花火師・野村陽一が毎日、入念にチェックする工程がある。
「星」と呼ばれる直径1センチから3センチほどの黒い火薬の粒の製造。
この一つひとつが、花火を構成する小さな光の点になる。
星づくりは一見、単純な作業だが、実は繊細な職人技の極致である。
その日の気温や湿度に合わせて、火薬と水の量を微妙に調整しなければならない。
完成した星は、花火の玉の中に詰められる。「仕込み」と呼ばれる作業。
大きな花火となれば、一発を仕込むのに一日がかりとなる。
試作ができると試し打ちを行う。
何ヶ月も手塩にかけてつくり上げた花火も、めったに合格点は出ない。
そうして、準備から完成まで一年かけたものが、わずか五秒で消える。
「潔い人生みたいなところがありますね。この一発をいつまでも覚えていてくれ
る。それが自分の理想です」
野村は毎年、新作花火の開発に挑む。
(プロフェッショナル仕事の流儀8 File No.24より)
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