「価値創造のための戦略的交渉力」(田村次朗;慶應義塾大学法学部教授)と言う講演を聴きましたので報告します。
交渉学とは問題解決のためのスキルを言う。交渉とは、相互の異なった問題を同時に解決するための合意点を創出するためのプロセスである。
交渉学には、論理・準備・協働の三つのポイントがある。
1.論理 … 交渉は論理的に成り立つことが重要。雰囲気や感情や根拠のない期待に惑わされてはならない。
2.準備 … なによりも準備が大事。ただし時間を掛けすぎても駄目。状況把握→ミッション理解→目標の設定→代替案の構築→柔軟な選択肢の用意と言う5ステップを理解しておく。
3.協働 … 双方の満足を、客観的、持続的、公益的に満たす解決策づくりのための協働作業と認識する。これを「賢明な合意」と言う。近江商人が言う「三方良し」も同じ。
交渉にあたって、気をつけるべき5つの態度がある。
1.「落としどころ」探しをあせらない。
2.「合意をしない」と言う選択肢もあることを忘れない。合意しない場合の代替案(BATNA;Best Alternative to a Negotiated Agreement)は、交渉にあたって絶対に必要な要素。
3.負の感情を増殖しない。見せかけの強気や戦闘モードは相手に伝染する。
4.安易な約束はリスクになる。
5.交渉はテクニックではない。大きなミッションや目標をベースに戦略を立てる。
よりよい交渉戦略を立てるために4つの着眼点がある。
1.ミッションからスタートする。ミッションとは、何が本質的な問題なのかを吟味し考え抜くことから始まる。
2.リスクをマネジメントする。メリットと同時にリスクの存在を共有化し、どうすれば小さくできるかを話題にする。
3.攻撃的に臨んで来る交渉相手を恐れない。逃げず戦わずが原則。
4.アジェンダ管理が鉄則。時間のマネジメント(デッドラインに気をつける)、内容のマネジメント(議事録をとる)、協議事項のマネジメント(何を交渉するか)をする。
交渉とは問題解決であると言う視点が面白い。
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下流社会の実像
三浦 展(みうらあつし カルチャースタディーズ研究所主宰、消費社会研究家)の「下流社会の実像」と言う講演を聴いてきましたので報告します。
30歳前後の階層意識は40%が下流とのことである。未婚男性の7割が下流意識を持ち、非婚化・少子化にも色濃く影響を与えている。女性の階層意識も低下しており、非正規雇用による経済的問題や所属意識が低下していることが、安定と安心感を阻害し下流意識に結びついている。
雇用対策が少子化対策の特効薬だと考えている。結婚率(y軸)と年収(x軸)をグラフ化すると、見事なS字カーブを描く。年収500万円が結婚できるか否かのポイントである。年収700万以上は数%しかないが、女性の要求は7割を超す。下流化する人間の特徴は、体力・精神力がなく、就職活動が苦痛(コミュニケーションが苦手)であるとの共通点がある。
女性の生き方は多様化したが、幸福は多様化していない。女性の所得格差は拡大している。階層意識が高い女性は多くの商品の価値を決めている。結婚すれば階層意識を上げることができる。既婚で正社員は“所属感”があるが、未婚で派遣社員には“所属感”はない。ステータスとして「ホームパーティが上流の証」になってきている。
階層意識が下流の人には、食育が必要である。米国にホワイトトラッシュと呼ばれる人達がいるが、総じて下流の人達は食べることに関心がない。正社員と非正規社員では読む雑誌も異なる。上流の人達はCanCanや日経ビジネスを好み、下流の人達はSEDAなどストリート系の雑誌を好む。上流の人達は仕事にもファッションにも意欲がある。
団塊の世代に転じると、男性は上流(15%)中流(38%)下流(46%)、女性は上流(19%)中流(47%)下流(34%)の階層意識である。団塊の世代の半数は年金が待ち遠しく、65歳まで働くつもりでいる。
階層意識が上流であることと、いわゆる上流階級・富裕層の概念は異なる。階層意識が下流であると、暴力化や反社会的行動(犯罪)の発生も懸念される。職業体験教育は、経済的自立の必要性の観点からも必要と考える。少子化対策は、安心と安定を保証する政策であるべきで、終身雇用は日本のセーフティネットと言う民主党の主張は千葉補選で支持された。自由が増えれば不安も増える。下流社会の犠牲者とも言える若者が自民党を支持するのは、自分たちの現状を良く認識出来ていないと思われる。
30歳前後の階層意識は40%が下流とのことである。未婚男性の7割が下流意識を持ち、非婚化・少子化にも色濃く影響を与えている。女性の階層意識も低下しており、非正規雇用による経済的問題や所属意識が低下していることが、安定と安心感を阻害し下流意識に結びついている。
雇用対策が少子化対策の特効薬だと考えている。結婚率(y軸)と年収(x軸)をグラフ化すると、見事なS字カーブを描く。年収500万円が結婚できるか否かのポイントである。年収700万以上は数%しかないが、女性の要求は7割を超す。下流化する人間の特徴は、体力・精神力がなく、就職活動が苦痛(コミュニケーションが苦手)であるとの共通点がある。
女性の生き方は多様化したが、幸福は多様化していない。女性の所得格差は拡大している。階層意識が高い女性は多くの商品の価値を決めている。結婚すれば階層意識を上げることができる。既婚で正社員は“所属感”があるが、未婚で派遣社員には“所属感”はない。ステータスとして「ホームパーティが上流の証」になってきている。
階層意識が下流の人には、食育が必要である。米国にホワイトトラッシュと呼ばれる人達がいるが、総じて下流の人達は食べることに関心がない。正社員と非正規社員では読む雑誌も異なる。上流の人達はCanCanや日経ビジネスを好み、下流の人達はSEDAなどストリート系の雑誌を好む。上流の人達は仕事にもファッションにも意欲がある。
団塊の世代に転じると、男性は上流(15%)中流(38%)下流(46%)、女性は上流(19%)中流(47%)下流(34%)の階層意識である。団塊の世代の半数は年金が待ち遠しく、65歳まで働くつもりでいる。
階層意識が上流であることと、いわゆる上流階級・富裕層の概念は異なる。階層意識が下流であると、暴力化や反社会的行動(犯罪)の発生も懸念される。職業体験教育は、経済的自立の必要性の観点からも必要と考える。少子化対策は、安心と安定を保証する政策であるべきで、終身雇用は日本のセーフティネットと言う民主党の主張は千葉補選で支持された。自由が増えれば不安も増える。下流社会の犠牲者とも言える若者が自民党を支持するのは、自分たちの現状を良く認識出来ていないと思われる。
もう一つの知の在り方
玄侑宗久(げんゆう そうきゅう 作家・僧侶)の「もう一つの知の在り方」と言う講演を聴きましたので報告します。
日本人は龍の姿、特に龍に乗って空を飛ぶ姿に、特別な思いを抱いてきた。「龍の背に乗る」というイメージが意味するものを仏教の教えに基づき教えていただいた。
主題の「もう一つの知」とは、対象を細かい要素に分解したり、原因-結果の因果律で理解しようとする「分析知」に対峙する概念である。ものごとの全体性をそのままに受け止め、身体や感覚で吸収する「身体知」のようなものである。例えば、自転車の乗り方をマニュアルに則って教えることはしない。とにかく乗ってみて、身体の重心をどこにおけばいいのかを感覚的につかみ取って行く。「もう一つの知」は、それに近いものである。
論理や科学に代表される「分析知」は、人間の大脳皮質が司る機能である。人間は新しい体験や情報に出会うと、脳に格納されている既存知識の枠組みを使って新しい情報を分析・理解しようとする。現代社会は「分析知」に偏りすぎていること、ことに全ての事象を因果律で片付けようとする「因果律に毒された状態」であることに強い危機感を抱いている。
「問題には必ず答えがあり、それはひとつに集約される」
「問題には必ずその原因となる根源要因が存在する」
と言う発想は、ともすれば犯人捜しやスケープゴートに繋がる危険性があり、いじめ問題の底流にも関連すると考える。
仏教の教えでは、「すべてのものに実体がない、自性=私がない」と説いている。色も、温度も、時間も、実体があるわけではなく、大脳皮質が既存知識に基づいて実体があるかのように理解しているだけ。関係性の中で生まれ、関係性がなくなれば消えていく、常に変わり続ける無常のものである。
「命」とは、全体性を動かす力を意味するものである。古代の日本人は、「いのち」が全体性そのもので、「もう一つの知」でなければ受け止めることが出来ないと考えてきた。
宿命とは、命を変えられないものとして認識する意味。
運命とは、自分が関わることで命は変わるとする意味。
立命とは、命に乗っかろうという意味。
「いのち」を実体のある客観的な対象物としてみるのでなく、どのように受け止めるか、その受け止め方こそが仏教の大きなテーマである。
東洋では、龍を「よく分からないもの、先の見えないものを象徴する乗り物」として認識してきた。観音様が「龍を乗りこなす」という行為に、「いのち」に代表される不可思議で、制御できない大きな全体性と上手く付き合うイメージが重ね合わされている。龍を、神や仏の化身とみて、不可思議なものと上手く付き合うパートナーと考える。
龍を乗りこなす観音様が唱えるのが「般若心経」である。般若とはサンスクリット語が語源で、「もう一つの知」を表す言葉である。悩みや問題に直面した時に、感覚からの知覚=分析知につなげずに、そのままの状態を積極的に続けようとするのが仏教の「行」にあたり、「般若心経」を唱えることは「行」に他ならない。「般若心経」を唱えることで、意識=私を消し去り、全体性をそのままで受け止める「瞑想知」の状態になることが「般若心経」の本質である。
「分析知」の限界は、さまざまな世界で言及されている。自然科学の分野では「脱・要素還元主義」という言葉が言われている。「複雑系」という概念は、「もう一つの知」にあてはまる。経営やビジネスの世界でも、経営理念、ブランド、キャリアなど、要素還元型でなく全体性でなければ対応できない問題が数多くある。論理的に分析することを否定するものではないが、論理や理屈を考えても答えの出ない問題があることも事実である。
「キャリア」や「熟練の技」などを考える場合には、私たちは「もう一つの知」や身体知で受け止めて考える必要があるのだろう。
日本人は龍の姿、特に龍に乗って空を飛ぶ姿に、特別な思いを抱いてきた。「龍の背に乗る」というイメージが意味するものを仏教の教えに基づき教えていただいた。
主題の「もう一つの知」とは、対象を細かい要素に分解したり、原因-結果の因果律で理解しようとする「分析知」に対峙する概念である。ものごとの全体性をそのままに受け止め、身体や感覚で吸収する「身体知」のようなものである。例えば、自転車の乗り方をマニュアルに則って教えることはしない。とにかく乗ってみて、身体の重心をどこにおけばいいのかを感覚的につかみ取って行く。「もう一つの知」は、それに近いものである。
論理や科学に代表される「分析知」は、人間の大脳皮質が司る機能である。人間は新しい体験や情報に出会うと、脳に格納されている既存知識の枠組みを使って新しい情報を分析・理解しようとする。現代社会は「分析知」に偏りすぎていること、ことに全ての事象を因果律で片付けようとする「因果律に毒された状態」であることに強い危機感を抱いている。
「問題には必ず答えがあり、それはひとつに集約される」
「問題には必ずその原因となる根源要因が存在する」
と言う発想は、ともすれば犯人捜しやスケープゴートに繋がる危険性があり、いじめ問題の底流にも関連すると考える。
仏教の教えでは、「すべてのものに実体がない、自性=私がない」と説いている。色も、温度も、時間も、実体があるわけではなく、大脳皮質が既存知識に基づいて実体があるかのように理解しているだけ。関係性の中で生まれ、関係性がなくなれば消えていく、常に変わり続ける無常のものである。
「命」とは、全体性を動かす力を意味するものである。古代の日本人は、「いのち」が全体性そのもので、「もう一つの知」でなければ受け止めることが出来ないと考えてきた。
宿命とは、命を変えられないものとして認識する意味。
運命とは、自分が関わることで命は変わるとする意味。
立命とは、命に乗っかろうという意味。
「いのち」を実体のある客観的な対象物としてみるのでなく、どのように受け止めるか、その受け止め方こそが仏教の大きなテーマである。
東洋では、龍を「よく分からないもの、先の見えないものを象徴する乗り物」として認識してきた。観音様が「龍を乗りこなす」という行為に、「いのち」に代表される不可思議で、制御できない大きな全体性と上手く付き合うイメージが重ね合わされている。龍を、神や仏の化身とみて、不可思議なものと上手く付き合うパートナーと考える。
龍を乗りこなす観音様が唱えるのが「般若心経」である。般若とはサンスクリット語が語源で、「もう一つの知」を表す言葉である。悩みや問題に直面した時に、感覚からの知覚=分析知につなげずに、そのままの状態を積極的に続けようとするのが仏教の「行」にあたり、「般若心経」を唱えることは「行」に他ならない。「般若心経」を唱えることで、意識=私を消し去り、全体性をそのままで受け止める「瞑想知」の状態になることが「般若心経」の本質である。
「分析知」の限界は、さまざまな世界で言及されている。自然科学の分野では「脱・要素還元主義」という言葉が言われている。「複雑系」という概念は、「もう一つの知」にあてはまる。経営やビジネスの世界でも、経営理念、ブランド、キャリアなど、要素還元型でなく全体性でなければ対応できない問題が数多くある。論理的に分析することを否定するものではないが、論理や理屈を考えても答えの出ない問題があることも事実である。
「キャリア」や「熟練の技」などを考える場合には、私たちは「もう一つの知」や身体知で受け止めて考える必要があるのだろう。
戦略としてのダイバーシティ
内永ゆか子(うちながゆかこ 日本IBM㈱取締役専務執行役員)の「戦略としてのダイバーシティ」と言う講演を聴きましたので報告します。
IBMのダイバーシティは、90年代初めにルイス・ガースナーの経営改革によって大きく進展した。それまでのメインフレーム中心からソフト・サービス中心へのビジネスモデル転換が有名だが、組織マネジメントの改革として着手したのがダイバーシティ・マネジメントである。ダイバーシティ・マネジメントとは、女性・高齢者・外国人などの多様な人材を活用する企業戦略である。
ダイバーシティの具体的な取り組みとして、「ウイメンズ・カウンシル」がある。98年当時、女性社員比率は13%、管理職比率は男性の1/8、女性の離職率は男性の2倍であった。これを5年間で、女性社員比率は16%、管理職比率と離職率は男性と同率にまでもってゆく目標を掲げて実現した。
ダイバーシティを阻む三つの理由(女性が早期に辞める理由)がある。
1.将来像がみえないこと
結婚や出産で辞めていくだけでなく、転職やMBA取得のために辞めていく人が多い。このまま仕事をしていても将来の展望が開けない。目指すべきロールモデルがない。と言うのが閉塞感を生む大きな原因になっている。
2.家事と仕事の両立
今もって女性の職場進出の障害として存在している。
3.オールド・ボーイズ・ネットワーク
男性社会が作り上げた「仕事はかくあるべし」という暗黙のコミュニティ文化のことで、さまざまな機会を通じて男性には伝承されるが、女性には伝えられないことに特徴がある。例えば、意見をはっきり明言すること、正論を吐くこと、誤りを指摘することなど、表向きは正しいとされる行為が、「場が読めない」「ひと言多い」「余計なことを言う」と敬遠されてしまう。
対策として、トップ・エグゼプティブのコミットメントによるメンタリング・プログラムを実行した。
1.女性社員のネットワークとロールモデル確立
2.Eワーク、オンデマンドのワークプレース(在宅勤務)
3.信頼できるメンターの存在 とりわけネットワークは重要である。
キャリアアップはしんどくないかとの質問には、管理職はイタキモ(痛いけど気持ち良い)景色が違ってくる、と言っている。
女性活用をダイバーシティ・マネジメント戦略と捉えている点が新鮮に感じられた。
IBMのダイバーシティは、90年代初めにルイス・ガースナーの経営改革によって大きく進展した。それまでのメインフレーム中心からソフト・サービス中心へのビジネスモデル転換が有名だが、組織マネジメントの改革として着手したのがダイバーシティ・マネジメントである。ダイバーシティ・マネジメントとは、女性・高齢者・外国人などの多様な人材を活用する企業戦略である。
ダイバーシティの具体的な取り組みとして、「ウイメンズ・カウンシル」がある。98年当時、女性社員比率は13%、管理職比率は男性の1/8、女性の離職率は男性の2倍であった。これを5年間で、女性社員比率は16%、管理職比率と離職率は男性と同率にまでもってゆく目標を掲げて実現した。
ダイバーシティを阻む三つの理由(女性が早期に辞める理由)がある。
1.将来像がみえないこと
結婚や出産で辞めていくだけでなく、転職やMBA取得のために辞めていく人が多い。このまま仕事をしていても将来の展望が開けない。目指すべきロールモデルがない。と言うのが閉塞感を生む大きな原因になっている。
2.家事と仕事の両立
今もって女性の職場進出の障害として存在している。
3.オールド・ボーイズ・ネットワーク
男性社会が作り上げた「仕事はかくあるべし」という暗黙のコミュニティ文化のことで、さまざまな機会を通じて男性には伝承されるが、女性には伝えられないことに特徴がある。例えば、意見をはっきり明言すること、正論を吐くこと、誤りを指摘することなど、表向きは正しいとされる行為が、「場が読めない」「ひと言多い」「余計なことを言う」と敬遠されてしまう。
対策として、トップ・エグゼプティブのコミットメントによるメンタリング・プログラムを実行した。
1.女性社員のネットワークとロールモデル確立
2.Eワーク、オンデマンドのワークプレース(在宅勤務)
3.信頼できるメンターの存在 とりわけネットワークは重要である。
キャリアアップはしんどくないかとの質問には、管理職はイタキモ(痛いけど気持ち良い)景色が違ってくる、と言っている。
女性活用をダイバーシティ・マネジメント戦略と捉えている点が新鮮に感じられた。
会計情報から経営を読み解く
山根節(やまねたかし 慶応義塾大学教授)の「会計情報から経営を読み解く」と言う講演を聴いてきましたので報告します。
ビジネス・リーダーに必要な能力は情報リテラシーである。第一は情報感度(=状況認知能力;変化に気づくこと)であり、第二は方向性(=問題解決能力)であり、第三は説得(=発信能力;特に重要)である。情報は「情け」と「報せ」からなる。
情報リテラシーの三言語は、母国語である自然言語と、コンピュータの機械言語と、会計言語からなり、経営三言語と言われる。会計は経営活動を総合的にとらえる、経営の写像であり、経営者にとっての地図になる。
経営(マネジメント)とは、経営資源を集め太らせる拡大再生産のループである。期首の貸借対照表(BS)と1年間の儲けの記録である損益計算書(PL)と期末の貸借対照表(BS)で表される。
会計が読めれば世の中が見える。利益額(横軸)と利益率(縦軸)を産業マップに表すと、第一象限は「リーディング産業」でありバイオ・金融業・エンタテインメント・ITが該当する。第二象限は「成熟産業」であり自動車・家電・海運・不動産で、第三象限は「負け組産業」で、第四象限は「ベンチャー・老舗産業」でありネット・ソフト・ブランドが該当する。
新日鉄は、売上高3兆9,063億円、経常利益5,474億円、ROS=14.0%、中国市場・自動車が牽引している。特に中国は2008年北京五輪、2010年上海万博でヒートアップしている。銀行は、コア業務純益は不変だが信用コスト(不良債権比率)が低下して利益を上げている。構造改革途上にあり、メガ金融に勝ち残れるかがポイントである。
消費者金融は、営業貸付金が1.7兆円、営業収益が4,450億円で利益率26%、余裕で儲かる業界であり、利息制限法でも生き残れる。消費者金融トップの武富士のユーザは、30歳以下の若者が60%、女性が40%を占め、年収400万円以下が5割を占める。フリーター(417万人)ニート(85万人)がサラ金から借りて消費を支えている。フリーターは、慶応15%や東大10%もおり、3年以内に社員を辞めるのでフリーターは減らない。また、女性も消費を支えており、主婦のパチンコ依存症やブランド嗜好で個人消費指数は増加し破産件数も高止まりしている。
トヨタは、売上高2兆1,036億円、純利益1,372億円、ROE=14.0%、GMの10倍の時価総額がある。従来から住宅や半導体など多角化は上手くないが、金融事業に展開しつつある。トヨタの次の一手はETCカード、携帯電話とネットワークを通じてトヨタから金を借りる仕組みを構築しつつある。GMがモデルになっている。
ソニーは、エレクトロニクスが売上高5兆1,000億円、営業利益▲300億円、ゲーム・音楽映画が売上高1兆7,000億円、営業利益300億円、金融が売上高7,000億円、営業利益1,900億円で、金融事業が利益源になっている。
キャノンは、事務機が売上高2兆5,000億円、営業利益5,400億円、カメラが売上高8,800億円、営業利益1,700億円、光学機器が売上高3,700億円、営業利益▲1,300億円で、プリンタのサプライ用品(トナーやインクカートリッジ)が利益3,000億円で、端末を安くして顧客を抱え込む戦略が功を奏している。
利益率を縦軸に、素材・部品・加工組立・サービス・コンテンツと言ったバリューチェーンを横軸に取ると、加工組立が最も利益率が低くスマイルカーブと呼ばれる曲線を描く。
NTTドコモは、無線通信サービス粗利益が3兆5,500億円(収入4兆3,000億円、原価7,500億円)端末機器販売の粗損失が6,400億円、販売一般管理費が2兆0,800億円、営業利益が8,300億円である。ここでも、安く端末をばら撒いて顧客を抱え込む戦略を取っている。さらに、「おさいふケータイ」で金融事業に乗り出そうとしている。
ユニクロは、売上原価率52.7%であり、中国でのローコスト生産とブランド(コンテンツ)で儲けている。伊勢丹は売上高7,600億円、営業利益300億円、営業利益率4%であるが、ユニクロは売上高4,500億円、営業利益700億円、営業利益率16%である。
M&A件数は年々増加している。事業再構築のプロであるジャック・ウェルチ氏はCEOに20年在任中、買収企業数1,000件、売却事業数400件であった。1年間に70件、1月間に6件になる。まさに企業が商品になる時代である。キャッシュ・リッチ経営の武田薬品は、現預金・有価証券が1兆8,565億円あり、格好の買収ターゲットになってしまっている。
会計情報を用いることで企業の現実の姿が良く分かると感じられた。
ビジネス・リーダーに必要な能力は情報リテラシーである。第一は情報感度(=状況認知能力;変化に気づくこと)であり、第二は方向性(=問題解決能力)であり、第三は説得(=発信能力;特に重要)である。情報は「情け」と「報せ」からなる。
情報リテラシーの三言語は、母国語である自然言語と、コンピュータの機械言語と、会計言語からなり、経営三言語と言われる。会計は経営活動を総合的にとらえる、経営の写像であり、経営者にとっての地図になる。
経営(マネジメント)とは、経営資源を集め太らせる拡大再生産のループである。期首の貸借対照表(BS)と1年間の儲けの記録である損益計算書(PL)と期末の貸借対照表(BS)で表される。
会計が読めれば世の中が見える。利益額(横軸)と利益率(縦軸)を産業マップに表すと、第一象限は「リーディング産業」でありバイオ・金融業・エンタテインメント・ITが該当する。第二象限は「成熟産業」であり自動車・家電・海運・不動産で、第三象限は「負け組産業」で、第四象限は「ベンチャー・老舗産業」でありネット・ソフト・ブランドが該当する。
新日鉄は、売上高3兆9,063億円、経常利益5,474億円、ROS=14.0%、中国市場・自動車が牽引している。特に中国は2008年北京五輪、2010年上海万博でヒートアップしている。銀行は、コア業務純益は不変だが信用コスト(不良債権比率)が低下して利益を上げている。構造改革途上にあり、メガ金融に勝ち残れるかがポイントである。
消費者金融は、営業貸付金が1.7兆円、営業収益が4,450億円で利益率26%、余裕で儲かる業界であり、利息制限法でも生き残れる。消費者金融トップの武富士のユーザは、30歳以下の若者が60%、女性が40%を占め、年収400万円以下が5割を占める。フリーター(417万人)ニート(85万人)がサラ金から借りて消費を支えている。フリーターは、慶応15%や東大10%もおり、3年以内に社員を辞めるのでフリーターは減らない。また、女性も消費を支えており、主婦のパチンコ依存症やブランド嗜好で個人消費指数は増加し破産件数も高止まりしている。
トヨタは、売上高2兆1,036億円、純利益1,372億円、ROE=14.0%、GMの10倍の時価総額がある。従来から住宅や半導体など多角化は上手くないが、金融事業に展開しつつある。トヨタの次の一手はETCカード、携帯電話とネットワークを通じてトヨタから金を借りる仕組みを構築しつつある。GMがモデルになっている。
ソニーは、エレクトロニクスが売上高5兆1,000億円、営業利益▲300億円、ゲーム・音楽映画が売上高1兆7,000億円、営業利益300億円、金融が売上高7,000億円、営業利益1,900億円で、金融事業が利益源になっている。
キャノンは、事務機が売上高2兆5,000億円、営業利益5,400億円、カメラが売上高8,800億円、営業利益1,700億円、光学機器が売上高3,700億円、営業利益▲1,300億円で、プリンタのサプライ用品(トナーやインクカートリッジ)が利益3,000億円で、端末を安くして顧客を抱え込む戦略が功を奏している。
利益率を縦軸に、素材・部品・加工組立・サービス・コンテンツと言ったバリューチェーンを横軸に取ると、加工組立が最も利益率が低くスマイルカーブと呼ばれる曲線を描く。
NTTドコモは、無線通信サービス粗利益が3兆5,500億円(収入4兆3,000億円、原価7,500億円)端末機器販売の粗損失が6,400億円、販売一般管理費が2兆0,800億円、営業利益が8,300億円である。ここでも、安く端末をばら撒いて顧客を抱え込む戦略を取っている。さらに、「おさいふケータイ」で金融事業に乗り出そうとしている。
ユニクロは、売上原価率52.7%であり、中国でのローコスト生産とブランド(コンテンツ)で儲けている。伊勢丹は売上高7,600億円、営業利益300億円、営業利益率4%であるが、ユニクロは売上高4,500億円、営業利益700億円、営業利益率16%である。
M&A件数は年々増加している。事業再構築のプロであるジャック・ウェルチ氏はCEOに20年在任中、買収企業数1,000件、売却事業数400件であった。1年間に70件、1月間に6件になる。まさに企業が商品になる時代である。キャッシュ・リッチ経営の武田薬品は、現預金・有価証券が1兆8,565億円あり、格好の買収ターゲットになってしまっている。
会計情報を用いることで企業の現実の姿が良く分かると感じられた。