「一流病」

建築家の安藤忠雄さんは、大学にも行かずに独学で建築学を学んで今日に至った人である。
ともかく「一流大学に入学して、一流企業に就職するのが幸福の道」と信じきって、そのために幼稚園のときから努力させられる。その結果が相当な不幸につながっていく、という例が多い。

「一流」がいけないというのではない。安藤さんのように自分の進むべき道を見出して、そこで一流に向かって努力し続けるのと、皆が考える一流というのに乗っかっていこうとするのとは、全く異なっている。後者は「一流病」とでもいうべきで、日本人の大半は、これにやられているために、随分と日本中を暗くしている感じがする。

一般の風潮や時代の流れによって判断して進路を決定しても、長い人生の間に、どう変わるかわからない。自分のやりたいことをやって身につけておくと、時代が変わっても自分のものとして揺らぎがないのである。

一流の無意味さをわかってもらえるように、なんとなく一流大学を出て、一流企業に勤めた人が20年後には、実際にどのような人生を送っているのか、というようなルポタージュを発表したりすると、面白いかもしれない。

(「おはなしおはなし」より)

2006.10.14:反田快舟:[仕事の流儀]

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