~渡辺誠一郎のターニングポイント~「マドル・スルー 泥沼からの脱出」

日本の医療機器メーカーで画像処理技術を担当していた渡辺は、43歳で部長に昇進、開発の場を離れた。
予算の管理や社内調整に追われる中で、湧き上がってきた思いがあった。
「自分がワクワクできないという、ある意味での失望感。これでは自分が働いている意味がない」

辞表を出した後、会社を立ち上げようとシリコンバレーに乗り込んだ。
投資家を訪ね歩きプランを説明。独創的なアイデアに懸けてほしいと願い出た。
しかし、投資はなかなか得られなかった。

何とか会社設立にはこぎ着けたものの、逆境はつづき社員7名を抱えて倒産の危機に瀕した。
家族も連れてきた異国の地で、眠れない日が続いた。

追い詰められたある日、こう思った。
「悩んでいるだけのこの時間を、次の手立てを考える時間に使おう」
徹夜の研究が続いた。回り道になろうが、行き止まりにぶつかろうが、必死にもがき続けた。

そして三年。出来上がった製品は異例の高評価を受けた。
ある人が言った、「あなたのような開発を、泥の中をもがきながらのブレイク・スルー、マドル・スルーといいます」。
渡辺がシリコンバレーで認められた瞬間だった。

(プロフェッショナル仕事の流儀14 File No.42より)
2009.02.26:反田快舟:[仕事の流儀]

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