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日本とアメリカの研究の違い

日本では、どうしてもある程度の成果を期待して、ちょっとだけノブを動かすような一面的な実験が多いですね。
大胆な実験はまれなケースで、通常はあるパラメーターをちょっとだけ動かして論文を書くというスタイルが主流です。

日本人はわりと悲観的で固いと思います。アメリカ人は非常に楽天的。
実験をやっているときの表情を見ればわかります。
われわれ日本人は、真剣になると「歯を見せるな」というようなことを言われますが、彼らは笑いながらやっているんです。
本当に実験を楽しいでいる様子がわかるんです。

でも、日本人はもっと自信を持った方がいいのではないかと思います。日本の大学の学部は世界でも高いレベルだと思うんです。
それなのに、なぜか、大学院に入ってから自信をもってフルスイングする人がいないんですよね。
By古澤明

(プロフェッショナル仕事の流儀2より)

確かにわれわれ日本人は、悲観的に否定的に考えることが多いように思う。
あれをしてはダメ、そうなったらご近所に顔向けできないなどと、枠にはめた考え方も多い。
失敗を恐れて、それ相応のところで妥協するのもそうだろう。
「悲観的に準備して楽観的に行動せよ!」は私の師匠の教えだが、
肩の力を抜いた方が力が出るものだ。
2008.03.03:反田快舟:コメント(0):[仕事の流儀]

自信はどこから生まれてくるのか

それはたぶん、ある瞬間に自信が湧いたということではなく、積み重ねだと思います。
でも一番自信がついたのは、この量子テレポーションの実験をキンブル博士と二人でやって成功した瞬間ですね。
やはり必要なのは成功体験。

それに大学時代に競技スキーをやったことが、ある意味ですごく僕のバックボーンになっています。
競技スキーは、まず失敗を恐れずに突っ込まない限りタイムは出ないんです。
非常にリスキーなスポーツで、失敗する確率はたぶん半分くらいですね。
しかも、一つのレースで転倒したらそのレースは記録なしで終わり、つまりビリです。
そういうところで、心の持ち方を少しづつ学んでいったんだと思います。

実験も、スラロームのレースと同じです。
限界ギリギリに突っ込んんで、転倒するかもしれないけど、それくらいリスクを冒さないといいタイムはでない。
転倒したときはガッカリしますが、レースはそれで終わりじゃない。
また必ず番快のチャンスはあるので、次に駆ければいいんです。

By古澤明

(プロフェッショナル仕事の流儀2より)
2008.03.03:反田快舟:コメント(0):[仕事の流儀]

科学の世界に魅せられたきっかけ

実は、理科は覚えることが中心だったのであまり好きじゃなかったんです。
それが面白く感じられるようになったのは、高校生になってからです。

物理を習ってから、現象を式で表現でき、その答えがちゃんと実験と合うようなことがわかってから、
面白いなと思うようになりました。

文字で書いてあると、読み方によって違う意味にとれたりする場合もありますが、
式で書かれたものは答えが一つしかないわけです。

その一つしかないもので、未来や自然現象が予言できるということはとても面白いですね。
By古澤明

(プロフェッショナル仕事の流儀2より)

2008.03.02:反田快舟:コメント(0):[仕事の流儀]

失敗を楽しめ

量子テレポーションの精度を上げる実験が始まった。
5年前から試行錯誤を繰り返し、改良を重ねてきたものだ。
「今日、世界記録を出すはずです」

赤外線を走らせ、その光の揺らぎの幅を測定する。
揺らぎが狭いほど、テレポーションの精度は高まる。
計測器の画面の青い線が、黄色い線から一マス以上上がれば世界記録となる。

暗闇の中で最後の微調整が続く。結果が出た。
「おー、7.1ですね」
世界一の快挙だ!

しかし、最前線の実験は99%以上が失敗だ。
どんなに根性のある研究者でも、音を上げそうになる。
そんなとき、古澤は大事にしている流儀がある。

「失敗を楽しめ」

失敗が日常の最先端の現場。だからこそ、恐れていては前に進めない。
失敗は、新しい課題や道筋を教えてくれる。
この日も新しい方策が見つかった。

「今度は成功しますか?」古澤がそう聞くと、
研究員は答えた。「今度は成功すると思います!」

(プロフェッショナル仕事の流儀2より)
2008.02.29:反田快舟:コメント(0):[仕事の流儀]

科学は最高のスポーツ

東京大学工学部六号館。古びた廊下の突き当たりに人類の未来を切り開く場所がある。
ある物の状態が一瞬にして別の場所に現れる”テレポーション”。
SF映画の夢の技術が、ミクロの世界で起きることを証明して見せた。

成功したのは、量子物理学者・古澤明、44歳。将来ノーベル賞との呼び声も高い。
古澤がテレポーションを使ってめざすのは、未来のコンピュータと呼ばれる「量子コンピュータ」だ。
それが実現できれば、新薬の開発や地球規模の気象予測など、あらゆる分野に画期的な進歩をもたらす。

道の領域を探る古澤の実験室は、失敗との果てしなき戦いの場だ。
何度失敗しても、そのたびに立ちあがり、振り出しからやり直す。
その姿勢はアスリートに似ていると古澤はいう。
「科学は最高のスポーツだ。ホームランを狙え」と。

科学はスポーツです。勉強は“腕立て伏せ・腹筋”という基礎トレーニングで、学生とか研究員クラスはプレーヤー。
大学の先生は監督で、その勝負のすべての責任を負うと。
監督である古澤の仕事は、研究のテーマを決め、選手を動かすこと。

古澤は、実験のやり方はすべて“選手”に任せる。出勤、退勤の時間も自由だ。
“選手”に求めるのはただ一つ、「頭脳より根性」。
「個々の人間の頭がいいとか悪いとか、能力というのは大差ないので、根性があれば多少頭の回転がイマイチでも、
ものすごい力を発揮します」

(プロフェッショナル仕事の流儀2より)

ここでいう根性とは、目標に挑み成し遂げようとする執念をいうのだろう。
いわゆる“浪花節的根性”では長続きしない。
2008.02.28:反田快舟:コメント(0):[仕事の流儀]