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成功への道を歩めたキッカケ

30代までは平凡な左官だった挟土さんが、カリスマとまで言われるようになったキッカケはなんだろうか?

左官に関する、素晴らしい文章を読んだんですよ。土には黄色い土と赤い土とがあって、
粘性があって、こういうふうにひび割れるのも美しいとか、左官という仕事がいかに素敵であるか、
というようなことを実に豊かな表現で書いている方がいたんです。

その方の文章を読み続けているうちに、いつの間にか自分の腕が上がっていったような気がします。
ずっと枕元において、繰り返し読んでました。
練習とは別のもの、言葉とか気持でも腕は上がっていくんだなと思いました。


言葉の力というのは、すごいものがあると思うんです。いい言葉を聞くと、そこからパーッとイメージが広がったり・・・。
自分があって、風景があって、風景が言葉になって、すべてが一つのサイクルになっているような気がします。

(プロフェッショナル仕事の流儀3より)

挟土さんはアーティストであり、ロマンティストですね。
言葉は命といいますが、物事の本質をつかんだ言葉は感動と共に、時に人生をも決定づけます。
私も、田辺昇一先生の「人間の魅力」に出会ったからこそ今の自分があると思っています。
2008.03.24:反田快舟:コメント(0):[仕事の流儀]

独立後、初めて仕事が来たとき

独立して、最初に仕事が来たときは、「これで生きていける」という嬉しさでしたね。
独立直後は、本当に悲惨な状態でした。
事務所には電気も水道もない。トイレもなければ屋根もない。

夜は眠れず、暗い中でジーッと考えていましたが、その時間はすごく大事だったと思います。

あの頃仲間が六人いたのですが、その仕事をやっている間は食べさせいける。だから、徹底的に研究しました。

そんな仕事が専門誌の表紙になったときは、本当に嬉しかった。

ただ、それでも不安でした。
壁って動くんですよ。完成から一年経ってから問題が出てくる。
だから嬉しいという気持ちは、その瞬間だけでしたね。

(プロフェッショナル仕事の流儀3より)
2008.03.23:反田快舟:コメント(0):[仕事の流儀]

使えない“チャンピオン”といわれて

長い間、挟土は臆病な自分にコンプレックスを抱いていた。
左官職人の二代目として生まれた挟土。人見知りする気弱な子供だった。
高校卒業後、本格的に修業を開始。2年後、「技能五輪」左官の部で優勝、前途洋洋たるスタートだった。

日本一の肩書を手に名古屋の左官会社に就職。しかし、現場に出るなり怖くなった。
モルタルや仕上材など、左官の現場で使う材料は数百種類に上る。
技能五輪で使ったのは数種類。大会用に磨いた技と知識では全く追いつかないのだ。

「できないんだけど、俺はチャンピオンだからと、聞けないんですよ」
臆病を隠そうと粋がる挟土。当然周囲との軋轢も生まれる。
ある日、仕上げた直後のモルタルの壁に、先輩職人がいきなり拳で跡をつけた。

やがて陰口も聞こえてきた。「使えないチャンピオンだ」
いつまでたっても周囲に溶け込めず、ストレスで髪が抜けた。
30歳を過ぎても鳴かず飛ばずの日々が続いていた。

35歳のとき、転機が訪れた。
偶然引き受けた江戸時代の土蔵の解体。挟土の目は、その扉に釘付けとなった。
天然の石灰に墨を混ぜ、コテで仕上げた黒漆喰の扉。100年経っているのに鏡のように輝いていた。

組織の中で歯車のようになっていると感じていた挟土は、自分も天然の土を使って壁を塗りたいと思った。
一念発起し、業界でも珍しい天然の土壁をつくる会社を興した。
しかし、仕事は来なかった。

(プロフェッショナル仕事の流儀3より)



2008.03.22:反田快舟:コメント(0):[仕事の流儀]

一人カラオケの効用

仕事に一区切りついたとき、挟土さんは一人、カラオケに向かうという。
歌う曲は必ず矢沢永吉。それにしてもなぜカラオケなのか?なぜ一人になるのか?

僕は、歌は詩の朗読だと思っているんです。
自分の中で我慢してきたこととか、よかったことを、大きな声でワーッと叫んで、それで終わりにする。
だから、嬉しいときには嬉しい歌を、悲しいときには悲しい歌を選ぶ。
そして、すべてリセットするんです。

いいことを自分の中に持ちすぎてもだめだと思うんです。
自分で自分に酔ってしまって満足して終わってしまう。
だから、いいことも含めてすべて忘れてしまって、ゼロになるという感じですね。
いいことも悪いことも、歌いながらすべて流してしまう。

(プロフェッショナル仕事の流儀3より)

流せる人は新しいことを創れる人かもしれません。
2008.03.21:反田快舟:コメント(0):[仕事の流儀]

“追い込まれたら逃げる”の真意

壁のアイデアを考えていると、「もう、俺には何も出ないんじゃないか」と考えてしまうこともしょっちゅうです。
そうなったらどうしようもない。
嫌なことからは、まず逃げるんですよ。

逃げているうちに、光が見えてくるかもしれない。
嫌なことを突き詰めて考えても、息が詰まってしまう。
ますます自分をダメにしてしまうから、嫌なことからはとりあえず逃げるんです。
創造的な作業ではそれができるんですね。

ただし、現場からは逃げられません。
絶対に最後までやり遂げて、完成させないとダメですから。

(プロフェッショナル仕事の流儀3より)
2008.03.20:反田快舟:コメント(0):[仕事の流儀]