中下大樹 真宗大谷派僧侶、「寺ネット・サンガ」代表 (朝日新聞社 2011年7月)
キャプションに「2000人の死を見た僧侶が伝える30の言葉」とある。
著者は思うところあって真宗大谷派の僧侶となり、仏教系ホスピス(緩和ケア病棟)に勤務して末期がん患者数百人の看取りに従事。
退職後は東京に戻り、超宗派寺院ネットワーク「寺ネット・サンガ」を設立している。
ホスピスでは、はじめは「坊さんがこんなところで…」とか「縁起でもない…」というような雰囲気や実際に言葉で言われる。
そう、自分も僧衣を着て病院や老人ホームなどを訪れると、言葉では言われないものの、「誰か亡くなったのか?!」みたいな雰囲気を感じる。
著者はそんな時間を過ごしつつ、少しづつ入所者と心が通じ合い、感謝の言葉をかけられたり、あるいはその死にゆく姿から死にゆくこと生きることについて考えるようになる。
さらに、都会で「寺ネット・サンガ」の活動をするなかで、いかに、孤立して生きている人・死んでゆく人が多いかという現実に直面する。
NHKで「無縁社会」という特集を数年前から続けている。
無縁というよりは、それなりの関わりを持って行きながらも、「孤立」するというほうがしっくりくるような感がある。
都会という大人口社会の中にあって何故孤立し、誰にも知られることなく生きて、死にゆくのだろうか。
また、今年 3月11日に発生した東日本大震災の現場に入り、多くの被災した人、生き残った人、犠牲になった人と関わってメッセージを発している。
著者はこんな言葉を発している。
「静かに、ゆっくり悲しむことで やさしくなれる。生きる力がわいてくる。」
がんばれ!がんばろう!はそれからでもいいじゃないか。
起きたこと(人の死や苦しみ)にちゃんと向き合い、悲しみや苦しみという時間を過ごすことによって、やがて本当に立ち上がろうという強いチカラになる。
目をそらさず「悲しむ力」こそ今必要。
そうなのかもしれぬ。
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