内澤旬子:著(朝日新聞出版 2010年12月)
イラストを描きルポするライターであろうと思われるこの著者のエッセイ。
『東方見便録』(斉藤政喜と共著)、『センセイの書斎 イラストルポ「本」のある仕事場』、『世界屠畜紀行』などを過去に読んだことがある。
取材する興味の対象が、エグいという感があり、面白い人だなぁという印象を持っている。
そういう眼で観ると、この作品はエッセイというよりも、自分(の病気)に興味の対象をあてたルポという感じがしてくる。
そのぐらい、乳がんという病気を得てしまったにもかかわらず、客観的な視点を持って自分の身体を観察できる人なのではないか。
それでいて、自分の生活に不安を抱きあたふたするという可笑しさも持ち合わせている。
このエッセイは、ただの闘病記ではない。
我がことを振り返ってみる。
小学校の就学前から小学5年生まで、病弱で入退院を何度もくり返し、自宅療養を含め学校に行かなかった(行けなかった)期間はけっこうな期間であった。
合計すると1年間分ぐらいあったのではないだろうか。
小児リウマチと腎盂炎という病気であったそうだ。
そのくせ、自我は強く、気持ちだけは負けたくないという子どもで、無理をしてはがおってしまっていた。
それから病み抜けたという表現がぴたりとくるように、中学生からそれ以降はとても頑健な少年になり20代から30代は病気知らずで駆け抜けてしまった。
そして40代、いわゆる厄年に生活習慣病というような病(と言えるかどうか)になり、それ以降は定期的にお医者さんに通って高血圧と高脂血症とお付き合いしているという状態だ。
著者の病気は乳がん。
「…顰蹙を買うことを承知で言わせていただくと、人間なんてどうせ死ぬし、ほっとけばいつか病気に罹る可能性の方がずっと高い生き物なのに、なぜみんな致死性の病気のことになると深刻になり、治りたがり、感動したがり、その体験談を読みたがるのかが自分にはよくわからないのだ。そんな体験談なぞ、癌になる前から読みたいと思ったこともない。…」
この文章だけを取り出してみると、不遜な感じがしないわけでない。
しかし、著者自身が子どもの頃から感じていた、アトピー性皮膚炎や腰痛、身体に感じる不調感とかと比べると、治療を行えばちゃんと元の生活に戻ることができる病気だというこという認識があること。
治療とその時期に出会ったヨガを続けることで、不思議なことに発病前より身体の感覚的に健康と感じるようになったこと。
そして、その病気に関わり、病気や医師、そこで出会った人たちとの関わりについて書かれていることは、病という一点だけを見てしまうと見逃してしまう様々なこと、男の私には(たぶん)わからないことが書かれているように思う。
上の引用した部分の文章は半分ぐらい理解できるし、半分ぐらいはよくわからないことがある。
それは女性と男性の違いもあろうかと思うし、今の自分の境遇というものも多分にあるに違いない。
乳がんの第1ステージとは言え、私だったら、別の部位の初期のがんと言われたらやはり相当ショックを受けてしまうかもしれない。
と同じぐらい、子どもの頃、あんなに身体が弱くていたのだから、そのぐらいのこと(重い病気になること)はあっても不思議ではないような気はしている。
それに、50代になったら、いつどんな病気になっても不思議ではないような年齢的な気分みたいなものがある、というのが正直なところである。
テレビの「情熱大陸」に出て、ちょうど一箱古本市に私の仲間たちが出店して著者と出会っていた頃、そのような状態にあったとは、信じられない思いがする。
知的な美しい方だなぁと、書いているものとのギャップを少々感じたものだ。
医者とのコミュニケーションがうまく取れなくて、相手の言葉にマジギレしてしまったというくだりがある。
病に向き合う時、たぶん、諦めていいことと諦めちゃいけないことがあって、病を得てしまったことを受け入れて、それに向き合っていく時に自分の周辺にある有象無象をちゃんと見ている。
不謹慎だと思いながら、共感もしつつ面白く読んでしまったのだ。
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2016.12.15 (あらあら)たぶんそうかもしれません
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2016.12.15 (中澤 直美)お大事に(^_-)
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2015.09.04 (乳井 恵子)お返事ありがとうございます!
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2015.09.04 (荒澤教真)秋の例祭
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2015.09.04 (乳井)秋のご祈祷
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