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木から教わったこと

人間も自然の一員であり、人も木も生命として同じだなと思います。
「この木を治療してやる」という態度でいたら治療はできません。
「治療をさせてもらうけど、教えてください」という気持ちで臨むと、いろいろなことが見えてくるんです。

最初のうちは小生意気な女だったと思います。
それでも、最初はうまくいく。
それで自信過剰になって、「この木は私が治療するんだ」と立ち向かうと、木からシャットアウトされてしまう。
ものを言わないからこそ、
謙虚な気持ちで一生懸命に木の声を聞かないといけないとつくづく思います。

By塚本こなみ

(プロフェッショナル仕事の流儀6FileNo.16より
2008.06.12:反田快舟:コメント(0):[仕事の流儀]

突破口となった斬新なアイデア

大木の移植で一番のポイントは、幹をしっかり養生して固定し、吊り上げる瞬間
です。
木を傷めずにそれを行うのが非常に難しい。
しかもあの大藤は、とにかく傷が付きやすく、しかも幹の形が独特なんです。

だから、一年経ち、一年半が経ち、後一ヶ月で移植というときになっても方法が
わからない。
ありとあらゆる方法を考えたんですが、どれもダメ。
そんなとき、社員の一人が「昔バイクで事故を起こしたとき、首にギブスをして
入院した」といったんです。

「石膏でやったらどうだろう」
すぐに外科に行って石膏を分けてもらい実験しました。
すると、外から衝撃を与えてもびくともしない。「これだ」と思いました。

移植まで一ヶ月という時期にそのアイデアにたどり着いたのは、本当に偶然です。
ただ、答えを強く欲していたのは確かです。
いつも思うのは、「望めばかなう」ということ。
強く願っていれば、きっと訪れた幸運を逃がさないのではないでしょうか。

By塚本こなみ

(プロフェッショナル仕事の流儀6 File No.16より)
2008.06.11:反田快舟:コメント(0):[仕事の流儀]

不可能と言われた大藤の移植

あの藤は「250畳の大藤」といわれていた大木です。
幹周りは4メートルあって、移植は不可能とされていました。
移植してくれる人を4年間探した末に、私に依頼が来たんですね。

それまで藤の木を触ったことはなかったんですよ。
それでも請けたのは、まず最初に木のエネルギーを感じたから。
あとはやり方を考えればいいと、安易に受けてしまったんです。

色々な文献を調べましたが、「移植できるのは直径60センチまで」と書かれて
いる。
なるほど、だから誰も請けなかったんですね。
この仕事がいかに大変かは、始めてすぐにわかりました。

結局、移植には2年という準備期間を要しました。
「こんな仕事を請けなければよかった」と何度思ったことか。
とにかく眠れないんです。布団に入ると頭の中に木のことがグワーッと出てきて。

そんな苦しい状況でしたが、「やっぱりできません」とはいえないんですよ。
なんとかなる。やってみなければわからない。ずっとそう思っていましたね。
私の技術や能力で動くのではなく、きっと木が動いてくれる。そう信じていました。

By塚本こなみ

(プロフェッショナル仕事の流儀6より)
2008.06.10:反田快舟:コメント(0):[仕事の流儀]

仕事と家庭をどう両立したのか

樹木医の資格をとって2年後、大きな仕事が舞い込んできた。
樹齢130年という、世界でも有数の大藤を移植してほしいという依頼だった。
過去に、こんな大きな藤で移植に成功した例はない。だが塚本は引き受けた。

塚本はその仕事にのめり込んだ。調査をし、来る日も来る日も考え続けた。
仕事に打ち込むあまり、帰りが遅くなり、家事がおろそかになった。
ある日、我慢の限界を超えた夫が怒鳴った。
「そんなに仕事がしたかったら、この家を出ていけ」

仕事か家庭か迫る夫。しかし、塚本はタンカを切った。
「嫌です。出ていきません。仕事も辞めません」
家庭も仕事も取ると塚本は宣言した。

その代り、自らに一つの決めごとをした。
仕事の愚痴は言わない。疲れた様子も見せない。
そんな塚本の覚悟に、夫も次第に折れていった。

(プロフェッショナル仕事の流儀6より)
2008.06.09:反田快舟:コメント(0):[仕事の流儀]

日本人にとっての藤とは

藤というのは、日本原始の木なんです。
世界にもあるのですが、あそこまで長くなるのは日本の種だけです。

「藤」という字を使った苗字は141もあるんです。
私の調べた範囲ですから、きっとまだあるでしょう。
それだけ日本人と藤は関係が深いんですね。

それに、古来、藤は権力の象徴でもあったんですね。
あの藤色は高貴な色として尊重されてきましたし、蔓の強さも魅力的に映ったよ
うです。
源氏物語でも最初に藤壷が出てきますし、聖徳太子も藤を愛でたという文書が
残っています。

ほかの木に絡みつきながら、1年で5~10メールも伸びて、光を独り占めにし
てまた蔓を伸ばす。
やがては絡めついた木を絞め殺して、自分だけが生き残る。
そんなものすごい生命力を持った木なんです。

藤は個人的にも一番愛してやまない木ですね。
移植や腐りの対策など、一番苦しんだ木でもありますから。

By塚本こなみ

(プロフェッショナル仕事の流儀6より)

先日、長年庭に植えていた藤を伐採しました。
蔓が伸びすぎて、手に負えなくなったからです。
所詮、権力とは無縁なのでしょう・・・。
2008.06.08:反田快舟:コメント(0):[仕事の流儀]