週刊朝日編集部:編 (朝日文庫 2013年9月30日発行)
「週刊朝日」に連載されていた、作家をはじめとした各界の著名人の、忘れられない一冊についてのエッセイ集。
千字を少し超えたぐらいの短い文章で、本にまつわるエピソードが書かれています。
文章が短い、好きな本の話しだから、どんどん読み進める、とおもったのですが、これが案外そうではないものですね。一人ひとりの文体が次々変わるのって、リズムが狂っちゃうのかもしれません。
作家の車谷長吉さんと高橋順子さんが、それぞれ一冊の本をきっかけに、結婚することになったエピソードはとても興味深い。
私には忘れらられない一冊ってかるかな。
ちょいと考えても思いつかないのですね。
ないわけではないのだけれど、エピソードとしては、「だからなんなのさ」というようなことで、さっぱりふくらんで行かないのです。
各界の著名人のようにはいかないさ、そう言ってしまえば簡単ですけども。
昭和54年3月に高校を卒業し、東京の私立の大学に入った。
地元の国立大学はあっさり落ちて(落ちる以前の問題だったが、ここは省略)、親は無理して出してくれた。
1年時、一般教養のキャンパスは東京ではなく埼玉県の松伏町というところにあった。
江戸川を渡って向こうにゆくと、キッコーマンなどの醤油の町野田市だった。
松伏には何もないのでアルバイトや買い物は野田に行っていた。
野田にある大手スーパーマーケットでのアルバイトにも慣れ、夏休みが過ぎ、地元の雪国と違う長い秋を過ごしていたある日、町のちょっと大きな本屋で立ち読みをしていた。書店名も覚えていない。
その店のある棚で、一冊の本を見つけた。
『さらば国分寺書店のオババ』というみょうちくりんなタイトルで、湯村輝彦がカバーイラストを書いて、いしいひさいち が本文カットを書いている。
著者は 椎名 誠。 「本の雑誌」編集長とあるけどしらない。
思わず買って家に帰って読むと、めっぽう面白い。
昭和54年に第一刷発行のこの本以降、どんどんと椎名の本は出はじめ、その「本の雑誌」も読まずにはおれなくなった。
それから、椎名誠とその仲間、本の雑誌系の本に引き込まれてしまったのだ。
そのあげく、似たようなミニコミ誌作りに参加することになるという、考えてみれば忘れられない一冊なのだった。
なんだ、よく思い出してみれば、あるんだね、そういう本。
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