例えば、イチゴのタルト。ぼくの店では、イチゴをキイチゴの果汁でコーティングしていますが、
仮にそれを15個つくるだけの材料が足りず、12個分くらいしかないとしましょう。
その12個分で15個をつくってしまったら、それだけ完成度が低くなるわけです。
それが分かっていながら、オープンの時間が迫っているからと、そのまま出してしまえば、
お客さんは本当においしいお菓子を食べることができません。
僕はそういうことが許せないんです。
あらゆる職業にいえることだと思うんですが、職人が楽をしようと思うと、ろくな結果にならないんです。
当り前のことをきっちり守っていけば、そのお菓子の本当の味が出せるのに、
作り手が少し気を抜いただけで、本来の味と全く違ったものになってしまいます。
僕だってどうしようと思うことがあります。でも、そこで踏みとどまれるかどうかです。
当り前のことができたら、本当においしいものができるんです。
そして、自分で100点をつけられるお菓子ができた時は、鳥肌が立つくらいに感動するんですね。
その喜びのために、また続ける、という感じです。
By杉野英実
(プロフェッショナル仕事の流儀1より)
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