それにしても、この急な渓谷にぎっしりと連なるように旅館が立ち並ぶ土湯の温泉街は、朝陽の中開け放った窓から眺めると、すでに営業していないと思われる旅館やホテルも見てとれる。
浴衣を着替えて外に出て、まだ明けたばかりの温泉街を散歩してみる。
昨日のお酒がまだ残っている。
良い酒飲みを相手に気分よく呑んでしまった。
雪ではないが、小さな氷の破片のようなものがキラキラと降って来る。
昨日よりもキーンと空気が冷たい。
温泉地は、福島県に限らず、景気が悪くなってからはしばらく、廃業する大きな観光旅館もあり、いずこも厳しい状態であっただろう。
そこに、大震災と原発事故の風評被害に追い打ちをかけられた福島県の温泉地はたいへんな打撃であることは間違いない。
しかしこうして、頑張って継続している。
何も出来ぬが、いつの日か、多くの人が再び安心して暮らし、普通に温泉で楽しむことができる日が来ることを、祈るばかりである。

看板猫の「KABU(かぶ)」がフロントのカウンター前にあらわれた。
チェックアウトを待っている、私たちの前で、熱心に顔を洗い(なめ)、ゴロンと転がって愛嬌をふりまいて、またカウンターの中へ戻って行った。
なかなか出と退きを心得ている心憎いやつではないか。
このお宿を守っておくれよ。(^^

栗子峠を越えて、お昼には帰宅。
峠の栗子スキー場のゲレンデと、おおよそその高さのところにうっすらと雪が積もっていた。
さすがに路面にゆきはないものの、青空の福島市内から米沢側に来たら、やや曇天。
翌日は暦の上では小雪なのだが、夕刻には、だんだんお天気回復してきた。
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