かっては体当たりでぶつかると、反発も含め何かが返ってきた。
しかし、ここでは、相手にされない上に、生徒同士も仮面をかぶっているように本音を話さない。
人として認められない。全く歯が立たない。
自信を打ち砕かれた鹿嶋は、布団で泣き、トイレで泣いた。
「教師やめますか、人間やめますか」というところまで追い詰められた。
悩み抜いた鹿嶋は、一つの手を打った。
生徒たちに内緒で書いてもらった親からの手紙。
生まれてからどのように育て、見守ってきたのか、その思いに触れるのは、ほとんどの生徒が初めてだった。
生徒たちは照れながら読んできたが、次第にあふれてくる思いを抑えられなくなった。
互いに手紙を見せ合い、話しを始めた。
生徒同士のコミュニケーションが芽生えてきた。
鹿嶋はその後も、生徒同士を近づけるための授業をやり続ける。
生徒たちは仮面を少しづつ脱ぎ捨て、本音で話し合うようになった。
すると、自分勝手な行動が減り、授業も成り立つようになった。
「人と関われば、人は育つ」
鹿嶋は一つの信念を抱いた。
(プロフェッショナル仕事の流儀15 File No.44より)
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