「回帰現象」

人間には人それぞれの基本的な行動のパターンがあるようだ。
たとえば、何か新しい場面に出合うと、はしゃいでしまって、つい、しなくてもよいようなことまでやっていしまうとか、逆にどうしても引っ込み思案になってしまうとか。

しかし、このようなことに気がつくと、案外それは変えられるもので、他人にもあまり気づかれないくらいにはなる。
だが、自分もだいぶ変わったかな、などと思っていても、いざという場面、緊張や思いがけないことが生じたときになると、知らぬ間に以前の型にかえってしまうということはよくある。

それは無意識に起こり、自分でも気がつかないときさえあるが、傍らで見ている人には明瞭に見えるものだ。
このような人間の行動の「回帰現象」とでもいえるようなことがあるのを知っておくと、便利であると思われる。

何しろ、この現象は、大切なときに生じる上に、それが生じていることを本人が気がつかない場合があるので、なかなか厄介なのである。このようなために、取り返しがつかない失敗が起こることもある。

野球の投手が盗塁されるのを防ぐために牽制球を投げるように、自分の心の中で、「回帰現象に注意」という牽制球を投げていると、これもだいぶ防げるようである。

あるいは、回帰現象を起こしても、自分で気づいて、それについて相手に説明して了解してもらったり、自分の姿勢を立て直したりすることによって、決定的な失敗を免れることができると思う。
スポーツと同様、人間関係も訓練によって少しずつ上達するようである。

(「おはなしおはなし」より)

2006.10.14:反田快舟:[仕事の流儀]

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