母親に女手一つで育てられた杉野さん。
母は、食べ物にかけるお金だけは惜しまない人だった。
中学二年生の誕生日、一流ホテルのケーキを買ってくれた。
濃厚なクリームの甘味。華麗なデコレーション。まるで夢の世界からの贈り物のように見えた。
この瞬間、杉野さんは菓子職人になりたいと思った。
高校卒業後、「ホテルオークラ」の菓子製造部門に就職。
一流ホテルで働くのが誇らしく、いつも友人に自慢した。
しかし、ある日、女友達が言った。
「あなたは 何ができるの?」
杉野さんは答えられなかった。見習いの一年間、アイスクリームを錬るだけ。
一人でケーキも作れなかった。
「悔しいんじゃなくて、恥ずかしかったですね。自分をもっと高めていくことをしなければダメだと思いました」
どうすれば自分を高めることができるか。目指したのは菓子の本場、フランスでの修行。
アルバイトでお金を貯め、25歳でフランスに飛んだ。
(プロフェッショナル仕事の流儀1より)
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