病むことと老いること
関川夏央:著 (小学館 1992年5月20日発行)
およそ20年前に「エキスパートナース」という専門誌に掲載されたルポをまとめたドキュメント。
生老病死 を四苦としてとらえたのはお釈迦さまとされていますが、生きている以上、老いること死ぬことは必定であり、おおかたの人は病の苦しみも経験するものでありましょう。
そうした逃れられない運命である以上、やはり病院と付き合うことになる。
ならば、どんな病院に行き、どう関わってつきあってゆけば良いのか、ということを、著者は現場に行き、目の当たりにしたこと、感じたことを、率直に述べているようである。
普通、若い頃にはあまり病院とのなじみは薄いものだ。
やがて、加齢や老いとともに付き合いが深くなる。
私の場合は、ちょっと違うかもしれない。
もともと丈夫でない子どもだったのだどうかはわからないのだが、小学2年生時に小児リウマチを発症し入院。これを皮切りに、じんう炎も含めて小学5年生までに5度の入院をして、在宅の療養期間を含めると、まる1年分ぐらい学校を休んでいる。
その後、病み抜けたように健康になり、以後20代~30代 40歳前まではほとんど病院とのお付き合いがなくなった。
しかし、42歳になるあたりから不調感を感じるようになり、病院へ行き、その後10年余り個人医院で定期的な受診と投薬を受けている。
そして、これから加齢とともに病院との付き合いはもっと多くなるに違いない。
この本の主題である、良い病院とはなにか?なのである。
著者は、「心臓外科」「ガン医療」「脳神経外科」「老人病棟」をとりあげ、その当時としては先端的な取り組みをしている病院の例をあげている。
さらに、「特別養護老人ホーム」についても書いている。
病院には、医者がいて、看護師さんがいて、療法士や技師などの専門家がいて、事務職がいて、食事を作るなどの様々な部門があり、総合して病院であるのだと思う。
優秀な医師がいても、それだけではいい病院とは言えないのだろう。
そして、経営という部門があり、病院としての経営理念が現場で具現化されて、そして、看護師をはじめとした多くの人が交代し分担しながら仕事をする。そこに不統一があってはならない。
なかなかたいへんなものである。
専門的な医師の技術は高度化しており、移植手術も含めて、多くの命が救われているに違いない。
それとおなじように、死を受け入れざるを得ない時だって、間違いなくある。
現代では、おおかたの人は病院で死を迎える。
そう思った時に、病院の医療技術の高さと、職員の能力の高さとともに求められるのは、そこに働く人の人間的なチカラと言ったらよいのだろうか・・・。
患者と向き合う姿勢みたいなものが問われるのかもしれないと感じる。
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