田尻は、授業を始めても教科書をいきなり開かせない。
配ったのは人気アニメキャラクターが描かれたプリント。
この日の授業のテーマは、新しく教える疑問詞の「who」。
説明もせずに、いきなり英語で質問を始めた。
「Who is this? Raise your hand! It's....?」
一人の生徒が恐る恐る「It's...たこやきまん」と答える。
田尻は満面の笑みで大きくうなずく。「Very good!」
ゲームだとわかった生徒たちは、一気に乗ってきた。
声をあげ、競って手を挙げる。
生徒が答えを間違えると、田尻は全身で残念がる。
正解すると破顔一笑、大きなリアクションで盛り上げる。
生徒を心から楽しませるこのゲームは、授業を始める前の準備運動。
教室の熱気が最高潮に達すると、おもむろに教科書を開かせる。
会話の練習では、クラスを4~5人のグループに分け、
例文とともに生徒たちに英文を考えさせ、読みあげさせる。
そして、読みあげる時間をストップウォッチで計り、グループで競争させる。
他のグループに負けまいと、皆、必死になる。
競わせ、夢中にさせることで、勉強であることを忘れさせる。
それによって英語を身近なものにしようというのが、型破りな授業の狙いだ。
(プロフェッショナル仕事の流儀9 File No.25より)
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