伊達雅彦:著 (新潮文庫 2013年9月1日発行)
本の帯に「本なんか もう見たくない 本が好きで書店員になったのに・・・」とある。
正直に言うと、本が好きな私は(も) 本に関わって仕事ができて、そんなに大変そうでもないように見える本屋勤めをしてみたいものだ、そう思ったことがある。
友人にも書店員勤めをしている男がいて、週に何回と通って本や雑誌を購入したりしなかったり。
地方としては、まぁそれほど小さい本屋ではないけれど、大きなチェーンでもない。
自分ができないものだから、大学生になった甥をバイト先として紹介したぐらい(実際約2年以上働いていた)。
そんなに大変なものだと感じていたら紹介などしなかっただろう。
著者はやはり本が好きで、大学生のアルバイトから就職し店長を務めた人。
チェーン店でそこそこの広さの売り場があり、売上もある書店のようである。
主に、店長になってからの本屋の日常、過酷な仕事ぶりについて書いている。
書店員についての私の誤解。
本屋さんは、思いのほか肉体労働であること。
(考えてみれば、本は重いし、毎日毎日雑誌などの新刊が押し寄せて来るんだね)
書店員の給料が安いこと。
(高給取りとは思ってはいないものの、普通にもらっているんじゃないかと・・・。いくらぐらいなの
だろう)
店長が本部にお伺いをたてなければならないうこと。
(ある程度はあると思ったが、けっこう窮屈なものだ)
他にもいろいろあるのだけれど、ずいぶんサービス残業もあるものだ。
話はちょっと変わって、自分のこと。
かつて、公民館職員(コミセン職員)という仕事を約20年ぐらいしていた。
一年一年契約更新する不安定な雇用形態でありながら、けっこう仕事が多い。
給料は同年代の地方公務員三分の一というところ。
その割合に、仕事が多い!
というより、一所懸命やればやるほど、仕事が増える。
仕事自体は面白く、やりがいがないわけではない。
けれど、年々仕事の量が増えてゆく。
もう限界!
人と関わっていくことは好きで、仕事がうまくいった時の達成感もある、けれど、それによってまた仕事が増える・・・。
けれど、給料も上がらないし、サービスもきりがなくなる。
書店員 伊達店長と似ていなくもない。
ただし、売上のノルマや、競合店の出店ということがないだけ、精神的には楽。
書店はなんとなく儲かっているような気がしてしまう。
食品のように品物が急速に痛んでダメになるということがないから。(単純)
日常的に万引きと渡り合っていることもわかった。
大型書店の出店により閉店に追い込まれ、その社員を辞め、他の書店に勤めるということもしなかった彼。
本が大好きなのに。
後書きに、現在の著者の様子として、個人的に探している本を探している本人の依頼を受けて、代わって探し出して届けるということをしている、そのようなことを書いている。
本が嫌いになったわけではなく、本と関わっていることに安心した。
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