしていかなければならないと感じた。

 

 

2017.03.03:dentakuji:[お寺の本棚]

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