「将としての心すべき五戒」

 人の長としての心得として、中国の呉子は、「自らを弁えず、利益を無視して
闘うは蛮勇の士、剛にして柔、文武両道を修めた者こそ将に値する」といっているが、経営者として考えさせられる点は多い。

 経営の責任者たるべきものは、まず自分自身を知らねばならない。事業を残すということが最大の課題であるかぎり、利益を無視して、規模の拡大のみに走るのは蛮勇の士であり、心の育成を忘れて、金もうけと享楽にのみ走れば、これまた苦い虚しさがそこには残る。

 物質的な豊かさだけでなく、心の豊かさをもち、一方的な立場のみを主張するのではなく、相手を理解し抱擁しようと努め、どのような環境の変化に対しても即応できる、拒絶反応のない体質をもつもののみが、真の経営者に価するのであろう。

 常にわれわれは、社員に現状を否定せよという。現状に満足しないことから創造力が生まれてくるからであるが、われわれ経営者、管理者のあり方についても、同じように下部から否定されていることを知らねばならない。

 自らが自らの行動や思考を批判し、反省し、よりよい改善点を求めて努力をすることにより、はじめて従業員の尊敬を勝ち取ることができるのである。

 「上好むところ、下これにならう」という。すべてに完全さを求めることは、なかなかできぬとしても、業務面においては少なくとも、呉子のいう五戒を心すべきであろう。

① 理(衆をよく統率する-組織の管理についてどうしていくか)
② 備(常にライバルに備えよ-用意周到)
③ 果 (敵に対すれば沈着果断に行動せよ-意思決定とはむずかしいもの)
④ 戒(勝ってカプトの緒を締めよ-自戒、慎重、調子にのるな)
⑤ 約 (形式的な規則や手続きを廃しすべて簡素化すること-能率中心の考え方)

 古来、名将あるいは名社長といわれた人ナニらの用兵の妙は、ここに尽きるのではないかと思う。
2006.11.20:反田快舟:[経営箴言]

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